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地方財政あるある#10.財政課と会計課、ごっちゃにされがち(決算)

-先輩。広報に決算のこと載ってましたね。

なんや、藪からスティックに。

-・・・デジャヴ?

デジャヴやな。

◆決算は会計課の仕事

それはさておき、前に決算は会計課の仕事という話をしてたから、ちょうどええタイミングやし聞いとこうってことやんな、たぶん。

-そうです。前に、6月の財政課は「決算統計」で忙しいみたいなことをおっしゃっていたと思うんで、気になってたんです。

せやな。まず、決算は会計課の仕事っていうところやねんけど、地方自治法にこんな規定があんねんな。

第百七十条 法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、会計管理者は、当該普通地方公共団体の会計事務をつかさどる。
② 前項の会計事務を例示すると、おおむね次のとおりである。
七 決算を調製し、これを普通地方公共団体の長に提出すること。
(決算)
第二百三十三条 会計管理者は、毎会計年度、政令で定めるところにより、決算を調製し、出納の閉鎖後三箇月以内に、証書類その他政令で定める書類と併せて、普通地方公共団体の長に提出しなければならない。

で、232条は7項まであるんやけど、長ったらしくなるし、表にまとめてみたのがコレ。

決算の流れ

◆財政課は「決算統計」と「健全化判断比率」を報告

じゃあ、財政課は何してるかっちゅう話やけど、繰り返しになって恐縮やけど「決算統計」「健全化判断比率」を国に報告すんねんな。図の流れには出てきてないけど、これがなかなか難儀な作業やねんな。

-決算って、値を集計するだけじゃないんですか?

煎じ詰めればそうなんやけど、そんな単純でもないねん。まず、そもそも「決算統計」って何やという話。国(総務省)が地方財政の状況を把握するために、毎年度「地方財政状況調査」っていうのをやってて、その通称を決算統計って言うねん。略して“決統”(けっとう)、誰か闘いそうな勢いやけど。

-・・・。

キミ、それは決闘(けっとう)や。

-・・・。

ちなみに、決算統計の話をしようとすると少し長くなるけど、かまへん? 

-全然大丈夫です!

了解。ほな話進めるな。ちょっとマニアックな話になるけど、財政課の知られざる世界って感じで聞いてらえればええし。決算統計っていうのは、いろんな角度、いろんな視点から分析できるように、けっこう細かく報告を求められんねんな。

決算統計1

決算統計2

で、その表を作るにあたって、欠かせない作業があんねん。ざっくり言うと3つあって、①目的と性質の割り振り②経常と臨時の切り分け③特定財源充当の整理。これがけっこうめんどくさい。ま、何それ?って感じやんな。

-はい。

◆決算統計①:目的と性質の割り振り

じゃ、1つずつ。まず「①目的と性質の割り振り」やねんけど、この意味はけっこう単純。歳出予算の円グラフが2種類あったけど、何やったっけ?

-目的別と性質別。

そう。よく覚えてるやん。

-今、「目的と性質の割り振り」って仰ってましたから。

せやな。で、当然、決算も歳出の円グラフに目的別と性質別があってな。広報にも載ってたけど。

宇治決算R1

で、これを作ろうと思ったら、使ったお金の一つひとつに目的と性質を定義づけしていかなあかん。これは民生費、これは土木費、、、みたいに。まぁ、前に言った予算科目「款・項・目・節」の最小単位(ウチで言ったら細節やな)、それごとに事前に定義されているから、基本的には難しいことはないんやけど、厄介なことがあってな。

-厄介なこと。

そう、でもそれは後で言うわ。

◆決算統計②:経常と臨時の切り分け

ほんで、「②経常と臨時の切り分け」やねんけど、これは特に経常収支比率を算出するために必須の作業やねん。

-経常収支比率・・・。

前に「自由に使えるお金が多いか少ないか、小難しく言うと財政が硬直しているかどうか、その代表的な指標に経常収支比率というのがある」という話をしたんやけど、そのことな。

-思い出しました。

思い出した? ざっくり言うと、経常的な収入に占める経常的な支出の金額の割合のことやな。イメージ湧かへんと思うけど、家計で言うたら家賃、水道光熱費、食費とか、そういう固定経費の割合と思ってもらたらええかな。経常的というのは臨時分を除くっちゅうことで、たとえば家電を買い替えて臨時的に出費が嵩んだとか、幸運なことに宝くじが当たって臨時の収入があったとか、そういう臨時的な要素は除いて計算することで「いつもの状況」を把握しようということやねん。というわけで、この率を出すために収入も支出も、経常と臨時を分ける必要があんねんな。

◆決算統計③:特定財源の充当の整理

で、最後「③特定財源充当の整理」。特定財源って、覚えてる?

-使い方が決められている財源のことでしたよね。

正解!歳入の円グラフのところで一財と特財の話したやんな。

で、たとえば一口に国庫支出金、まあ国からもらえる補助金やな、それが123億円ほどあるけど、そのそれぞれの補助金はどの事業に使ったかを紐づけて整理せなあかんねんな。たとえばで補助金を例にしてるけど、全ての特財について、この事業に使った、あの事業に使った、、、って整理する必要があんねん。そうやってようやく国庫支出金は100億円は民生費に使って、15億円を教育費に使って、6億円を土木費に使った、みたいな集計ができるようになんねんな。

ほんで、「○○の事業に使った」ということを「充当する」って言うんやけど、たとえば5億円の事業に複数の補助金を充当したら6億円充当することになったらあかんので、そこを気を付けながら充当を整理していくねんな。

-めんどくさそうですね。

めんどくさいねん。特に福祉部門の充当整理はめちゃくちゃ大変。

それでや、さっき飛ばした厄介なことの話やねんけどな。

◆「分割」がめんどくさい

何が厄介かと言うと「分割」ってことをやらんとあかんくて、それが超めんどくさいねん。

-分割、ですか?

そう。同一の節さっき、「款・項・目・節」の最小単位ごとに目的とか性質が定義されてるって言ったけど、その最小単位に複数の性質が混在してたり、経常と臨時が混在してたり、そんな感じで最小単位(ウチで言うたら細節単位やな)をより細分化して整理する必要があって、その量がけっこうな数であんねん。

-・・・。

イメージ湧かへんよな。たとえば、10節に需用費っていう節があるやろ? その中に修繕料っていうのがあると思うねん。でも、一言で修繕っていっても、①ドアノブが壊れて1万円で直したみたいな小修繕、②電気系統の設備の不具合を10万円で直したメンテナンスレベルのもの、③150万円かけて電気設備を取り換えて機能向上をはかったものとか、いろいろあるわけよ。で、この場合、歳出の性質別分類上、①は物件費、②は維持補修費、③は普通建設事業費に分けて集計しないとあかんし、そこで「分割」という作業が発生すんねん。

-なるほど~。

そういう準備ができた上で初めて集計ができる。なかなか自動化できない部分も多くて、けっこう手間やねんな。

-たしかにめんどくさそうです。

せやねん。そや、実はあともう1つ集計前の作業があって、「純計」っていうねんけど。原課的にはマニアックな話になんねんけど、一応説明しとくわ。決算統計の対象って「普通会計」って言うて、よく円グラフで見る一般会計よりちょっと範囲が広いねん。で。他の会計との繰入金、繰出金とかがあったら差し引かなあかんねん。

-・・・?

分からんわなぁ。例えば、一般会計600億円、普通会計に含めるべき他の会計(とりあえずA会計と呼ぶ)が50億円やっても、普通会計は650億円ということにはならへんねん。一般会計からA会計に5億円の繰出金があったら、645億円になんねん。一般会計の歳出に5億円計上されていて、A会計の歳入にも5億円計上されているから、単純に足し算すると二重計上、ダブルカウントになってまうからやね。突然やけど、簿記とか知ってる?

-勉強したこと無いです。

そうかぁ。簿記とかやってたら本支店会計の本支店間取引みたいなもん、って言えばイメージつくんやけどな。まぁええわ、ここは今は細かい話やし。

それでや、なんやかんやして、集計して、ようやく膨大なページの決算統計が完成すんねん。まあだいたいこれで6月の1か月はつぶれる感じ。

決算統計の話はここまでなんやけど、ついでに言うとくと、決算統計と並行して、健全化判断比率の算出もやらなあかんねん。めんどくさいけど、けっこう重要な財政指標やねんな。これもだいたい7月中旬ぐらいまでかけてやるかな。

で、だいたいどの自治体も、決算統計やら健全化判断比率やらではじき出した数値を「決算カード」にまとめ公表してるはず。国に報告してるし、総務省のホームページにも載せてくれるけど、ちょっと時期が遅いんよな。

というわけで、決算は実は会計課の仕事やけど、財政課では決算を受けて報告物の作成とか、財政指標の計算とかでバタバタするということ、分かってくれた?

-いやぁ、分かったような分かってないような。。。

まあ、今日の話は原課職員からすれば縁遠い話やし、ええんとちゃうかな。少なくとも「財政課=査定する部署」というイメージからはちょっと想像できない部分があるということだけでも感じ取ってもらえればOKかな。

-ありがとうございます。多分また、教えてもらうことになると思いますけど。

全然ええよ。

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