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長く使い続けるためには作り手を見るに限る

先日かねてからお付き合いのある小田原の木工所「薗部産業」さんを訪問させて頂きました。
新宿から小田急線で車両に揺られて行くに連れ緑豊かな景色が出てきます。
富水駅までお迎えに来ていただき車窓からは酒匂川が見え、自然豊かな場所で心もなんだか澄んでいくようの気がします。
ちなみに富水は酒匂川や狩川の水を使った用水路や湧清水の水が富んでいる地であったことから「富水」と名付けられたそうです。

薗部産業さんは原木から丸太、丸太を製材から仕上げまで一貫生産出来る希少な生産者さんです。
85[ハチゴウ]で取り扱いさせて頂いている「めいぼく椀」は持つ時に手で包み込みたくなるような丸みを帯びた形で気持ちをいつもほっこりさせてくれます。

器を作成する時の木の取り方や削り出した木屑も近隣の牧場の馬の寝床に使用したり、職人さんの刃物の手入れ鍛治をする際の燃料に使用するなど無駄なく循環する取り組みをされています。

一般的にお椀は、木が生える方向に対して垂直になる断面 「木口(こぐち)」がお椀の天地になるよう、丸太から木を切り出します。
薗部産業さんでは、1本の丸太から多くの材を取るため、 天地の向きを木口と垂直になる「板目」という向きで切り出しています。そのように切り出す事で無駄な部分を少なくしているのですね。
年輪を縦に割るように切り出すことで、多様な木目があらわれます。
ただし、板目の方が乾燥や加工が難しく、年輪を縦に割ることで、部位によって乾燥具合が違って縮んでしまったり、 加工する刃物の刃が滑らかに当たらなかったりするそうです。
その分板目でお椀をつくることは敬遠されていて、 世間一般ではつくられていませんでした。
ただし板目の場合は、木口より細い原木が使えるメリットがあり他の産地にはない独自の方法で今でも生産されています。

木工をしていく上で産業廃棄物を0にしていく素晴らしい取り組みなどに共感した後、早速作業場の見学に。

一本の丸太から無駄なく切り出されている
しっかりと乾燥させるために積み重ねられた姿が幻想的

材料を製品のお椀の形に製材して荒木に、さらに製品の形に荒加工したあと乾燥の工程に入るそう。そうすると材料の芯までしっかりと乾いてくれるそうです。芯の部分が一番割れやすく、お椀で半年位の時間をかけて乾燥させています。そうするとお椀自体が変形しにくくなるのです。
画像で見るよりかなり圧巻されました。

リズミカルにどんどんお椀の形に削られる

作業場では職人さんがテンポ良く巧みにノミを使って削り出し、またノミを研いでまた削るの繰り返し。
作家さんなどと違い職人さんは1日に何個正確に作れるかが勝負となるので眼差しも真剣そのもの。
親方ともなるとひとつ削り上がるまで1〜2分との事!
親方の周りの壁にはズラッとかかったノミが!これは親方が自分の腕に合うノミを自分で鍛冶をして作った物。長年続けてきた証でもあり、研磨して鍛冶をして長く使い続ける物を作り上げる、道具も商品も大事にしている姿があらゆる所で見られました。
一朝一夕には出来ない事で、見ていくうちにその歴史に思いを馳せていました。

木材から一つのお椀が作り出されるまでに様々な工程を経て時間をかけて作られた物。
一点一点木目や表情も違い、ここら辺は若い皮だったのかな?ここから新芽が出てきたのかななど想いを馳せてみるのもいいかもしれません。
その中からお気に入りを探し出し、日々の食事が「愉しい食卓をもっと愉しく」なれば嬉しく思います。

薗部産業さんが言われている
「無理なく 無駄なく 土に還るまで」
その気持ちが伝わってくる現場でした。

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