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ベーグルには笑顔が似合う

ベーグルとの出会いは四半世紀以上前、初めて訪れたニューヨークでのことでした。たしかスモークサーモンとスライスオニオンがサンドされたものでしたが、スーパーマーケットのイートインコーナーで、そのおいしさに夢中になってほおばったことを覚えています。

そのときの感激を思い出すようなベーグルに、四半世紀ぶりに出会いました。川崎市多摩区、小田急線向ヶ丘遊園駅ほど近くにある小さな店「ベーグルカンパニー」は旬と笑顔のあふれる店です。

空飛ぶ女の夢

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店主の茶野佐知子さんは、日本を代表する航空会社で活躍した元キャビンアテンダント。「フライト先のニューヨークで食べたベーグルのおいしさが創業のきっかけの一つ」という彼女は、幼い頃からお菓子づくりが好きな少女でした。

仕事は充実していましたが、大企業のワンピースとしてではなく、たとえ小さな存在でももっと主体的に、関わる人たちを笑顔にしたいと起業を決意。退職翌日にはベテラン職人たちが腕を磨くために通う本格的な製パン学校に飛び込みました。

彼我の技術レベルの違いにも諦めずに研鑽を重ね、他店での修業を経て開業したのは2008年5月のことでした。途中幾度かくじけそうになったと彼女は言いますが、そのたびにご主人に励まされ、ようやくたどり着いた小さな店のはじまりです。

**厳選素材を手づくりで **

大切にしたのは素材と手づくり。彼女は自身のホームページで次のように語っています。
「ベーグルカンパニーの味の決め手は“引き算”。素材のおいしさ、風味を引き出したいから、必要最小限の素材だけでつくっています。
だから基本のプレーンベーグルの生地は、北海道産小麦、天然酵母、きび砂糖、天然塩、水だけのシンプルな材料でつくられています。
 具材ももちろんつくれるものはすべて手づくりです。
もちもちの食感になるように生地の声に耳を傾け、最後の瞬間まで手をかけます。“おいしい”を創るために、毎日丁寧に、真剣につくっています」

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小麦粉、酵母、きび砂糖、塩といった基本の原材料はすべて厳選した国産。レモン、みかん、きんかん、あんずなどは、地元にある実家で栽培する無農薬ものを使用し、そのほかの農産物も多くが顔の見える生産者が手がける地元産の旬のものを生かしています。

店の奥の調理場からは、スタッフさんたちのハキハキとした声が聞こえてきます。手づくりですから、その工程の手数は必然的に増えてたいへんです。ですが、皆さん元気がいい。たとえるなら、地区大会上位進出をめざす女子高運動部のような団結と明るさがありました。

ですから、訪れるお客さんもみんな笑顔。本当においしいものを前にして不機嫌な人はいませんし、笑顔は相手を笑顔にします。

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