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プレミアリーグ第33節ウルブズvsアーセナル

試合前の予想

リーグ戦6位のウルブズと8位のアーセナル。両者の勝ち点差は6とアーセナルにとっては上位を目指す上で勝利し勝ち点差を縮めたい一戦である。アーセナルはリーグ戦でサウサンプトン戦、ノリッジ戦と2試合連続でクリーンシート、また複数得点での勝利を収めている。一方のウルブズもリーグ戦再開後3試合連続クリーンシートでの連勝で非常に堅い試合となることが予想された。また、アーセナルがパワー、スピードを兼ね備えたアダマ・トラオレにどう対応していくのか注目していた。

※アーセナルの予想スタメン

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アーセナルは前節からの変更が3人。右WBにセドリック、右WGにサカ、CFにエンケティアを起用した。

予想通りの堅い序盤

アーセナルは前節同様に前線からのプレスを積極的に掛けていきできるだけ前線でボール奪取を狙う。しかし前節に比べ、1人目、2人目と相手のパスコースを限定しているものの3人目の寄せが甘く、上手く剥がされているシーンが多くみえた。ウルブズも5-3-2のシステムでは非常に完成度が高くボールの回りが良かった。特に同サイドにならないよう、詰まったらCBのコーディーまで下げ、そこからのサイドチェンジという形が徹底されていた。

そんな中でアーセナルはダヴィド・ルイスやムスタフィを中心にアダマ・トラオレに仕事をさせていなかった。前半24分ハーフライン近くでアダマが後ろ向きでボールを受けたもののムスタフィがピッタリと背中に付き前を向かせる事無く、見事にボールを奪いきることに成功した。そのあとは味方の攻守の切り替えが遅くカウンターに繋げることが出来ずにルイスまでボールを下げることとなったもののムスタフィが球際での強さを見せつけた。さらに、前半31分アダマに縦パスが入り、左サイドから突破しようとしたシーンはルイスがカバーに入りやむなくファールで止める。結果として警告となったものの深い位置に侵入される前に止めたいいシーンだった。

戦術的な変化でリズムが出てきたアーセナル

前半30分ほどから前線、中盤でプレスに連携が現れるようになった。また、序盤はエンケティアが相手DFの裏を狙いすぎていてDF、MF、FWが完全に分裂してしまいチャンスが生まれないことが多かった。しかし、この時間からエンケティアがトップ下ぐらいの位置まで下がるようになり両WGもより前でプレーできるようになった。前半34分ムスタフィはボールがアダマの足下に入る前にインターセプトしジャカにボールが繋がる。そこからスルーパスが出てエンケティアが抜け出しシュート。惜しくも相手GKに防がれたが、段々相手のゴール前に侵入するシーンが増えてきた。

そんな中で前半42分試合が動いた。右サイドでセドリックがボールを持ち、エンケティア、サカが前方でボールを受けに入る。ウルブズは左サイドの守備に人数をかけるが、そこで左WGのオーバメヤンが中央でフリーになりセドリックすかさずパスを出す。左WBのティアニーが上がってきていることを確認していたオーバメヤンはクロスの上げやすい位置に優しいパスを送る。ティアニーはダイレクトでクロスを上げ、DFに当たってコースが変わったもののサカが上手く対応し左足でダイレクトボレーを決める。この一連の流れは手数をかけずに非常にシンプルなものであった。上手く相手を引き付け、空いた選手に良いタイミングでパスを出す。ただ、このシーンの前までボールポゼッションするシーンが何回かあったからこそ相手の守備がボールサイドに寄り逆サイドが空くのであってただシンプルな攻撃をやり続けてもフィニッシュまで行く可能性は低い。

アダマに仕事をさせなかった男達

アダマが前半の主戦場としていたのは左サイド、後半は右サイドであった。アダマは前線の位置から少し下がって足下で受け、それから前を向いてドリブル突破を仕掛けるというプレーが特徴である。ディフェンスの優先順位としては①インターセプト、②前を向かせない、③遅らせる、が基本である。それを踏まえてこのゲームでは③の段階まで対応が悪くなることは非常に少なく、アダマの思うようなドリブル突破をさせなかった。

そして特にアダマを抑えていた選手が前半はムスタフィ、後半はナイルズである。ムスタフィの良かったプレーについては上記の通り。ナイルズは後半11分にティアニーと交代でピッチに立った。彼の欠点としてプレーの安定感の無さというのが大きく、途中出場であるとチームのリズムが崩れてしまう可能性を考えていた。しかし左WBのナイルズと3バックの左サイドを務めるコラシナツが上手く連携をとりアダマを抑えていた。ナイルズは十分な間合いをとり、縦のコースを切ることだけに徹底。そしてコラシナツはアダマが中に切り込んで来るとすかさず寄り、ドリブル突破できるような十分なスペースを与えないディフェンスが出来ていた。ウルブズの対戦相手からすると、アダマが右サイドを突破し深い位置からセンタリングをあげ、ヒメネスの頭に合わせるという形もウルブズの得点パターンとして非常に脅威となる。しかしこのようなシーンはほとんど見られずウルブズとしてもとてもやりにくさを感じていたのではないだろうか。

ラカゼット、トレイラの途中出場でリズムを取り戻す

アーセナルは後半38分セバージョスに代えてトレイラ、エンケティアに代えてラカゼットを投入。この直後からチームがリズムを取り戻したように見える。ラカゼットは裏を狙う動きが多いエンケティアに比べて比較的下がってポストプレーをするタイプのFWである。また、広い視野を持ち展開力やキラーパサーといったセバージョスに比べ、トレイラはボール奪取やセカンドボールの回収など守備面で見せ場のある選手だ。その交代ではアルテタ監督のメッセージが明確だったように思う。1-0リードのまま時計の針が進む中で運動量の欠かせない中盤には潰し役のトレイラを途中起用することで相手はうまく攻撃の流れを作ることが難しくなる。さらに、ラカゼットがタメを作れることでチームの攻守の切り替えの部分や無理にロングボールを蹴ってロストする場面を減らすことにつながる。

そしてこの2人が投入されて約5分後の後半41分オーバメヤンから右WGで途中出場のウィロックへ。ウィロックがタイミングを伺いながらドリブルで前へボール運ぶ。そしてラカゼットが中でファーにいくと見かけてニアへ走り込むとその動きを確認していたウィロックが相手の股の下を通して低く速いパス。ラカゼットはワンタッチで相手DFを剥がし、ゴールの左隅へシュート。見事に決めきった。PA内でのラカゼットはボールの扱いは勿論のこと、動き出しや動き直しの引き出しが非常に多い。彼の凄さは言うまでもなく、彼自身がプレーで示してくれている。

次節はレスター

レスターは現在3位でCL出場圏内を狙う非常に難しい相手となる。ピッチを幅広く使いながらボールポゼッションして相手の綻びを突くようなスタイルだ。また、現在PL得点ランキング1位のバーディーには要注意だ。抜け出しのスピード、そして、得点力。クリーンシートが続いているアーセナルの守備陣がどこまで彼に仕事をさせないか見ものである。