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定義なき平和国家って何なのさ? 平和国家は夜郎自大の思い上がり


巷では平和国家だから武器輸出をするなら「平和国家」ではなくなる、ハマスと苛烈な戦いをしているイスラエルのエルビット社や他のイスラエル装備を買うと「平和国家」ではなくなる、とか主張する人たちがいます。

ところがその「平和国家」の定義ってなんでしょう。なんかふわふわした情緒的なものではないでしょうか。少なくともぼくはその定義を聞いたことがありません。

戦闘機を共同開発国以外に売ると「平和国家」ではなくなるならば、人道的に問題があると批判されているコソボ空爆をした英国、イタリアと組むことはおかしいでしょう。そしてそもそも他国に武器を売っている「死の商人国家」と共同開発することもおかしいでしょう。

ですがパートナー国は第三国に輸出しなければ儲かりません。またラインを維持し、コストを下げることができません。それを尊重するのであれば我が国が例えばサウジ向けの分の100機を調達すればいい。不要ですからそれを破棄します。数兆円かかるでしょうが、パートナー諸国は生産によって利益をあげ、ラインの維持もでき、メリットは確保できて、「平和国家」の体面も保てます。数兆円なら安いものではないでしょうか。

新戦闘機の潜在的な輸出国であるサウジは独裁国家です。独裁国家に戦闘機を売るのがだめならば、サウジや湾岸諸国から石油や天然ガスを買うのは「平和国家」なのでしょうか。
戦闘機よりも取引額は莫大です。独裁国家の経済を支えるのが「平和国家」でしょうか。
もしこれらの国々からエネルギーを買わないと、供給先は限られて我が国のエネルギーの価格は高騰するでしょう。「平和国家」を目指すならば国民が貧困に喘ごうが、輸入すべきではないですし、国交断絶すべきです。

その延長で言えば国連無視して軍事行動する米国やその同盟国とも貿易はもちろん、国交も断絶しなければならないでしょう。


戦闘機を海外と開発するのが「平和国家」ではない、自国で生産して自国で使えばいいという主張もあります。ですが我が国の能力と技術力を過大に評価しています。自国ではまともな戦闘機は作れません。使いもにならない戦闘機を他国の何倍も高い調達&維持費を掛けて調達することが「平和国家」なのでしょうか。

さて「平和国家」だからガザでの苛烈な戦闘をして、民間人も巻き込んでいるイスラエルの兵器メーカーから輸入するなというのはわかりやすい話なので、賛同する人も多いでしょう。まず一方的にイスラエルが黒で、ハマスが白というハリウッド映画的な構図なのか。確かにイスラエルの現政権が強硬派であり、不要な軋轢をパレスチナともお越してきたのは事実です。
ですが、今回の戦いはハマスの側から始めており、民間人を捕虜にして、その捕虜を虐殺したり強姦したりしています。しかも各国からの援助で作った水道管を外してロケット砲にしているわけです。これは援助に対する裏切り行為だし、インフラを自ら破壊しています。

不思議なことに「平和国家」だから武器を買うなという人たちがこのようなことを指摘して人質に開放や、人質を殺害したりレイプした犯人を国際司法でさばけという話を聞いたことがありません。

自分たちが嫌いな一方は弾劾し、自分たちの支持する方はどんな人道違反をしても黙認、あるいは賛同するのが「平和国家」でしょうか。

イスラエル製の兵器を導入しないこと=平和国家ではないはずです。同盟国の米国はご案内のように国連を無視した軍事行動を行い、敵対する組織のリーダーなどを暗殺するような「札付き」の国家です。であれば米国製兵器も全部ボイコットしないといけないでしょうし、そもそも同盟も破棄しないといけないでしょう。

実際問題としてイスラエルの軍用コンポーネントは世界で多用されており、欧米のメーカーも多々採用しております。それらの兵器はイスラエルと敵対するアラブ諸国にも輸出されていますが、これらの諸国がイスラエル製コンポーネントの排除を欧米メーカーに求めたことは僕の知る限りありません。
特に電子機器やソフトウェアはイスラエル製品は優れています。なにかあった度にイスラエル製製品をボイコットするのでは輸入品は使えなくなります。

また世界の紛争地域に武器を売っている中国やイランとも貿易を中止すべきではないでしょうか。武器の売買だけが制裁ではないでしょう。全ての貿易を禁止すべきです。

また武器の輸出は「平和国家」ではないならば、輸入はいいのでしょうか。「平和国家」の名のもとに今回のイスラエルのような「悪い国」以外の輸入も禁止しろという声は殆ど聞いたことがありません。

ゲスな例えですが売、春は倫理にもとるが、買春はモラル上問題ないと主張するに等しいと思います。

売るのが悪くいならばむしろ世界中の軍隊にジッパーを供給しているYKKのほうが死の商人なんじゃないでしょうか?
また多くの民生品が軍隊や軍事行動で使用されています。トヨタのランクルやキャノンのデジカメ、半導体などその好例でしょう。軍事利用が可能なものはすべて輸出しないようにするのでしょうか。そうであれば

極論を言ってしまえば「平和国家」というのはどこからも武器を輸入せず、輸出もしない国なのでしょう。ですが我が国で完全に内製化するのは無理ですし、先端的な兵器開発を指導する能力は防衛省、自衛隊になく、メーカーの能力も低い。実際にC-2やP-1などは他国の数倍の調達コスト、下手すれば一桁高い維持費を食いつぶしていいます。軍事的な鎖国をすればそのような現状が更に悪くなります。これは単なる税金のムダ遣いです。
無論それでは国防は全う的ないでしょう。

率直に申し上げて、「平和国家」という定義も怪しげで情緒的な言葉を多用することはや止めたいいです。それを愚直に行うならば鎖国しか手がありません。
「平和国家」を自称するのであれば他国に兵器を売りつけている「スウェーデン」や「スイス」といった、リベラルが大好きな国々も「反平和国家」ということになります。自分たちを「平和国家」と自称することは他国を貶めることにもなります。
それは傲慢でもあります。

メディアを含めて安易に都合の良いところをつまみ食いするために「平和国家」という言葉を乱用すべきではありません。「平和国家」という言葉は禁句にすべきです。

月間軍事研究4月号に陸自の18式防弾ベストに関する記事を寄稿しました。


軍事研究 2024年 04 月号 [雑誌]

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
https://japan-indepth.jp/?p=81695

次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1
駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用
https://japan-indepth.jp/?p=81667

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自の装甲車両向けの発煙弾発射器と発煙弾は長年豊和工業が供給してきたが生産が困難となり、KMW製の発射器とラインメタル製の発煙弾がAMVから導入される、との噂。

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