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選挙公報も無ェ、選挙ポスターも無ェ、そもそも外で演説しねェ、選挙カーも無ェ、タスキも無ェ、俺ら人口300人東京都利島村議会議員選挙にいっだ話。

初めてだった。。。
これは本当に選挙の光景だろうか?

選挙公報がない。
選挙ポスターが見当たらない。。
外で演説している様子がない。。。
小さい村なのに選挙カーの音が聞こえてこない。。。。
候補者もタスキをしていない。。。。。
選挙事務所がない。。。。。。


僕の知ってる選挙じゃないーーーーーーーーーー


映画『イエスタデイ』で
誰もビートルズを知らない世界になってしまったように、
誰もオーソドックスな選挙を知らない設定の世界になってしまったわけではない。

現実の世界での話だ。


僕が訪れたのは東京都にある伊豆諸島の利島村。
人口300人、島の面積は東京都で1番小さい(利島の方は八丈島を都会と発言するレベル)
椿油とイルカと泳げるドルフィンスイムが有名な自然豊かな島だ。

選挙大好き芸人を名乗ってる者がイルカちゃんと優雅に戯れていたら、
「お前なんかがイルカと遊ぶな」
と代わりにシーシェパードに圧迫される遊びをお見舞いされただろう。

僕の目的はただ1つ

「人口300人の島ってどんな感じで選挙やってんの?」

利島村 ③


東京の竹芝客船ターミナルから大型客船で9時間30分
諭吉にも一葉にも乏しい僕は
英世数枚でも許してくれる10人相部屋の和室で揺られながら
朝の7時30分に利島に到着した。

ようこそ利島村


選挙目的で訪れた僕はもちろん歓迎されていなかった。。。


島の高揚感を感じる間もなく
宿泊予定の宿の方の送迎車の中で
ショッキングなアドバイスを頂いた。
「台風発生したので、明日の昼便なくなるかもしれないです」

え??


その後、島の方からのリサーチ結果
本日の12時代の船に乗らないと1週間ぐらい島から出られない可能性、、、

”滞在時間約4時間確定”

オワタ

利島村 坂①

利島 坂②

オールスター感謝祭の放送時間より短い
4時間という制約のせいか、利島村の特徴である坂の多さが右心房を破ってくる坂であった。


7時30分に到着した後、
選挙開始まで約1時間ある。
がしかし!
1分1秒を争う目バキバキのトレーダーのように
速攻、島民の方に選挙について話かける事に。(凄い緊張はします)


山本期日前「あのーこの島で選挙の時、演説やる場所って分かりますか」
60代ぐらいの島民「演説なんてやらんよ」
??
山本期日前「演説やらないんですか!?」
60代ぐらいの島民「見たことないねぇ」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

衝撃を受けた。もう利島に来てよかったと思った。
序盤の高速道路で踊っているシーン終わって、映画館に来てよかったと思った『ララランド』現象を味わった。


緊張が一瞬にして吹っ飛んだ僕は
役場の近くに選挙ポスター掲示板がなかったので、ついでに確認してみる。

山本期日前「選挙ポスターっていつもどこに張られますか?」
60代ぐらいの島民「選挙ポスター?」
山本期日前「候補者の顔写真が一斉に張られる掲示板です」
60代ぐらいの島民「あー都知事選の際にあるやつね」

村長選や村議選では
選挙ポスターは存在しなく
選挙ポスター=都知事選の際にあるやつであった。

えーと、ちなみに、、、

選挙公報も都知事選の際にあるやつであった。

選挙ポスターも選挙公報も、演説もない中で
”どうやって立候補者が分かるのか”
ピュアに疑問に思ったので聞いて見た。
60代ぐらいの島民「島全員が顔見知りだからね。誰が出るかは自然と伝わるよ。」

口コミ!????

役場

役場にも同じ質問をしてみた

役場「伝わる」

役場公認の口コミで候補者分かるでしょ公報だった。
特に選挙の啓発はしないという。

いやいや!!選挙の啓発はちゃんとしないと駄目でしょう!!!
選挙カーも選挙ポスターとか見て選挙って気づく人多いじゃん!!!!
それが、そもそもないんだから知らずに終わっちゃうよ???
大丈夫ですか!!!!!?


前回2016年の利島村議選の投票率 94.49%


ごめんなさい(土下座)・・・


投票に行く事に関して色々聞いていると、
顔見知りならではの弊害が存在した。

60代ぐらいの島民「投票にいかないとバレるのよ」


初対面なのでそれ以上は聞けなかった、、、


候補者に聞き込みしたいけど、
誰が候補者か、そもそも誰が立候補するのか分からないという絶望感に陥った。

そこで今年の都知事選でフリージャーナリストの畠山さんに教わった、立候補届け出会場に訪れる候補者を待つという戦法を思い出した。
この人口300人の島で畠山式メソッドを繰り出す事にした。

ただ、役場の中で待機してよさそうな雰囲気ではなかったので、役場から出てきた方に声をかけにいく戦法に。。。(もちろん出待ち中は島民の方に迷子の観光客だと思われ、優しく現地の観光スポットへの道を案内された。)

利島村 役場看板

そして、封筒を抱えた70代ぐらいの男性がゆっくり役場から出てきた。

絶対候補者だ!!

そして
「すいませーん」と声をかけた所
なんと自宅でお話を伺える事に!

共産党の笹岡議員

利島村議会議員の共産党の笹岡寿一さんだ!

笹岡さんは79歳で村議通算9期を務めている大ベテラン。
落選も3回経験されており、今回13回目の挑戦だ。
利島村議選の定数は6
2012年は21票で落選 2016年は45票でトップ当選という、
24票違うだけで1位or落選という激しすぎる世界を戦っていた。

選挙初日の午前中にも関わらず
僕に1時間も話して頂いた!!!
共産党という大政党にも関わらず、立候補届け出直後に話しているのが山本期日前という世にも奇妙な物語であった。(本当にありがとうございます)

Q①どんな選挙活動を行っているのか
・選挙カーなし
・街頭活動なし
・タスキなし
・出陣式、最終演説なし
基本は対面でお願い。※(公選法の戸別訪問には違反しない形)
・公選ハガキは候補者以外には基本送る。(町村議選は800枚までOKなので全戸いける)
・電話作戦あり

本当に演説やっていなかった、、、
基本全員知り合いなので、直接話すのが利島村の選挙戦術みたいだ。
ちなみに、コロナの影響で対面が難しくなっており、選挙戦に影響が出ているという。

Q②何故タスキをかけないのか

「タスキは知らない人に名前をアピールするために必要。この島じゃ顔が分かっているからいらない。」

既に誰が候補か知っているから、そもそもタスキなんていらないのだ!

ちなみに笹岡さん曰く、他の候補もタスキをつけていないらしい。

さらに笹岡さんはタスキを仰々しいと言っていた。

Q③演説は今までやってこなかったのか

「20年前とかは選挙演説やっていた。他人行儀みたいな感じで利島に本当に演説が必要なのかという雰囲気があった。反省して、辞めた。」

さらに、
演説を行ったせいで反共宣伝の材料に使われてしまった経験があるという。
「”保育園の前で子供が寝てるのにガーガーガ―ガ―演説をやっていた。”という噂が広がった。そんなことはやっていないのに」


Q④何故24票の得票を上積みする事ができたのか。
・島の反共意識の薄れ
・島の浮動票の存在
・現村政への不満
・「あしたば」という議会報告レポートの存在

なんと人口300人の利島村では、
投票先が固定されていない浮動票が増えてきているみたいだ!!
昔は親族の人数だけで決まっていた部分もあったが、利島村出身以外の方が増加傾向にあり、親族の取り合いの選挙から変わってきてるという。

農協、漁協、郵便局、役場、学校の先生、配偶者のほとんどが利島の外からやってくるという。

利島村学校

利島村立利島小中学校に赴任してきた先生の1票で当落が変わるかもしれない、、、

笹岡さんがいうには
半世紀以上続けている議会報告レポート”あしたば”を全戸にポスティングしている。これをやっている議員が他にいなく、新しくきた島民の皆様にも歓迎されているという。

あしたば

あしたば②

Q⑤300人の島での共産党はどうなの?

・島は保守的 昔は反共宣伝が凄かった。
安倍政権への批判から、反共意識が薄れてきている。
・他の共産党の議員同様、憲法9条等の国政レベルの問題点も訴える。

「自助・共助・公助っていいますか、自己責任を強調しているような福祉であったり、企業の規制が緩められて働く人たちの身分が不安定になっても効率化だけを求めるという政策がこの島でも反映されている。その中で反共攻撃が通りにくくなっている。」

自助・共助が強いと思っていた、人口300人の島でも自助・共助が強くなる社会を否定していた。

聞いていいのか分からない、禁断の質問をしてみた。(ゾクゾク)


前回33年ぶりに村長選挙が行われ
前田福男氏98票、梅田氏93票、前田隆夫氏39票というわずか5票差で決着した。ズバリ聞いて見た。

Q⑥前回33年ぶりの村長選挙だったが、しこりはある?

・特にはそういう動きはない。
⇒実際、選挙後に島から追放された人はいない
・村長選中に「自分達が推す候補が当選しない場合は一切協力しない」という駆け引きはあった
⇒実際、現村政に対し、何がなんでも反対っていう動きは出ていない。
・政策面で住民同士が対立することはある
⇒実際、メンツ、人間の好き嫌い、反村長派だからという理由で争っているわけではない

質問に対し、そんなにタブーな感じで答えていなかった。本心だと思った。

非常に優しい利島村の皆様が、選挙選後もウォーキングデッドのグレンみたいに優しさが変わらないでいてくれて嬉しかった。

椿

笹岡さんは議員以外に副業として農業もやっている。(名産の椿油)
議員報酬は月11万円代だ。
ちなみによくある選挙活動はやっていないので、ほとんど選挙に金がかからないらしい。

利島村では議員と住民の距離が近かった。
昔から知り合いすぎた。
だから利島村では議員を先生って呼ばない。

先生って呼ぶ方は島の外の人間。(僕も呼んでいて指摘されました。。。)

島の方はさん付け、あだ名、屋号で呼ぶ。

僕がみたのは島民が議員に対して
「おー」

素敵な関係であった。

島での滞在は約4時間
その時間は本当に選挙活動の声や音は聞こえてこなかった。

船 汽笛

聞こえてきたのは船の汽笛だけ、、、


帰りの英世数枚の船の席で、あるニュースが目に入る。

無投票当選

山本 笹岡議員

笹岡議員は10期目を迎える。

僕は無投票当選の選挙を見に行っていた。
台風が来ているのに、選挙では無風だった。
ただ弁明すると、笹岡さんも他の住人もお会いした際は無投票になるとは思っていなかった。

利島村の皆様は、本当に温かった。
さらに、宿泊予定だった「民宿しんき」さんにはご厚意で
「代金いらないよ」
と急遽のキャンセルにも関わらず、宿泊代を無しにして頂きました。
料理が美味しいと評判ですので、別の機会での宿泊を楽しみにしております。

その日は村長選かも・・・

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