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国産機をベースの電子戦機は自衛隊を確実に弱体化させる。


国産機をベースの電子戦機は自衛隊を確実に弱体化させる。

空自はC-2を、海自はP-1をベースに派生型として電子戦機を既に装備化、また装備化を進めています。空自は電波情報収集型(RC-2)既にRC-2を既に装備化(4機調達予定)、更にスタンド・オフ電子作戦機を4機調達する予定です。
海自も電子戦機の開発をします。これも8機程度は調達されるでしょう。

本来であれば既存の輸送機や哨戒機をベースにこれらの機体を調達することはリーズナブルです。訓練や兵站を既存機と共用できるからです。

ところが自衛隊ではこれが逆に仇として働きます。まずベースとなる国産機が調達コストと維持コストが極めて高額であることです。おそらく民間機体を流用すれば調達・維持コスト、ライフサイクルコストは1/3~1/5で済むでしょう。

自衛隊機のコスパを検証する(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=55801

>C-2のCPFHはC-130Jの4.4倍、C-17の1.8倍にもなる。ペイロード1トン当たりのCPFHは、C-2は10.5万円(26トン)、C-130Jは3万円(20トン)C-17(77トン)は1.96万円である。C-2のペイロード1トン辺りのCPFHはC-130Jの約3.5倍、C-17の5.4倍と、比較にならないほど高い。
>因みに1機あたりのLCC(ライフ・サイクル・コスト)はC-2が 約 635億円、C-130Jが 約 94億円、C-17が 約 349億円である。C-2の1機あたりのLCCはC-130Jの6.8倍、C-17の1.8倍である。これがペイロード1トン当たりのLCCになるとC-2は24.4億円、C-130Jは4.7億円、C-17が4.5億円であり、C-2の1機あたりのLCCは、C-130Jの5.2倍、C-17の5.4倍となり、これまた比較にならないほど高い。


更に問題なのは稼働率の低さです。なまじ国産の専用コンポーネントを使用しているが故に、部品の供給がタイトです。これが民間機であれば有事には航空会社の保有している在庫を流用することも可能です。しかも得てして民間機のコンポーネントの方が信頼性が高いので、高い稼働率を維持できます。

特にP-1の稼働率の低さは目を覆うものがあるそうです。下手をすると3割を切るのではないでしょうか。例えば4機の電子戦機の稼働率が25%であれば、実際に使える機体は1機に過ぎません。当然ならが故障や不具合がなくても定期整備にも出しますから、何十機もある哨戒機や輸送機よりも稼働率の低下はクリティカルです。

実戦で投入できない可能性があります。
国は主要防衛機材の稼働率を明らかにすべきです。
米国は主力戦闘機の稼働率すら会計検査院が公開しています。

GAO says deficient maintenance leaves US F-35s well below mission-capable rate goal
https://www.janes.com/defence-news/news-detail/gao-says-deficient-maintenance-leaves-us-f-35s-well-below-mission-capable-rate-goal

>The Lockheed Martin F-35 is available to perform its scheduled missions 55% of the time, according to a US Government Accountability Office (GAO) report released on 21 September. The agency found fault in the Department of Defense's (DoD's) line and depot maintenance practices.

>The report measured F-35 mission-capable (MC) rates through March 2023. The GAO attributed low MC rates largely to maintenance issues. Citing a DoD analysis, the GAO wrote that having the full array of maintenance capabilities would allow for a 65% MC rate for the US Marine Corps' F-35B and US Navy's F-35C and a 75% MC rate for the US Air Force's F-35A.

現段階ではミッション達成率は55%であり、これは適切な手段を用いればF-35BとCは65%まで、F-35Aは75%まで向上させることが可能であると述べています。

有料記事の部分では更に詳細に報じられています。73%の部品に問題があり、これをメーカーに送り返して改修する必要があるとのことです。

こういう重要な事実を国民や議会に開示して、その問題点と改善方法を指摘しています。対して我が国では「手の内をさらさない」として情報公開を拒み、無敵皇軍あるいは代位本営発表を繰り返しています。恐らく軍拡大好きな自民党の国防部会のセンセイ方はP-1の稼働率がどれほど低いかも知らないでしょう。

GAOのレポートです。
https://www.gao.gov/assets/gao-23-105341.pdf

気楽でいいですね。

対して米空軍はビジネス機のガルフストリーム550をベースに電子戦機EC-37Bを開発しています。550のお値段は70~80億円程度です。


US Air Force takes delivery of first EC-37B electronic warfare aircraft
https://www.janes.com/defence-news/news-detail/us-air-force-takes-delivery-of-first-ec-37b-electronic-warfare-aircraft

BAEとL3ハリス、米空軍へEC-37B「コンパス・コール」の初号機を納入
https://www.tokyo-dar.com/news/13344/


>BAEシステムズとL3ハリス・テクノロジーズは9月12日、アメリカ空軍にEC-37B「コンパス・コール」の初号機を引き渡し、正式な複合開発と運用試験を開始したと発表した。

>EC-37Bは敵の指揮・統制・通信、レーダー、ナビゲーションシステムの通信を妨害し、敵の防空を抑制する空中戦術電子攻撃システムで、現在はC-130Hをベースに開発されたEC-130Hがその任にあたっている。

>EC-37Bはコンパス・コールという愛称をEC-130Hから継承しており、アメリカ空軍は10機の導入を計画。ミッション・システムの開発と製造はBAEシステムズ、ベース機となるガルフストリームのビジネスジェット「G550」へのシステムの統合はL3ハリス・テクノロジーズが、それぞれ主契約社として担当している。


このような民間機の流用の方が、調達・維持コストは遥かに安く抑えられます。何倍も高い、しかも過剰の機体大きいC-2や、稼働率が低いP-1を使用するよりもよほど軍事的な整合性があります。概算予算要求で海幕に質問したのですが、候補として有人機、無人機含めて検討したと言いますが、はじめにP-1ありきだったでしょう。アリバイ工作的にやっただけでしょう。財務省や会計検査院はこういうプロセスをきちんと説明させるべきで、リーズナブルでないならば予算を認めるべきではありません。

また以前から申し上げているように、MRJをこれに当てればMRJが生き残る可能性はかなり上がったはずです。空海電子戦機用で16機、政府専用機で3機程度であれば20機程度の調達になります。その調達期間に平行して米国での耐空証明をとれば、時間も稼げたしメーカーにもお金は相当落ちたはずです。自衛隊用であれば耐空証明はいりません。それに日本政府が買ったことで信用も上がります。

更にE-2DのシステムをMRJに移植すればより高速で、滞空時間の長い早期警戒機を開発することが可能であり、輸出も可能性あるでしょう。
そうであれば更に10機以上の官需が見込まれるでしょう。であれば仮に旅客機として失敗しても、次に繋がることにはなったでしょう。


少なくとも日本の旅客機産業確立の可能性はかなり大きくなったはずです。このようなスキームが政府、与党の国防部会、経産省、防衛書などで作れなかったことに我が国の産業政策と国防政策の無能を感じます。



■本日の市ヶ谷の噂■
川崎重工はC-2の調達価格が跳ね上がっているにも関わらず、製造コストは更に高騰して、本音で投げ出して逃げたいレベル、との噂。

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