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【恥ずかしい失敗談】14

やっとの思いで取り付けたシンクロナイズド・トレモロユニット。
GrecoのフライングVに取り付けるなんて、今思うとかなり無謀だ。
しかし、取り付けてしまったので使うしか無いのだが、もう1度アーミングすると、完全に演奏が不可能になるレベルでチューニングが狂う。
まぁ、チューニングが少しでも狂うと演奏不可能なのだが、当時15歳だったオレには多少の狂いは許容範囲だったのだが、その許容範囲を大きく超えてチューニングが狂うのだ。
これはなんとかしなければなるまい。

【課題:チューニングを安定させる】

街中の大型書店で情報収集。
まだ、家庭様ビデオが超高価ながらやっと普及しだした時代で、インターネットのイの字もない時代だ。
中高生の情報源は基本的に本しか無かった。

調べてみると、ストラトのシンクロでのチューニングの狂いを最小限に抑えるために、プロギタリスト達が色々なアイディアで対応していた。
一番簡単に出来そうなのが、「鉛筆の芯の粉をナットに塗る」ってやつだ。
早速実践してみる。

効果ナシ。

次に出来そうなのは「弦が触れる部分(ブリッジやナット)にオイルを塗る」ってやつだ。

効果ナシ。

そして次に出来そうなのは、「シンクロユニットのネジの調整」ってやつだ。

やや、効果があったが、実用範囲内ではない。

どうにも既存のアイディアは「ストラト用」なので、Vのにそのアイディアを転用するには無理があるらしい。

【新たなる実験】

そこでオレは考えた。
チューニングの原理を調べてみた。
弦の張力によって、音程が変わり、張力が緩むことで音程が下がる。
なるほど、アームダウンすると音程が下がるのは弦の張力が緩むからだ。
とすると、元の張力へ正確に戻すことができれば、チューニングは狂わないはずだ。
正確に元に戻すにはどうしたら良いか…。

1)アームを使わない。(張力変化を起こさせない)
コレは無意味なので無理だ。
アームを使う以上、張力は変化する。

2)バネを強化して完全に引っ張り切る。
つまり、ストラトで言う所の「ベタ付け」のことだ。
これで、所定の位置までユニットが復帰すれば自動的に弦の張力も復帰するはずだ!

取り敢えずやってみた。
バネを5本全部掛けて、完全にユニットがボディーに付くように調節してみた。
結果は…

効果がある!

なるほど、効果はあるが、まだ2〜3〜4弦は狂う。
しかも、3弦は結構狂ってしまう。
しかし、1、5〜6弦は狂わなくなった。
何故だろう?

アームを動かしながら現に触ってみた。
ダウンした時に張力に差が出る事に気がついた。
2〜3〜4弦は思いっきり緩むが、1弦、5〜6弦はさほど緩まないのだ。

【ひらめきとは恐ろしいものだ】

その時だった。
「弦をブリッジとナットで固定したらどうなるのだろうか?」
この発想は後のフロイドローズと同じ原理だったのだが、当時はまだフロイドローズは世に出ていなかった。
あのヴァン・ヘイレンですら、ノーマルのシンクロナイズドトレモロユニットを使用していた時代だ。
そんな時代に、弦をロックすることを思いついた。
しかし、具体的にどうすりゃ良いか思いつかない。

散々考えた挙げ句思いついたのは以下の通りだ。

1)ボールエンドを固定してみよう!
トレモロユニットの弦を通す穴(つまりイナーシャブロックの弦が通る穴)を表面ギリギリまで掘り下げて、その穴にネジを切って、ネジを差し込む。
それで、ボールエンドを固定する事を思いついた。
これで、アームダウンしても、ボールエンドが遊ばないので、元に戻る確率は上がるはずだ。

早速加工して試してみると、もの凄く効果があった。
弦の狂いが今までとは雲泥の差になった。
それでもまだ、若干狂う。
こうなってくると、若干の狂いすらも気になり始めるので、さらなる改良が必要になってくる。🤣

2)ナット側も固定すべきだろう。
ナットからペグのまでの間で、弦を固定しようと思ったのだが、ブリッジ側のボールエンドをユニットに固定する様に、ナットに弦を固定するのは困難だ。
なので、瞬間接着剤でチューニングをした弦をナットに固定してみた。
これも、効果があった。
狂いが殆ど無くなったのだが、弦の張力に負けて、すぐ接着剤が剥がれてしまう。
何度か繰り返しているウチにナットが瞬間接着剤でゴワゴワになってしまって、使い物にならなくなった…。

スゲー困った。🤣

新たにナットを購入し溝を切り直して…という作業が待っていた。
でも、どうせナットを交換するなら、弦を固定できる機構を最初から組み込んだナットを付けたほうが良い!と思ったので、弦をサンドイッチにして挟み込んで固定する事を考えた。
コレは、後のフロイドローズのロックナットと同じ原理だ。

3)ロックナット自作。
塗装の時にお世話になった近所の金物屋さんで、アルミサッシのフレームになる材料が売っていたので、その端材を分けてもらった。
アルミサッシのフレームをナットの幅に切り詰め載せてみるが、まぁ当たり前にデカすぎる。🤣
なので、適度な細さに成るようにカットするわけだ。
ハンドドリルで細かい穴を開けて、ニッパーにその穴を繋いで、不要部分をもぎ取り、断面を金属ヤスリで仕上げた。
その、アルミフレームに跨るように、もう1本のアルミフレームを削り出して、その2つのフレームの間に弦が通るように、筋道を付けた。
で、2枚のアルミを重ねたまま、直接ネックにネジ止めしたのだ。🤣

かなり強引だが、効果はあった。
殆ど狂わなくなった反面、見た目はもはやスチームパンク風のVになっていた。🤣
それでも、狂わなくなった事に大喜びで、このギターを例の楽器屋さんに持ち込む事にした…。

つづく

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