見出し画像

兵法書『兵法雄鑑』に見る物見の「見せ旗(偽り旗)」の用法と目的

兵法書『兵法雄鑑』によると「見せ旗」は敵地奥深くへ物見に出かけるとき、万が一発見されて追われた場合の対策として設置する欺瞞工作用の旗と書かれています。

物見を発見した敵守備兵は、少人数の物見に対して有利と思い追撃に出ます。物見は分が悪いと逃げ、見せ旗を立てたエリアに逃げ込みます。敵守備兵は見せ旗を見て伏兵(釣り野伏)が潜んでいるかもしれないと警戒して追撃を止めます。この隙に物見は自陣へ逃げ帰ることができます。

『万川集海』物見編「伏蟠ふせかまりの有無を見分け五箇条」には伏蟠り(伏兵)を知る方法として欺瞞の偽り旗(見せ旗)や煙を見分ける方法が出てきますが、その目的は敵の物見を追撃し討ち取る防諜任務の側面もあったると言えます。

〈見せ旗の目的〉
⑴敵の動きを封じる
大軍が進行する道筋に見せ旗を仕掛け、敵の進軍を一時的に遅らせる。

⑵敵の追撃を阻止する
敵は見せ旗を見て伏兵が潜んでいると警戒し、追撃を躊躇する。その隙に物見は自陣へ逃げ帰る。

〈見せ旗の用途〉
⑴軍隊の逃走経路の確保
軍隊が戦闘を中断して引き上げるとき、見せ旗を仕掛けて敵軍の追撃を遅らせ、安全に帰還する。

⑵偵察活動の安全確保
物見が敵地に深く入り込む際に、もしもの追撃を避けるために使用する。保険的な使用法。

⑶敵軍進行を一時的に遅らせる
敵の侵攻を察知したとき、軍が進行する道筋に見せ旗を仕掛けておくことで、進軍を一時的に阻止する。敵軍に接触するまでの時間を伸ばし、迎え討つ準備を行う。

『兵法雄鑑』 見せ旗の事

『兵法雄鑑』〈原文〉
旌旗せいきの事 一、見せ旗の事
見せ旗というは、たとえば物見などに出るに、をくり足軽、迎備もなくして、深く働き入る事など叶がたき時は、指物を抜き山影木立の中に立て置き、同勢と敵に見せて進み行くを、見せ旗というなり。切火縄・みせ備などというがごとし。

『兵法雄鑑』〈現代語訳〉
旌旗の事 一、見せ旗の事
見せ旗というのは、例えば物見などに出るとき、繰り足軽(威力偵察・援護用の足軽)・迎備(後衛、伏兵)が無く敵地奥深く入るのが難しいときに旗指物を抜いて山影や森林の中に立て、仲間が潜んでいると敵に見せかけるものである。切火縄(火縄を置く)・見せ備などともいう。

『北条流兵法 日本兵法全集3』人物往来社(現代語訳は筆者による)

🥷忍者の思考と精神を身につけるべく、日々修行を行ってますので見届けてもらえると幸いです。あとお仕事のご依頼もお待ちしております🙇‍♂️。サポートは兵糧(ひょうろう)に使わせていただきます。 WEB:https://shinobi-design-project.com/home