ネコゴコロとヒトゴコロ その11

あくびはうつる?

 質問です。近くにいる誰かがあくびをしたとき、あなたは?

 Aあくびがうつったり、うつりそうになる
 Bあくびがうつることは滅多にない

 実はこれ、あなたの『共感力』をチェックする簡単なテストです。
 共感力とは、相手の立場や視点に立って物事を判断する力、良好な人間関係を築くには欠かせない能力のことです。
 心理学の実験によると、「共感力が高い人ほど、他の人からのあくびをうつされやすい」ことがわかっています。ということは、Aを選んだ人のほうが共感力は高いということ。

 人間以外でも“あくびがうつる”動物はいます。その代表格が犬。遠いご先祖のオオカミもあくびがうつるらしく、その共通点は群れで暮らしていたり過去にしていた経験があること。群れで暮らすと必要になるのは互いのことを気遣える共感力です。いつも周囲に気を配っているので、ついあくびもうつってしまうのです。
 その特性は、犬が人間と暮らすようになっても引き継がれています。なので、飼い主があくびをしたら犬まであくびをするという現象も起きるのでしょうね。

 ならば、猫はどうなんでしょう。飼い主かあくびをしたら、猫もあくびをしてくれる?
 残念ながら、その可能性は低そうです。理由は、猫は犬と違って単独行動を好む生き物だということ。自分に得があれば甘えてきますが、そうでない場合は飼い主が遊びに誘ってもしらんぷり。共感力という点では、落第点をもらってしまいそうな動物ですものね。

 あくびがうつるためには、なぜ共感力が必要なのか。それを実験で証明した心理学者がいます。スコットランドのアンダーソン博士がその人。
 博士の研究によると、人間であくびがうつり始めるのは5歳くらいからで、それより幼い乳幼児ではあくびはうつらないことがわかったのです。
 なぜ赤ん坊はあくびがうつらないのかといえば、自分中心で生きているから。すべて周りが世話を焼いてくれるので、共感する必要がないのです。
 それが5歳くらいになると、世界は自分中心に回っているわけではないと、だんだん思い知るようになります。幼稚園などに入れば、新たな人間関係が生まれますし、共感力を身につけないとやっていけなくなります。ですから、あくびもうつるようになるわけです。

 以前と比べると、身近な人があくびをしても、それがうつらなくなったという人は、考え方が自己中心的になっていないか(猫化していないか)、ちょっと自己を省みる必要があるかもしれませんね。


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