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ありがとう。ごめんなさい。

わたしは、あなたの理想の妻にはなれなかった。わたしは、15年もの間、派遣やアルバイトを掛け持ちしながら、誰からの援助も受けず、一人暮らしをして、1人と1匹で暮らしてきた。
そして、少しずつ貯金をして、好きな物を買う喜び。そんな小さな幸せがあることも知っている。
あなたには、充分過ぎるほどの贅沢をさせてもらった。グァムや、シンガポールにも連れて行ってもらった。旅行にもたくさん行ったね。とても感謝している。
でも、わたしは、いつでも、どんなときでも、あなたの機嫌を損ねないか。とても、ビクビクしていた。
最初の半年くらいは、優しかった。
でも、急に、キレてきた。どうなっているのかわからず、混乱した。
それからは、1ヶ月に1度くらい、キレるようになった。その原因が、わたしではなく、他にあったとしても…。その矛先は、わたしに向かった。
いくら、なだめても…。

年月を重ねる程、ひどくなる一方だった。
ついに、わたしは、あなたに殺意を抱いた。そして、フルーツナイフを隠し持った。でも、あなたを刺すことをできず、自分の腕を刺してしまった。ナイフを抜いた瞬間、たくさんの血が溢れ出た。
もう、あなたとは一緒に暮らせない。そう思った。あなたとの楽しかった想い出を心の中に詰めこんで、わたしは、あなたから去ってゆく。
素敵な、楽しい想い出をありがとう。
そして、あなたの理想の妻になれなくて、ごめんなさい。

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