私のザポロジェ原発論 ザポロジェ原発の安全確保が緊急課題になっており、IAEAが常駐し、調査・評価しているものの、予断が許されない状況にあり、私は、1994年、テレビ朝日「サンデープロジェクト」取材班のひとりとして、カリーニン原発の調査を実施したことがあり、原子炉は、当時、最新鋭の旧ソ連製加圧水型原子炉(VVER-1000、100万kW)であり、そのVVER-1000が六基も設置されたのが、世界でも六位の発電規模を有するザポロジェ原発であり、危険性を評価

はじめに

世界では、ウクライナ戦争において、ザポロジェ原発の安全確保が緊急課題のひとつになっており、第三者機関のIAEAが、常駐し、調査・評価しているものの、通常の安全確保の考え方からすれば、大きく逸脱しており、予断が許されない状況にあります。

ザポロジェ原発とは何

私は、1994年、テレビ朝日「サンデープロジェクト」取材班のひとりとして、モスクワから北西に数百kmの位置(もはやレニングラード郊外)にあるカリーニン原発の調査を実施したことがありますが(拙著『ロシアの核が危ない ! 』、TBSブリタニカ(1995))、原子炉は、当時、最新鋭の旧ソ連製加圧水型原子炉(VVER-1000、100万kW)であり、そのVVER-1000が六基も設置されたのが、世界でも六位の発電規模を有するウクライナのザポロジェ原発(1970年代半ばから80年代半ばに建設、80年代半ばから90年代半ばにかけ運転開始)であり、つぎのようないくつかの特徴、すなわち、
・最新鋭のプレストレスコンクリート型原子炉格納容器を備えています、
・カリーニンと異なり、原子炉建屋の周囲を厚いコンクリートで覆っています、
・カリーニンと異なり、世界でも例がなく、原子炉建屋とタービン建屋が一体化されています、
を有しております。
原子炉建屋とそれを囲むコンクリート構造物が、厚く、頑丈であるため、砲弾で攻撃しても効果がありません。
私のような原発安全解析の経験のある立場からすれば(1984-88年、通産省管轄の原子力安全解析所に在籍、通産省一次安全審査のためのクロスチェツク安全解析担当、原子炉核熱流動安全解析、大飯3 & 4、浜岡4、女川2)、世の中では、禁句ですが、運転中の原発を停止させるには、
・送電線を破壊するること(受電ができず、送電もできず、原子炉スクラム)、
・河川からの冷却水取水口を破壊すること(タービン復水器流量減で、原子炉スクラム)、
です。
禁句ですが、さらに、苛酷炉心損傷事故を起こし、環境や住民に致命的な影響を及ぼすには、継続的に、送電線破壊のまま、原子炉システムと非常ディーゼル発電機に、冷却水を供給できない状態を継続することで、私ならば、戦車一台で、30分以内で、送電線破壊、順次、1号機から6号機までの取水口を破壊できます。
ロシア軍は、ザポロジェ原発に対し、送電線破壊やサイト各施設へ砲弾攻撃していますが、これまでの攻撃内容からすれば、嫌がらせや脅しのレベルであり、本気になって破壊工作を実施しているわけではなく、国際世論やIAEAやウクライナの顔色をうかがいながら、脅迫の程度を調整しているだけです。

結びに代えて

原子炉では、崩壊熱を除去する手段が失われれば、2-3時間後に、炉心溶融、5-7時間後に、メルトスルーに陥り、福島事故と同様なことが発生します。状況は、極めて厳しく、ウクライナとザポロジェ原発に神の御加護を ! 。

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