知らないおじさんに友達にならないか誘われた話(追記:宗教勧誘だったみたいです)

結論から言うと、ならなかったんですけどね。
そして、宗教勧誘だったみたいです。

同人イベントに一般参加した僕

手元の記録によると、2019年秋の博麗神社例大祭のことでした。博麗神社例大祭というのは、『東方Project』の同人イベントの一つです。同人イベントというのは、「あぁ、コミケのこと?」と思ってもらえればいいです。正確には違いますが、興味のない人にとっては、オタクが本売ってオタクが本買う場であることには変わりありません。
僕は一般参加者、つまり買う側のオタクです。初めて行ったイベントは『紅のひろば4』なので、10年くらい行き続けていました(コロナ禍以降は参加を控えています)。イベント前日は会場マップでルートを複数設定しておき(※1)、始発組で単騎参加し、イベント開始1時間程度で買い物リストはすべて片付ける、効率の鬼でした(※2)。開場前の待機列で近くの集団がワイワイと「俺こことここ回る〜」「バカ、壁(※3)だらけじゃねえか、何個も回れねえよ」「買い逃したらどうしよう〜」と話しているのを耳にして「青いな」と思う程度にはこなれていたと思います。
2019年秋の博麗神社例大祭でも同じように、必要な買い物は速攻で片付け、会場外のテーブルがあるベンチで一休みしていました。「楽勝…だな」とか思いながら。テーブルの上には戦利品を置き、朝のうちに買っておいた軽食を食べていました。午後からは島中(※4)を探索する予定でした。

おじさん登場 

するとそこに、知らないおじさんが現れ、おずおずとおじぎをしながら僕の正面に座ったのです。周りを見回しても、空いている席だらけです。僕が忘れてるだけでどっかで会った?さっき買い物したサークルさんの誰か?ぐるぐる考えていましたが、おじさんが「はじめまして」と言ったので、なんだはじめましてか、と思いました。中肉中背で、眼鏡をかけた、特に普通のおじさんでした。
言っておきますが、僕もおじさんです。アラフォーのおじさんが同人イベントの戦利品抱えて飯食ってたら、アラフォーのおじさんが現れて挨拶したという構図です。なんだこりゃと思いましたが、とりあえずご飯食わないと午後耐えられないので食い続けました。

「東方のイベント行ってきたんですか?」
『はい、そうですよ』
「自分もちょっと興味あって…ニコニコ(※5)とかで知って、ちょっと来てみたんですけど…」
『なるほど』
初対面のおじさんの前でご飯食うのやだなぁ、とはいえ戦利品とご飯を抱えてそそくさ移動するのもなぁ、他にベンチあるかパッと思い出せないし。
「本とか、結構売ってました?」
『そりゃもう。同人イベントとしてはコミケに次ぐんじゃないですか』
「はぁー。すごいんですねぇ…どんな本が流行ってるんですか?」
『いや…流行りとかは…。みなさん個人なので、売る方も買う方もバラバラだと思いますよ』
「あ、なるほど…。なんか有名な人とかいますか?」
う、うーん…。
『自分が好きなのだと、「ゾウノセ」さんとか。「薬味さらい」ってサークルで』
「知らないですね…」
壁常連で、相当有名な部類だと思うけど。
『「火鳥」さんとか「ヨハネ」さんとか』
「すみません、知らないです…」
だから、売る方も買う方も個人なんだから、知る訳ないでしょって。
「あ、自分はニコニコからなので、東方アレンジとか興味あって」
『あ、はい』
「なんか、いっぱいあって、どれ買っていいかわからないんですよね…」
『まぁ、作る方も買う方も個人なので…もう完全に趣味ですよね。良いと思ったら買ってみる感じだと思います』
「なんか、おすすめとかありますか?」
えぇ〜、この流れもう一回やるの?おにぎりを飲み込みながら思いました。
『そうですね…僕は「イオシス」が好きです』
「うーん、知らないですね…」
ほらぁ。
逆に何なら知ってるんだろう。何かの勧誘なのかな。だとしたら、手ぶら過ぎるし、全然本題に入ってこない。周りを見ても、こっちを窺っている人間はいなさそう。
『ちょうど会場にいるわけですから、行ってみるといいですよ。音楽サークルは試聴させてくれますよ』
「いや…入るにも入場料とかかかっちゃうと思うから…」
えぇ。ここまで交通費かけて来たんじゃないのか?
『さっきカタログ(※6)売り切れてたから、入場無料になってると思いますよ』
「あ、そうですか…」
僕はおにぎりを食べ続けていました。
もぐもぐ…。
おじさんは何か考え込んでいました。
いや、行きなさいよ。試聴して好きなの買って来なさいよ。

本題に入るおじさん

さて、そろそろ、島中行って掘り出し物を見つけてこようかなと、席を立ちました。
『じゃあ、僕はそろそろ』
おじさんはスマホを取り出して、僕を呼び止めました。
「よかったら、友達になりませんか。いろいろ教えてほしくて」
嫌っ…!
それ、打ち解けた上で、ここでお別れするには惜しいと思ったときに出るセリフじゃないでしょうか。ここまでで一度でも会話弾みました?そもそもの話、
『僕、一人が好きなんで…』
「あ、はい…」
僕は戦利品とゴミを抱え、そっと立ち去りました。しばらく歩き、振り返ってみると、一人残されたおじさんはスマホを見るでもなく、ぼーっと座っていました。何かの勧誘なら、はい次つってどっか行くと思いますし、本当にただ友達が欲しいだけのおじさんだったのでしょうか。

怪しすぎるだろう

まず、相互にコミュニケーションできるSNSじゃないと、友達はできないと思います。ニコニコ動画見てるだけじゃキツイんじゃないかなぁ。何のコンテンツもないのであれば、Twitterを始めて、毎日欠かさず3食の食事をアップし続けるところから始めればいいんじゃないでしょうか。「ここに来れば他人の飯が見られる」という価値が生まれます。

あと、学校や会社、もしくは何らかの場に属していれば単純接触の機会が多いので自然と友達になるかもしれませんが、そうでない出会いの場合、得られるものがない人とは友達にならないと思います。だからといって初対面の人に「俺はこれができるんだぜ!」「俺はこれを持っているから友達になると得するぜ!」っていきなりアピールするのも異常だと思いますし、共通の話題で盛り上がれるというのは必要最低限だと思います。「知ってます、自分も好きです」がベストですが、せめて「どんなところが良いと思いますか?自分も読んで(聴いて)みます」と言うべきかもしれません。「あ、それ知らないです」は禁句というか、コミュニケーションする気あるのかこの人、って思います。思いました。

まぁ、最高に上手くやったところで、僕は同人イベントで友達を作る気は無いので、断っていましたけれども。あのときのおじさんは友達を作れたのでしょうか。元気にしているといいですね。

追記

この記事を公開した後日「それ、ぼっちオタクを狙った宗教勧誘だよ」って教わりました。長々と書いた「SNSで友達を作るには」みたいな上の文章も、まるっきり的外れだったということになります。ぼっちオタクより会話が下手な人を派遣してどうしようっていうんでしょうか。せめて会話上手か、見た目がかわいい女性とかじゃないと、絶対引っかからないんじゃないですか?

会話に付き合ってしまうと、仲間が寄ってきて1対多でやり込められるというツイートもありました。僕に話しかけてきたおじさんは1人だったので、おじさんもぼっちの勧誘員だったのか、本当にぼっちだったのか、もう知る術はありません。

※1 当日は混雑のため、安全確保に一方通行が設けられたりする。想定ルートがひとつだと、不測の事態に対応が難しい。
※2 というか、希少本は開始1時間で売り切れることもある。
※3 会場の壁に沿って配置されているサークル(≒売り場)。人気サークルであり、本を求めるオタクの待機列が長くなるため、通路を塞がないよう壁に寄せられている。最初から会場外に待機列が作れるように、シャッターから外に向かって配置されている「シャッターサークル」もある。
※4 「壁」や「シャッター」と同じで配置に関する用語。オフィスでも机の並びを「島」と呼ぶがそれと同じで、同人イベントにおいては壁やシャッター以外、くらいの意味合い。まだ見ぬ良作が眠っている可能性がある。
※5 ニコニコ動画のこと。視聴者が任意のタイミングで、動画にテロップ形式でコメントを流せるのがユニークな動画配信サービス。
※6 イベント参加の諸注意や、参加サークルをまとめた冊子。多くの同人イベントで入場券を兼ねる。

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