マガジンのカバー画像

詩集について

16
拝受した詩集について、書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

依田義丸詩集『連禱』 

 依田義丸さんの奥様、依田真奈美さんから詩集『連禱』をご恵贈頂いた。闘病中でいらした依田…

橘しのぶ
8日前
17

柏原康弘詩集『詩の故郷吉備スケッチ帳』

 先日、岡山の後楽園で行われた市の朗読会でお知り合いになった柏原康弘さんから第三詩集『詩…

橘しのぶ
7日前
17

泉水雄矢詩集『unbox/開けてはならない』

 泉水雄矢さんの第一詩集(私家版)。20の詩篇収録。その中で、巻頭詩『深淵の里』だけを独立さ…

橘しのぶ
1か月前
20

小山修一詩集『風待ち港』

 あとがきに、「‥‥手もとに置いてたのしく読んでいただくことができたなら著書としてこのう…

橘しのぶ
1か月前
13

にしもとめぐみ詩集『女は秘密を歩き始めてしまう』

 本詩集は、扉に、リルケの詩の一節を置き、27篇の短い詩から成る。そのいずれもが恋の詩だ。…

橘しのぶ
1か月前
18

秋山基夫詩集『花下一睡』

うららかな春の日、私は、まぁるくすきとおった砂時計の底に体操座りさせられているような錯…

橘しのぶ
1か月前
18

死と愛 粕谷栄市詩集『世界の構造』より

 粕谷栄市さんが詩集『楽園』で、第42回現代詩人賞を受賞なさった。粕谷さんの詩は、以前から好きなのだけれど、意識的に読んだことがないので、先ずは現代詩文庫67(1976年初版・思潮社)を購入。こちらには、第一詩集『世界の構造』(1970年、詩学社)と未完詩集やエッセイなど、初期作品が収められている。『世界の構造』から、一篇、挙げてみる。 死と愛  死んでしまった一人の少女に就いて、書いて置きたい。私の育った町の大きな家具屋の娘で、幼なじみであったのだ。 変わった

大木潤子詩集『遠い庭』書評

「遠い庭に永遠の詩を尋ねて」  万緑匂う表紙を開き、頁を捲ると、文字が夏草になってそよぐ…

橘しのぶ
2か月前
17

野木京子詩集『廃屋の月』

二十数年前、詩人の松尾静明さんから「橘さんにとって、詩を書くとは、どういうことですか?…

橘しのぶ
3か月前
16

水嶋きょうこ詩集    『グラス・ランド』

歓喜とは出て行くこと 内陸の魂が大海へと、 家々を過ぎ─岬を過ぎ─ 永遠の中へと深く─  エ…

橘しのぶ
4か月前
16

魚本藤子詩集『北浦街道』

生活者の温かい目線で綴られた二十二篇の詩が、二部構成で収められている。巻頭詩「手紙」に…

橘しのぶ
4か月前
13

松岡政則詩集『ぢべたくちべた』

 同郷の松岡さんとは、第一詩集『川に棄てられていた自転車』の頃、交流があった。差別をテー…

橘しのぶ
4か月前
15

武田地球詩集『大阪のミャンマー』

武田地球さんの言葉には旋律がある。『大阪のミャンマー』『チェルノブイリにチェが降った』…

橘しのぶ
4か月前
22

滝本政博詩集『エンプティチェア』

 精神療法の一つに「エンプティチェア」というものがある。向かい合わせに二つの椅子を用意して、一方の椅子に腰かけ、もう一方の空っぽの椅子に誰かが座っているとイメージして、言いたいことを言う。次にもう一方の椅子に座り直し、「誰か」の立場になって、言葉を返す。それを繰り返すことで、客観的な視野を持ち、心の問題が解決されるらしい。滝本さんの第一詩集のタイトルにもなっている巻頭詩が好きだ。     エンプティチェア  テーブルにはニ脚の椅子があり  その一つに座っている  対面す