テクノナショナリズムという病


日本すげーな現実が見えていない記事です。

米英豪「AUKUS」潜水艦計画に中国が本当は胸をなでおろしている理由
https://news.yahoo.co.jp/articles/813b32848a180007af51d976af59286964d8d1bd?page=1

>■ 中国が警戒した日本製潜水艦の調達
>中国にとって幸いであったのは、武器取引先進国のフランスが新設計する潜水艦が採用されたことであった。これによって、もしフランス製潜水艦が日本製潜水艦と同等の性能であったと仮定した場合でも、少なくとも納期は大いに遅れることがほぼ確実となる。なぜなら日本のメーカーのように納期やコストを遵守することは、欧米のメーカーでは考えられないからだ。

>フランスとの契約破棄に乗じて、米海軍戦略家たちが期待したように、日本の潜水艦を取得することになってしまえば、中国にとっては思わしくない状況となったはずだ。

>中国にとって再び好ましい方向性をオーストラリアは打ち出した。すなわち、当初の潜水艦戦力増強の理由付けを捨て去って、次期潜水艦をディーゼル・エレクトリック潜水艦からイギリス製あるいはアメリカ製の攻撃原子力潜水艦を取得することになったのだ。

故あって現状詳しいことは書けませんが、オーストラリアが日本製潜水艦をやめたのは能力が低いからです。わざわざ能力が低いものを調達する必要がないということです。

さらにもうせば技術移転にも消極的だったし、そもそもこういう大物を扱う体制が政府、防衛省、外務省、経産省など省庁でできていませんでした。

こういう「世界に冠たる日本の兵器」みないな認識で論を語るとたいてい誤った結論しかでてきません。日本の潜水艦は通常動力潜水艦で世界一?いったいどこで確かめたのでしょう。諜報機関もないのに。こういう自衛隊やメーカーがいう与太を信じるのは極めて危険です。


〈胎動防衛テック〉(下)「ユニコーン」級、米で6社
日本は採算性に課題
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69538410T20C23A3TB2000/


>浜田靖一防衛相は1月下旬、防衛省で「プライム」と呼ばれる防衛関連主要15社の社長らとの意見交換に臨んだ。企業側からは「装備品の調達について今後の発注の見通しを知りたい」「製品が具体的にいつ装備品として活用されるか教えてほしい」などの声があがった。

こういう取り組みが無駄だとはいいませんが、大手の経営者はポジショントークしかいいません。しかも大抵売上は数%程度なので、経営者自身がよく防衛部門の仕事を把握していない。そしてこのような会議で商社は呼ばれません。本来大手総合商社やその子会社の防衛航空専門商社の社長を呼ぶべきですが、それはしません。むしろ大臣は中小や新規参入の企業の経営者の話を聞くべきです。
これで大臣が現状把握なんてできるはずがありません。
商社に関して言えば防衛装備工業会の正会員にもなれません。これがこの国の歪んだ防衛産業の体質を表しています。


>コマツは弾薬に関する事業は継続するが、陸上自衛隊と航空自衛隊向けの軽装甲機動車の量産を停止した。ダイセルは航空自衛隊のパイロットが緊急脱出する装置などの防衛事業から3月末にもほぼ撤退が完了する。
>横河電機は2022年にOKIに航空機用計器事業を譲渡した。相次ぐ事業縮小や撤退を受けて政府は23年度の調達から利益率を最大15%に上乗せする。

コマツは弾薬からも撤退するでしょう。陸自は155ミリ誘導弾、ボルケーノ155を試験採用の後、導入する予定です。
更に迫撃砲もこれに習うでしょう。コマツは誘導弾の開発をやめました。
つまり砲弾事業の縮小は不可避であり、事業規模の維持は不可能です。直にコマツは砲弾からも撤退するでしょう。


これも以前から申し上げているように、殆ど意味がないどろこか、有害です。利益を上げるのであれば零細規模の事業の統廃合が前提です。零細規模の生産で延々と調達を引き伸ばす現在の体制を放置したままでは、単に調達効率を下げて税金をより無駄に使うだけです。
ですが、そういう「面倒くさい」ことが嫌で防衛省は、長年改革をやったフリしてきたのではないでしょうか。今回も防衛費が大きく増えたので「面倒くさい」ことをやらずにばらまきを選んだわけです。それはより税金を浪費するし、また企業の体質も変わらないのでやがては撤退してパンペン草も生えなくなります。

そもそも何をいくつ、いつまでに調達して、予算はいくらという契約をメーカーと結ばないという世界でも珍奇な調達システムの見直しすらできない無能に何ができますか。
DSEIJapanの期間中にあった日本進出を目論んでいるシンガポール企業の偉い人たちから請われて日本のマーケットについてお話する機会があったのですが、この話をしたらたいへん驚いていました。

>海外では防衛スタートアップの存在感が増す。米調査会社のピッチブックと日本経済研究センターによると、22年の世界のベンチャーキャピタル(VC)投資額に占める防衛・軍事関連の投資の割合は金額ベースで4%超と、2010年の1%弱から上昇した。

>「中国は無人航空機の開発は日本よりかなり進んでいる」。ドローンを手掛けるアイ・ロボティクス(東京・渋谷)の斎藤和紀最高財務責任者は危機感をあらわにする。

この20年以上世界の兵器見本市ではドローンの存在が大きくなってきたのに防衛省や自衛隊は見てみぬフリでした。そんなものを導入すれば既存の利益が損なわれるからです。そうして「昭和の軍隊」のままで今まで来たわけです。

そして今に至っても割り当てられた電波周波数帯でも問題ないと言い張っています。業界の人間はもはや諦め顔です。
周波数帯見直しをしなければ、輸入品はわざわざダウングレードして調達せずばならず、国内メーカーもまともな製品をつくれません。そういう視点がこの記事を書いた湯浅太周、根本涼両記者には欠けています。

>これまで防衛予算が抑えられてきたこともあり、防衛産業の競争力は低下が懸念されている。産業の持続可能性や参入障壁などの課題はあるものの、裾野を広げスタートアップへ門戸を開くことは解決策の一つになりそうだ。

君ら防衛省から小遣いでもらったか?と疑われるような話ですよね。
日経は防衛産業の抱える問題点を把握する能力はありません。能力の無いやつは嘘や提灯記事を書くなといいたい。

防衛費が抑制されていても、いや抑制されているからなおさら業界の再編成が必要だったが、それを政府も防衛省もしなかった。
まともな軍事知識無い記者が、政府のヨイショのための提灯記事を書いても国防の強化にも防衛費の有効利用の促進にも役に立ちません。むしろ害毒です。


■本日の市ヶ谷の噂■
先のDSEI Japanで防衛装備庁担当者はブースにやってきた防衛産業に参入したい、「防衛産業参入促進展」に出展したというベンチャー企業を「防衛の実績がない」、シッシッと追い返した、との噂。

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