「普通」

大きめの柑橘を見ると思い出す。
夫の実家で夕食をご馳走になった後、義母が大きめの柑橘を出してくれた。はっさくだったか甘夏だったか文旦だったかは定かでない。
その柑橘は外の皮は勿論のこと、一房ずつ薄皮が綺麗にむかれて、円形に並べられていた。
実がつやつやと光り輝いて、すごく美味しそう!
衝撃だった。
私の実家では大きめの柑橘をザクっと外皮ごと四分の一にカットし、あとは各自でむいて食べてね、というスタイルが「普通」だったから。
帰り道、夫に「お義母さんはいつもああやって、薄皮をむいてくれるの?すごいねー!」と聞くと、「え?お袋は自分がやりたいから、そうしてるだけでしょ」と夫。
彼にとっては「普通」のことだった。
もうちょっと、感謝しなさいよ、お母さんに!と思った。

その後、我が家では、時には四分の一カット、時には全部むいて、状況次第だった。まあ、全部むいて出せると自分も満足感に浸れるのだが、やはり心に余裕がないと出来ないな、と思う。

「自分がやりたいから、そうしてる」という夫の何気ない一言が、真理だな、と実感するのは結婚してもっとずっと後のことだった。
なぜなら「⚪︎⚪︎しなければいけないから、そうしてる」が私の「普通」だったから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?