ネコゴコロとヒトゴコロ その10

“猫っかわいがり”する

 「猫っかわいがりする」という言い方があります。むやみやたらに甘やかしてかわいがったり、溺愛することをそう言います。でも、考えて見たら、なぜ“猫”限定で、「犬っかわいがり」とか「ウサギっかわいがり」とは言わないのでしょう。
 思うに、それは猫が永遠のネオテニー(子供っぽい顔立ち)で、しかもすこぶるつきの甘え上手だからなのでしょう。

 ちなみに、ネオテニー(幼形成熟)とは、生き物が幼い頃の特徴を残したまま、肉体的にも精神的にも成熟すること。
 そもそも動物の子供って総じてかわいいですよね。その特徴は、「体に比べて頭が大きい」「黒目がちな目」「手足は短くて、ずんぐりしていてぽっちゃり」etc.
 そうしたかわいいと感じさせる特徴を彼らが持っているのは、自力では生きられない未熟なうちは親に世話をしてもらう必要があるためです。
 野生動物の場合、そのような幼い頃の特徴は成長するにつれ消えてしまいます。一刻も早く自立することが求められるのですから当然です。表情や体つきも幼い頃とは打って変わって頑丈で険しくなります。
 でも、家畜化された動物は違います。大人になっても幼さを残すのです。それは、飼い主にいつまでも世話をしてもらうため。
 それが、明白に表れるのが犬や猫といったペットたち。特に猫は、年老いても幼い特徴をしっかり残しているので、飼い主はそのかわいいさに思わず頬ずりしてしまいます。相手がいい歳をしたお爺さん猫やお婆さん猫であってもです。猫はまさに永遠のネオテニー的存在なのですね。

 そんなネオテニー化は現代人にも見られます。
 論語に「子の曰く、吾れ 十有五にして学に志す。 三十にして立つ。 四十にして惑わず・・・・」とあるように、昔は30歳といえば立派な大人で、歳を重ねた年輪は表情にもしっかり刻まれていました。
 今は違います。30歳でも生き方が定まらずにフラフラしている人はざらにいますし、表情にも幼さがしっかり残っています。ルックスにしてもファッションにしても十代といっても通りそうな人が大勢街を闊歩しています。きっとそのほうが親の庇護を受けやすいことを意識的にも無意識的にもわかっているからではないでしょか。
 そういう点では、猫も現代人も同じ戦略をとっているんですね。



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