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【グレコのピックアップ】

グレコの1978年製 FV600 に搭載されていたピックアップは、U-1000と言う、グレコのオリジナル商品だった。
とは言え、当時の本家Gibsonのハムバッカーのデッドコピーなのだが、78年頃には既に、グレコPUのハイエンドモデルはポッティングされていて、本家Gibsonよりも、ノイズやハウリングに対して強かった。

当時グレコは、Uシリーズ(ウルトラシリーズ)ピックアップの製造を、株式会社日伸音波製作所(マクソン)に委託していた。
つまり、当時のグレコのUシリーズピックアップは、マクソンが開発してたらしい。
近年、その77〜79年頃のローエンド(スタンダード)モデルのU-1000ピックアップをいくつか入手することが出来たので、サウンドを確認してみた。

自宅には、1978年のGibson T-TOP(PU-490)が載ったギターが数本と、、セイモア・ダンカンJBブリッジ&59ネックが載ったVモデル、Gibson 57Classic(初期モデル)が載ったV等、いくつかのギターがあるので、Greco U1000が載っているGreco M600('78製)と、弾き比べをしてみた。

【弾き比べる】

基準は、1981年製のGibsonフライングV(ナローボディ)+1980年PU-490(T-TOP)のV。

フライングVと言うと、日本ではマイケル・シェンカーの影響で、鼻にかかったような中域が張った音がすると思ってる人が多い。
まぁ、近年の67リイシューなんかは、フェライトマグネットが採用された、ハイパワーPUの500Tや498Rが載ってるので、その印象が強い人も多いのかも知れませんが、アルニコマグネットのPU-490が載っているVは、思いの外トレブリーで、扱いやすいんですよ。

スッキリした音像と適度な立ち上がりと粘りをもつV特有の音はジャズギタリストにも人気があり、ちょっとハイパワーなストラトみたいな印象の音がします。ある意味、それがPU-490の特徴なのかも知れません。
因みに、'80製PU-490の直流抵抗は 7.89kΩで、今どきの感覚だと割とローパワーPUです。

で、セイモア・ダンカンが乗ってる、バッカスのBFV57(マホガニーモデル)。
ボディー厚は、'81Vよりも気持ち厚めですが、’67リイシューよりは遥かに薄いです。
サウンドは、中域に貼りのある気持ち良い音。
どちらかと言えば、皆が思ってるVの音(シェンカーっぽい)に近い感じで、上も下も弱いですが、籠もる感じじゃなく、バランス的にミッドが張ってるイメージです。

そして、57Classicが載ってるBFV57。
同じバッカスのVでも、57Classicだとダンカンよりは、雑味がまして若干古臭い感じになります。
しかし、貼りのあるミッド感はJBの低出力版の様な様相で、490ベースのカスタムPUってイメージですね。
流石に最近のモデルらしくトーンを作り込んだPUってイメージでした。

更に、Greco U-1000を乗せたBFV57。
これは、意外にも490(T-TOP)の'81Vに一番近い音がします。
57Classicの方が近いかな?と思ってたんですが、いざ出してみると、57Classicとセイモアダンカンは、コンプとEQで作り込んだサウンドだとすると、このU-1000はその録音前の原音ってイメージで、かなり490っぽい適度な雑味と、ワイドなレンジ感。
一番違うのは、490がかなりドライなのに対して、U-1000はかなりウェットだということ。

このドライとウェットの感じを理解できる人は、'77〜'80年頃のマツモク製の国産と、カラマズー時代のGibsonの両方弾いたことある人なら理解できると思います。
マツモクがウェットで、Gibsonがドライなのは言うまでもありません。

最後に、U-1000を搭載したM600。
これは最初期モデルで、マホガニー単板ボディーのメープルネック仕様です。
79年後半から、ランバーコアボディにメープルネックに仕様変更されるので、最初期モデルと、その後のモデルは音が違うんですよね〜。
最初期モデルの方が音に締まりも有って、当時60,000円のギターとは思えない生鳴りサウンドです。
それにU-1000を搭載してあるので、弾いてみるとこれも立ち上がりも早く深みもあり、ギター本体がよければ、490に何ら引けを取らないと言うか、むしろダンカンなんかよりも、よっぽどワイドレンジで面白い事がわかります。
PU-490もかなりワイドレンジなPUですので、当時の日伸音波製作所の技術力の高さが伺えます。

Greco自身も、過剰なウェット感が気になってたのか、80年代から、「DRY(ドライ)」とか「SCREAMIN(スクリーミン)」とか、マクソン生産から自社生産に切り替えて、そう言うネーミングのPUを開発してますし、本家Gibsonでも、レスポール80ヘリテージとか、懐古主義みたいのが始まった時期でもあり、当時「ドライ感(ヴィンテージ感)」がどれほど求められてたかってことですよね。

【まとめ】

57Classicは意外とモダンピックアップで、ダンカンJBのGibson本家ローパワーバージョンみたいな印象。
Greco U-1000は、当時のPU-490(T-TOP)を手本にしただけ有って、仕上がりがかなりPU-490に近く、日伸音波製作所が頑張った感あるかんじでした。

逆に、T-TOP欲しい人は、GrecoのU-1000でも代用できるって事かもしれませんね。
U-2000の方がポッティングされてるので、扱いやすいかも知れませんけど、その分、HIGHが落ちるかも知れないですね。


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