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【書評・感想】化学の授業をはじめます。【女性差別に徹底的に抗う化学者の物語】


著者

ボニー・ガルマス(著)、鈴木 美朋(翻訳)

発売日

文藝春秋 / 2024年01月16日

書評

1960年代の米国を舞台に、女性化学者エリザベス・ゾットの奮闘を描いた物語です。ガルマスのデビュー作にして、世界で500万部を超える大ヒットとなり、Apple TV+でもドラマ化されています。

主人公エリザベス・ゾット

エリザベス・ゾットは才能ある化学者でありながら、当時の男性優位社会の中で数々の困難に直面します。1960年代の米国は女性の社会進出が制限されていた時代であり、特に科学界は男性中心の環境でした。エリザベスは、そのような社会的制約の中で自分の才能を発揮しようと奮闘します。

職場である研究所では、無能な上司や同僚からの嫌がらせやセクハラ(というか性的暴行)もありました。エリザベスは何度も研究所を追われ、シングルマザーとして娘を育てながら、研究者としての道を模索していきます。

料理番組 「午後六時に夕食を」

エリザベスはひょんなことからテレビの料理番組「午後六時に夕食を」のホストを務めることになります。テレビ局の意向は旧来的な女性を前面に押し出すものでしたがエリザベスは断固として従わず、「料理は化学です」という信念のもと、まるで講義のような料理番組を作り上げます。主婦や料理家ではなく化学者であるというプライドを感じさせます。

女性の権利と平等

1960年代という時代背景を反映しつつ、現代にも通じる女性の権利と平等のテーマを巧みに織り込んでいます。女性が家庭に留まることを求められる時代にあって、自身のキャリアを貫き通そうとします。彼女の姿勢は当時の保守的な社会規範に対する挑戦であり、現代の読者にとっても重要なメッセージになっています。

まとめ

『化学の授業をはじめます。』は、エリザベス・ゾットという強い意志を持つ女性化学者の奮闘を描いた物語です。化学と料理を融合させた斬新なアプローチ、女性の権利と平等に対する力強いメッセージ、そして人間関係の深い描写が本書の特徴です。現代にも通じる重要なテーマであり、心に残る一冊となりました。

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