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目的と結果

昭和26年(1951年)。拙著『店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる』の主人公、倉本長治とってこの年は人生のターニングポイントでした。いわれのない公職追放がようやく解除となり、盟友たちが倉本のためにつくった商業界に「主幹」に就任し、その肩書で初めて商業界に執筆したのが1951年1月号のことです。

タイトルは「新商人道の建設」。今から70年以上前の記事ですが、その指摘は今日の私たちにも覚悟を問いかけています。ここではその一部「目的と結果」を、表記を現代文に直してお届けします。


自分の生活のために商売をしている人が多い。小売店経営などはなんら専門知識もないのに、自分たち一家のためで経営するということは、社会の損失や不為になることすらあるものである。

金儲けのために商店経営をしている人が多いけれど、小売店などは、けっして金儲けにはならぬものである。金儲けを志す人は、株の売買とか商品の先高を見越して買いためるとか、そういうことをやったらよろしい。

安いものは安く、高いものもできるだけ格安に、社会の人々の利益が少しでも多くなるように心がける者でないと、これからの商人とは言えない。医者が患者の苦痛を少しでもやわらげようと努力する者でないとならぬごとくである。

こういう店でないと、社会一般がその店を愛好し、利用しないからである。大衆がその店で買ってくれることが多ければ多いだけ、その店主の得る報酬が増えるのであり、次第に利益は加わり、金儲けもできよう。これは目的ではなく結果である。


利益とは店が
どれだけ社会のために
役立ったかを測る
ものさしにほかならない


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