見出し画像

僕がいなくなった日


例えば僕が死んだとしたら

そのあとはどうなるんだろう?

誰が悲しんでくれるんだろう?

涙を流してくれる人はいるかな。

毎年、命日に手を合わせてくれる人はいるかな。


でもね、お墓は必要ないよ。

盆休みや命日にわざわざ足を運んでもらいたいわけじゃないし、

知らない人ばかり周りにいるところに居たくないから。

葬式もしなくていいよ。

できればしてほしくないかも。

重たい空気って嫌いなんだよね。

参列してもらうのも申し訳ないし。

遺影、飾らなくていいよ。

いなかったことにしてほしいから。

記憶から消えていきたいんだ。

それでも飾るなら、写りの良い写真にしてください。

供物は煙草でいいです。

フィリップモリスの8mmね。

売ってないコンビニもあるから気をつけて。


遺書は用意しないと思います。

前に用意したとき、心の中を全部読まれたような気がして恥ずかしかったから。

最後に言葉を残すなんてずるいからね。

言葉はすぐ呪いにもなっちゃうしね。


遺骨は灰にして夜風に乗せてください。

夜が好きだから。

できれば月に向けて蓋を開けてください。

あなたが苦しくなった夜を照らしたい。

くれぐれも海には流さないで。

僕、海こわいから。


本棚の書籍たちは売ってください。

少しの足しにはなるだろうし、置いていてもしょうがないでしょう。

漫画は兄にあげてもいいけどね。

ラップトップに残ってる、僕が書いた小説のデータは消してください。

読ませるわけにはいかないからね。

壁にクリップで留めた、写真やカフェのカード、映画のフライヤー、あの子からの手紙は燃やすか棺に入れてください。

僕が持っていきます。

大量のぬいぐるみたちは、供養してあげて。

僕の記憶だけじゃなくて、くれた人たちの記憶もそこにはあるからね。


何もしなくていいし、何も残さなくていいけど

やっぱり、

たまに思い出してください。

何が好きだったとか、

こんなこと言ってたとか、

声の形とか、

何を愛してたとか、

思い出してください。


いつか忘れてしまうまで。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?