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春にならないで


あなたをずっと見ていたのに
ずっと見ていたはずだったのに
途中で道を外れてしまったから
ああ、こんなにも僕は

あなたの手が
温かかったのか冷たかったのか
何で思い出せないの
自分のだと勘違いしてしまうほど
重ねていたのに
最後の花束が
どんな形でどんな色をしてたのか
何で思い出せないの
ファインダー越しでもこの目でも
焼き付けていたのに
あれが最後だとは

降り積もった雪の中で
影を踏んで離したくなくても
もし見つけられたとしても
冷たすぎて届かないから
隠していた羽を今更
折ってしまったとしても
ああ、元から飛べないや

溶けだした冬を
あなたの白い息を眺めてた冬に
重ね重ねて
星座に指を添えて引っ張って
僕ら繋がっていた
芽吹きだした春に
揺れるワンピースの残像を
閉じ込めて
枝に生まれた恋心はきっと
間違いじゃなかったのに

酔ったフリをしていたのなら
吐き出せたのだろうか
それが正しくなかったとしても
僕の方がわかってる
だからね
この手を握り返してよ
アルコール片手でいいからさ

寂しいと思った帰り道
イルミネーション越しに握られた手
気づかないように俯いた
だって眩しかったから
もう星は見上げない
隣で泣いているあなたを
ちゃんと包んでしまいたいから
ああ、こんなにも僕は
あなたがよかったんだね


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