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デジタルのコンテンツは世界観

「日本のカッコイイを集めたお土産屋さん」をコンセプトに、日本製品を集めた店が東京・自由が丘にあります。店名は「カタカナ」。ライフスタイル提案型の雑貨店の聖地、自由が丘にあってひときわ精彩を放ちます。

日本のカッコイイを探して

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「日本の伝統文化と外国から取り入れた文化、それらの融合の中から生まれる多様性に、今の日本の良さがあります。そんな想いを込めて、店名をカタカナとしました」
こう語るのは店主の河野純一さん。日本全国各地を巡り、日本の良いもの、つまり“カッコイイ”を探していらっしゃいます。

一昨日、久しぶりに店を訪れ、お会いしたのですが、小さな店はより深みを増したように感じました。似たような店との違い、それは店主の“哲学”にあると私は思います。

河野さんと話すとき私はいつも、民藝の提唱者、柳宗悦さんと彼の著作『手仕事の日本』の序文の一節を思い出します。長くなりますが引用します。

手仕事は心の仕事

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元来わが国を「手の国」と呼んでもよいくらいだと思います。国民の手の器用さは誰も気づくところであります。
手という文字をどんなにたくさん用いているかを見てもよくわかります。「上手」とか「下手」とかいう言葉は、直ちに手の技を語ります。「手堅い」とか「手並みがよい」とか、「手柄を立てる」とか、「手本にする」とか、みな手に因んだ言い方であります。「手腕」があるといえば力量のある意味であります。それゆえ「腕利き」とか「腕前」などという言葉も現れてきます。
それに日本語では、「読み手」「書き手」「聞き手」「騎り手」などのごとく、ほとんどすべての動詞に「手」の文字を添えて、人の働きを示しますから、手に因む文字は大変な数に上ります。
そもそも手が機械と異なる点は、それがいつも直接に心と繋がれていることであります。機械には心がありません。これが手仕事に不思議な働きを起こさせる所以だと思います。
手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであります。
そうしてこれこそが品物に美しい性質を与える原因であると思われます。それゆえ手仕事は一面に心の仕事だともうしてもよいでありましょう。手より神秘な機械があるでしょうか。

世界観を見せる仕事

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こうした柳の目指した世界を、肩肘張らずに今日風に構成、「店」という己の世界観を伝える場に表現しているのが河野さんの仕事です。店とはかつて「見世」と書きました。つまり、己の「世」界観を「見」せる場だったのです。

かつて河野さんは某大手専門店チェーンで活躍するビジネスマンでした。そこでは己を多くの場合において殺さなくてはなりません。しかし、もはや商いは己を表現してこそ社会に存在を許されます。

人口増加を背景にした大量生産・大量流通・大量消費時代のマーケティングは、4つ「P」をいかに効率よく実現するかが重要でした。4つの「P」とは次のとおりです。

人口増加社会の【4P理論】

product(商品・サービス)
price(価格)
place(流通・立地)
promotion(広告宣伝)

しかし、人口減少社会を迎えた今日、これまでの4P理論は通用しません。もはや大量生産の帰結である大量廃棄を地球は許さず、これまでの成功体験にすがる企業・店は市場からの退却を余儀なくされます。

では、どう変わるのでしょうか?   地域に根づき、市民と共に歩む商いにおいて何が大切なのでしょうか?   私見ですが、私たちは新たな4つの「P」に向き合わなければなりません。

成熟化社会の【4P理論】

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product(商品・サービス)→ in-house product(自社製品)
price(価格) → promise(契り)
place(流通・立地) → philosophy(哲学) 
promotion(広告宣伝) → personality(個性・人柄)

そう、product(商品・サービス)以外の「P」は、price(価格)がpromise(契り)へ、place(流通・立地)がphilosophy(哲学) へ、promotion(広告宣伝)がpersonality(個性・人柄)へと変化します。

私たちは商品・サービスを通じてお客様に豊かさを提供する存在ですから、product(商品・サービス)はそのままです。しかし、その質はよりオリジナリティを持ったものが求められるでしょう。 

他の3つの「P」は大きく変わります。お客様は信頼できる「個性・人柄」と「契り」を結びたいのです。そうした個性・人柄に対する信頼の根本には、おのれの商いに対する「哲学」が必要です。

店頭ではいつも笑顔の河野さん。その笑顔の中には揺るがぬ哲学があります。時代の変化とアジャストしつつ、芯の揺るがぬ商いをこれからも見せてください。

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