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ほのぼの童話館 by きづかい

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どこか懐かしく、悪い人が絶対出てこない、ほのぼのとした温かい童話ばかりです。ぜひ読んでやってください。 作者(きづかい)自己紹介/団塊世代の元オーケストラ団員です。趣味で童話を書…
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記事一覧

ほのぼの童話(11) けんたのヴァイオリン

(画像/https://illust8.com/contents/2738) 「けんたー、何してるの。もうレッスンの時間でしょっ」  (いけねっ) おかあさんの声に、けんたはあわててヴァイオリンのケースを抱きかかえました。 「もうじき発表会なんだから、ちゃんと練習しなきゃだめでしょっ・・・もう、毎日ゲームばっかりやってるんだから」 「だって・・・」  (ヴァイオリンよりゲームの方が、ずうっとおもしろいんだもんっ) あとのことばをグッとのみこむと、けんたは玄関に向かいダーッと

ほのぼの童話(1) 「子犬のワルツ」

    (絵/ 関戸 千香) (ガタガタッ・・・・ガタッ・・・) こきざみに窓をふるわせる物音に、おばあさんは、思わずふとんから起き上がりました。 「コロ、・・・コロや?」 静まりかえった部屋の外からは、冷たい冷たい木枯らしの声が聞こえてくるばかりです。 (やっぱり夢だったのか・・・) おばあさんはコロの夢を見ていました。去年おじいさんが亡くなったあと、すっかり元気をなくしてしまったおばあさんのことを心配して、世話好きのおばさんが連れてきてくれた小犬です。 でも一週間ほど前

ほのぼの童話(2) 「乙女の祈り」

(絵/金子 玲子) 「ママ、きれいな曲ね。何ていうの?」  ピアノの横から、真由美が聞きました。 「これはね『乙女の祈り』っていう曲なの。昔ポーランドに住んでいた、真由美と同じ位の年の女の子が作曲したのよ」 「ふぅーん。すごいなぁ」 「きっと神様に、何かお願い事をしながら、作曲したんでしょうね」 「そう・・・私、次の発表会で弾きたいな」 「いいわよ。そのかわりちゃんと練習してね」 「はぁーい」  次の日から真由美の猛練習が始まりました。 あんなにピアノが嫌いだったのに、一体

ほのぼの童話(3) 「エリーゼのために」

(絵/ 関戸 千香) 「はいっ。二時間目の工作では、おうちの方と一緒に竹とんぼを作りましょう!」 先生の言葉に、恵里は思わず両手で耳をふさぎ、机に突っ伏してしまいました。 それを見て、先生はあわてて恵里の席まで駆け寄ってきて、言いました。 「恵里ちゃんは、先生と作ろっ」 今日は父毋の参観日です。でも、恵里のママだけが、どうした訳か、教室に姿を見せていません。 「最初は、この竹から削るのよ」 先生に言われて、恵里はしぶしぶナイフを手に取りました。 恵里のまわりでは、皆大きな声

ほのぼの童話(4) 「青みかんと黄みかん」

 (絵/ 金子 玲子) 「らっしやぁーい。みかんが安いよぉーっ」 さあ、味覚の秋です。スーパーの入り口には、青々とした冬みかんが丸いザルに山盛りにされています。そのずっと奥に、透明なパックにつめられた、黄色い温室みかんが置かれていました。 「おいこら、青いのっ」 パックの中の黄みかんが言いました。 「え?、僕たちのことかい」 ザルの青みかんが、びっくりして答えました。 「お前ら青くて、いかにもスッパそうだな」 「そんなこと言ったって・・・僕たち冬みかんは、今の時期にはこうい

ほのぼの童話(5) 「雨だれの前奏曲」

「・・・・・・・・・・・・・」 弱々しいピアノの音に、ふと目をあけた健太は、思わず「あっ」と叫びました。 いつの間に入り込んだのでしょう、ぼさぼさの髪に、青白い顔をしたおじさんが、ピアノを弾いているではありませんか。 おじさんは、健太の方を振り返って言いました。 「君、この曲好きかい?」 「ん・・・・あ・ん・ま・り・・・」 「そうだろう! 君がとーってもつまらなそうに弾いていたので、僕は思わず出てきてしまったのさ」  そう、健太はイヤイヤ練習していたピアノに疲れて、横のソフア

ほのぼの童話(6) 「こいのぼりのかなしみ」

  (絵/油谷 奈々絵)  パタパタ・・・パタパタパタ・・・ 五月のまっ青な空を、こいのぼりたちが、いきおいよく、およいでいます。 木々の緑のにおいをいっぱいすいこんだ風にのって、こいのぼりたちは、とても気持ちよさそうに見えました。 でも、こいのぼりたちの心のなかは、じつは、かなしみでいっぱいだったのです。 「ああ・・かなしい。 わたしたちはなんと、ふしあわせものだろう」 どうして、こいのぼりたちの心は、かなしみにあふれていたのでしょう。  それは、五日ほどまえのことでした

ほのぼの童話(7) 「こどものきらいなかみさま」

   (絵/橋谷 桂子)  むかし経ケ岳のふもとの小さな村に、こどものきらいなかみさまがいました。このかみさまは、かみさまのくせに、いろいろないたずらをしては、こどもたちをこまらせていました。わらぞうりが、かたほうなくなったり、ものかげからきゅうに手をひっぱられたりなどのいたずらは、しょっちゅうだったのです。  ある日、こどもたちは、神社の石だんのところに集まりました。 「みんな。かみさまが、ぼくたちを好きになってくれるには、どうしたらいいと思う?」 こどもたちは「うーん」

ほのぼの童話(8) 「大草村のじょうやとう」

 むかしむかし、大草村という小さな村に、古ぼけた、ちいさな『じょうやとう』がありました。 え?『じょうやとう』って何だって? そりゃ、そうですよね・・・・ 『じょうやとう』というのは、まだ、でんきがはつめいされていなかった、とおいとおいむかしに、くらい夜みちを、あかるくてらすために、みちばたにたてられた、あかりのことだと思ってください。  大草村の『じょうやとう』は、二百年いじょうもまえ、夜になると、ただもうまっくらで、さみしかった村を何とかしようと、まずしいなかから、みな

ほのぼの童話(9) 「涙」

(写真/https://yonbo-df.com/tombo45/)  お地蔵さまの縁日で有名な大草村に、トヨとヨンボという、二人の若者がおりました。 トヨは働き者で、朝早くからお日さまが伊勢の山並みの向こうに落ちるまで、毎日小さな畑で一生懸命働いておりました。 一方のヨンボはといえば、働くことが大嫌い。毎日村人たちと、賭け事に明け暮れていたのです。  でも、二人は大の仲良しでした。 ある日のこと、トヨは、道ばたに苦しそうにうずくまっているおばあさんを見つけました。 「おば

ほのぼの童話(10) 「ドント・ウォーリー」

(アテンション・プリーズ… ) 空港のロビーは、今まさに飛行機に乗りこもうという人たちで、あふれかえっています。 「気をつけてね …」 ルミ子さんは真由美の両手を、ぎゅっと、にぎりしめました。 「だぁいじょーぶ、おかあさん! 何たってジェームスが、ついてるんだから」 真由美は、横にいる金髪の大男に、いたずらっぽくウインクしました。 「でも、アメリカ人は皆、ピストル持って歩いとるっていうじゃないか」 横から、菊江おばさんが口を出しました。 「ノー、ソレ誤解デス。ドント・ウォーリ