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「それはまだ、流行っていない。」のコピーが素敵 サントリーのジャパニーズジン『翠』のCM

久しぶりに銭湯に来ました。が、狭いサウナにおっさんが10人ぐらいいる光景を見てサウナに入るのは止めました。明日朝入れたら入ろう。

最近良いなと思った広告について書きます。

最近OAされたこのCM、見たことありますか?
サントリーから新発売されたジン『翠』のCMです。
鳥貴族にあるこいつです。まだあんまり目立ってないかも。

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徐々にジンソーダが置かれている居酒屋が増えていると思います。
でも変じゃないですか?『ジンソーダ』って。
いままでジンの飲み方と言えば、「ジントニック」だったり、「ジンバック」だったりで、『ジンソーダ』はあんまりなかったはず。
(※1年半前ぐらいまで自分はトニックウォーターと炭酸水の違いを知りませんでした)

ジントニックと言っても、やっすい居酒屋の飲み放題メニューのカクテル欄か、バーぐらいでしか接点がないぐらい。


で、このCMです。

このCMで言いたいだろうことを簡単にまとめると、
・ジンはソーダで割ってジンソーダで飲むのが美味いらしいよ
・バーのイメージあるけど、居酒屋で出てきてるよ
・ジンソーダは居酒屋メシに合うよ
・これからジンソーダが流行るよ(今はまだだけど)


あとはジンソーダのすっきり感、東京03の角田さんを起用することでの、良い意味での庶民の飲み物感。(※家用の瓶でいけば、角ウイスキーとかと同じ値段です) とはいってもおしゃれな今時感。


いままで消費者との距離が遠かったジンを、
ソーダ割という切り口で、居酒屋メシに合うお酒(飲み方)であることを武器に、ぐっと距離を近づけようという戦略
だと思います。たぶん。

今でこそハイボールって居酒屋の定番で、若者はむしろビールよりハイボールを頼む人が多いくらいですけど、10数年前までウイスキーって「おじさん臭いダサいお酒」で。ソーダ割で飲む、ハイボールも浸透していなかった。
そこで、ウイスキーをソーダ割で飲むハイボール訴求をして、消費者との関係を変えた訳です。

それと同じことをジンでも、っていうことですね。
確かに今はビールよりも、ハイボール/サワー系が圧倒的人気であるように、「食事を邪魔しないすっきり系」のお酒を求める嗜好の人が増えているように思うので、チャンスは多分にありそう。

(以上ちょっと使える雑学コーナー)


ウイスキー⇔ハイボールのようにジンを、ジン⇔?で、流行らせたい趣旨のオリエンが広告代理店にあり、ジンソーダに落ち着いたと思うのですが、メインコピーの、それはまだ、流行っていない。が素敵。

大手飲料メーカーが新商品を出せば、お酒変態のイノベーターはまあ動くので、さらにそこで、どれだけアーリーアダプターを巻き込んで、「おい、マジでジンソーダ流行っているらしいぞ」と世の中事化させていくかが肝なのです。

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アーリーアダプターとは、イノベーター理論における5つのグループの1つ。流行に敏感で、自ら情報収集を行い判断する層。新しい商品やサービスなどを早期に受け入れ、消費者に大きな影響を与える。オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%を構成。


それはまだ、流行っていない。
は、まさにアーリーアダプターの「俺ってこういうの知ってるんだぜ」心をくすぐるコピーではないでしょうか。
「流行っているよ」だと、アーリーアダプターの自尊心をくすぐれない。「まだ流行っていないけど、これから流行るよ」構造に意味がある訳です。

さらに秀逸だなと思うのが、肯定形ではなく、いまは流行っていないよと、含みを持たせる否定形であることで、将来流行ることがより確かそうに聞こえるところ。
アーリーアダプターの遅めの人(そんな概念あるのかはわからない)は、そこまでトレンドに対する自分のセンスに自信がない層だと思うので、「確実に流行るんだな」といかに保証するかが大事。ただ、安易に肯定形でいうと、おそらく響かない。



戦略といい、メッセージ情報量のちょうど良さといい、起用タレントといい(桜井ユキさんとかまさに翠の擬人化かよっていう)、イメージカラーといい、メインコピーといい、レベルが高すぎて素敵な広告だなと思いました。


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