木村敏『あいだ』読書会レジュメ(2016/7/17)

『あいだ』木村敏(弘文堂思想選書/ちくま学芸文庫)
章題一覧と用語解説(引用ページ数は単行本に対応しています)

●章題
1 はじめに
2 生命の根拠への関わり
3 主体と転機 
4 音楽のノエシス面とノエマ面
5 合奏の構造 
6 間主体性とメタノエシス性
7 主体の二重性
8 共通感覚と構想力
9 「あいだ」の時間性
10 アレクシシミアの構想力
11 「あいだ」の生理学から対人関係論へ
12 我と汝の「あいだ」
13 もしもわたしがそこにいるならば
14 絶対的他者の未知性
15 こと・ことば・あいだ
16「あいだ」の病理としての分裂病
17 ダブル・バインド再考
18「みずから」と「おのずから」
19 結び

●木村敏『あいだ』の仮説
(この地球上には、生命一般の根拠とでも言うべきものがあって、われわれ一人ひとりが生きているということは、われわれの存在が行為的および感覚的にこの生命一般の根拠とのつながりを維持しているということである。p4)

●ゲシュタルトクライス
(有機体と環境との関係は、不断の転機による断絶にもかかわらず、全体として連続性を保っている。西田幾多郎のことばを借りれば、それは「不脱の連続性」だと言ってもいい。この不連続の連続を保証しているのが、有機体の知覚と運動の「からみあい」である。この「からみあい」をヴァイツゼッカーは「ゲシュタルトクライス」と名付けた。P18-19)

●音楽の演奏の三つの契機
・次々に音楽を作り出す行為。(他の二つとは異質の人間の根源的な行為)
・自分が演奏した音楽を聞く作業。
・音や休止を先取り的に予期して、現在演奏中の音楽に一定の方向を与えるという作業
(※4章以降、ノエシス面、ノエマ面は音楽の演奏を例に解説される)

●あいだ
主体と対象が関わることで作られる空間?

●ノエシスとノエマ 
そもそもの意味
→「ノエシス」は心・精神・理性などを意味する「ヌース」が語源。
・フッサール現象学では、意識が対象を志向して対象を「ノエマ」として構成する作用が「ノエシス」と呼ばれる。

●ノエシス面
・行為的な側面。音楽を産出している働きそのもの面。
・生命をもつ有機体である人間が、その生命の根拠に根差した活動として世界に向かって働いている動的な志向性(意識的にも無意識にもありえる)。

●ノエマ面
・触れるもの、産出されたものを構成、組織化する面。産出される音楽にそれ以前およびそれ以後の音楽との関係をもたせ、それによって全体的なまとまりを構成するために是非とも必要な「意識される音楽」の面である。
・ノエシス的な生命活動が意識面に送り込んだ「代表者」だと言ってよい。

ノエシス面によってノエマ面は作らえるが、ノエマ面が構成させることを前提としてノエシス面は活動する。どちらが欠けても、行為は成り立たない。

●メタノエシス
・共同でのノエシス・ノエマ相関。

合奏の例
→演奏者は自分のパートだけに集中するのではなく、他の演奏者の音も自分の行為の一部とする。

(個人の意識の「内部」に、個別的な意識の主体性を止揚した集合的・間主体的で自律的なノエシス・ノエマ相関が成立しているといっていい。そしてそれと同時に、各演奏者の主体的で自立的な音楽創造の意志も必ずそこに働いている。この全体的意識と個別的意識の同時成立は、二つの別個の志向性が互いに素早く交代したり、平行して同時に進行したりしていると考えるよりも、むしろどこまでも一つの意識の一つの志向性、単一のノエシス・ノエマ相関が示す二つの局面だと考えるべきだろう。主体が自分のパートだけを意識したり間主体的に全体の音楽を意識したりするのは、そのつどの自由な観点の変更によるのである。p49‐50)

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