「お薦めのジョジョの部」とかいう議論に乗っかってみる。

巷では、お薦めの「ジョジョ」の部とかいう議論をたまに見かける。
好きなキャラクターや好きな必殺技についてなら、いろいろな漫画作品で出来るけれども、好きな部(パート)について語れるのは、漫画作品は数あれど「ジョジョの奇妙な冒険」ぐらいのものであろうか。

一時期の「ジョジョ」のインフレ人気も落ち着いてきた印象で、今、「ジョジョ」を語ることについては、やれやれと思われるかもしれないが、「ジョジョ」と一緒に時代を生きてきた者にとっては、やはりなんだかんだで「ジョジョ」のことを考えるのは楽しいのだ。

イロモノ漫画からスタートしていたはずの往年の「ジョジョの奇妙な冒険」が、あれよあれよという間にレジェンド化。
新しい世代のファン層の出現と、インフレーション気味の人気に、もはや「ジョジョ」という作品は、自分の物じゃあないような気がしていたから、むしろ、一段落した今の方が、「ジョジョ」について語る気分になれるというものだ。

「ジョジョの奇妙な冒険」は、主人公が交代しながら長期に渡って継続している漫画なので、よく「ジョジョ」初心者を交えた席では、お薦めの部はどれかとか、どの部から読むのがいいのかといったことが語られるのが定番になっている。

だいたいは、先行して「ジョジョ」にハマっていた人の見解が、洪水のように語られることが多いわけで、そのままその場はJOJOラーに押し切られてしまうと言っていいだろう。
読みたい側の人となりを考えて薦めてあげればいいのにと思うのだが、JOJOラーたちの気持ちもわからなくはないので、聞いていて苦笑いになってしまう。

「ジョジョ」については各部ごとに、ストーリーの雰囲気がかなりがらりと変わるので、読みたいと思った側の趣味嗜好や性格によって、薦めるべき部は変わってくるのかなと思うのである。

そこで、9部1巻刊行記念、こんな人には、この部(パート)がお薦めという覚え書きのようなものを、気楽に書いてみる。
こんな人にはこんな「ジョジョ」。


まず、「ジョジョ」という作品の傾向として、長距離を移動する旅によって物語が進行するマクロ志向な部(②③⑤⑦)と、閉じられた空間を舞台に物語が進行するミクロ志向な部(①④⑥⑧)に大別されると思う。
ロードムービー型(RM)と、クローズドサークル型(CC)と言ってもいいかもしれない。

1部 ジョースター邸周辺(リヴァプールか?)から、ロンドン近郊(CC)
2部 アメリカ、メキシコから、海を越えて、イタリア、スイスへ(RM)
3部 日本、シンガポール、インド、サウジ経由、エジプト縦断紀行(RM)
4部 S市杜王町内の出来事(CC)
5部 イタリア半島縦断紀行(RM)
6部 フロリダ州G.D.st刑務所内の出来事から、ケープカナベラル(CC)
7部 北米大陸横断紀行(RM)
8部 S市杜王町内の出来事(CC)

ロードムービー型にはバトル要素・タイムトライアル要素が多めに加わり、クローズドサークル型の序盤にはサスペンス要素・ホラー要素が多めに加わるという傾向もある。

もしも、もう既に気に入っている「ジョジョ」の部があって、次にその部と似た雰囲気のストーリーを楽しみたいと思っているのであれば、以上のことを参考にして次に読む部を選択すれば、あながち間違うことはなかろうかと思う。


1部 ファントムブラッド
・「シャーロック・ホームズ」と、その時代のロンドンの情景が好きな人。
・往年のゾンビ映画が好きな人。
・アイテムや才能などで安易に成長する主人公が嫌いな人。
・主人公よりも、悪役の魅力の方に目が行ってしまう人。
・人間やめたいと思ったことのある人。
・石仮面が骨針を出すまでのあいだ、根気よく待てる人。
・イロモノ好きを自負している人。
・原点至上主義の人。
・とりあえず一本、短めのストーリーを手早く読み終わりたい人。
 
2部 戦闘潮流
・機転と機知、イカサマやブラフといった、頭脳戦が好きな人。
・トリックプレイやマジックの種明かしが好きな人。
・少年漫画的な主人公より、ふざけたトリックスターの方が好きな人。
・それでいて、武人や戦士の心意気にはグッとくる人。
・努力って言葉が嫌いな人。
・シャボン玉フェチの人。
・肉体の限界について興味がある人。
・古代ローマが舞台の映画で見た、チャリオットレースが気になった人。
・ドイツ兵やミリタリーが好きな人。
・「名探偵ポワロ」に描かれる戦間期の描写にグッとくる人。
 
3部 スターダストクルセイダース
・王道を求める人。
・区切りのいいところから、要領よくオイシイところを楽しみたい人。
・90年代の世相や文化、海外旅行事情に郷愁を覚える人。
・世界の便所事情に興味のある人。
・スタイリッシュなかっこよさと、ダサかっこいいのと、両方が好きな人。
・くだらんダジャレやギャグテイストも好きな人。
・決して崩れないクールな主人公が好きな人。
・いやいや、直情径行型のハンサムガイが何より好きだという人。
・むしろ、かっこいいジジイを求めている人。
・悪の救世主にひれ伏してみたい人。
・「刑事コロンボ」が好きで細かいことが気になる人。
・ギャンブル好きの人。
・スタンドバトルの意味やルールが掴めない方は、まず3部で慣れるべき。
 
4部 ダイヤモンドは砕けない
・日常に潜む恐怖を扱った作品や、サイコホラー物が好きな人。
・クローズドサークル物の推理ミステリーなんかが好きな人。
・スタイリッシュなかっこよさより、むしろダサかっこいい方が好きな人。
・愛すべき馬鹿が好きな人。
・仙台市で暮らしたことのある人。
・イタリア料理が好きな人。
・植物のように静かに生きる人生に共感をおぼえる人。
・自分のソーシャルステルス性能を試してみたい人。
・平凡な結婚生活にドキドキできなくなって、変化を求めている人。
・永遠に繰り返される時間の連環の恐怖を見てみたい人。
 
5部 黄金の風
・まずは一番脂の乗った部位から食べたいという人。
・スタイリッシュなかっこよさを求める人。
・ピカレスクロマンが好きな人。
・漫画はやっぱりイケメンよという人。
・地中海の空と海と、ルネサンス芸術が好きな人。
・ジッパーフェチの人。
・結果だけを求めたくない人。
・自分は人格障害があるのでは…と、不安に思ったことのある人。
・運命について考えたことのある人。
・あくまで陽気に楽天的に、辛い運命をも乗り越えていきたい人。
 
6部 ストーンオーシャン
・女性主人公とか面白いじゃんと真っ先に思う人。
・スタイリッシュでかわいかっこいいのが好きな人。
・監獄生活に興味のある人。
・健忘症や認知症に、得も言われぬ恐ろしさを感じている人。
・昔、絵本の世界に憧れてた人。
・カエルフェチ、カタツムリフェチの人。
・数学や物理学が嫌いじゃない人。
・空間描写の精緻を楽しみたい人。
・実存主義哲学とかが好きな人。
・個人的に6部は一番最初に見るべき部ではないと思う。
(順番通りの6番目に、最低でも4番目に読むべき価値が大きすぎる。)
 
7部 スティールボールラン
・アメリカ西部開拓時代モチーフの映画やゲームが好きな人。
・単純に、北米大陸横断というフレーズにワクワクが止まらない人。
・ラリーレイド競技や、ツーリング、車中泊などが好きな人。
・旅とは、移動そのものを楽しむことにあると考えられる人。
・考えの異なるライバルたちと、同じゴールを目指すシチュエーションにワクワクする人。
・共闘関係によって形成される仲間というのもアリだと考えられる人。
・競走馬が好きな人。
・ジュラシック映画が好きな人。
・男の価値観で生きようとして社会から浮いてしまうことの多い人。
・今よりもっと個性を出して生きたい人。
・後悔や赦しについて考えることの好きな人。
 
8部 ジョジョリオン
・難解というか迷走というか、基本的に、8部は一番最初に読むべき作品ではないと思う。
・まず、「ジョジョ」の世界観を好きになってから読むべき作品。
・ゆえに、手っ取り早く玄人感を醸し出したい人。
・黙っててお金が増えないかなぁと思っている人。
・毎日が夏休みならいいなぁと思っている人。
・大型甲虫や虫相撲が好きな人。
・出来れば誰かと交換したい、人生の重荷がある人。
・家族のためなら、罪を犯すことも考えられそうだという人。
・幸運が主人公側に味方しない世界観にフラストレーションの残らない人。
 
9部 The JOJOLands
・とにかく漫画はリアルタイムで楽しみたいという人。
・ハワイが好きで好きでたまらない人。
・9部が完結するまでのあいだ、ほかの部には手を出さないと豪語できるツワモノの人。


結論としては、「ジョジョ」の各部は独立して楽しめるようにも出来ているので、スタンド能力というものについての予備知識のある人であれば、どの部(パート)から読み始めても問題はないと思う。
スタンド能力についての予備知識のない方で、スタンドバトルから読みたいという人だけは、3部スタートがよさそうだ。

まぁ、どの部(パート)から読み始めたとしても、一度気に入ってハマってしまったら、きっとすべての部を読まなければ気が済まなくなるであろうから、ひとつの部(パート)を試し読みして「ジョジョ」の作風を気に入ったのなら、すぐにその部(パート)を読むのを中断して、第1部第1話から読み始めるのがいいかと思う。

つまるところ、「一番の近道は遠回り」なのである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?