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Netflix ブラックミラー ベスト5(シーズン1〜5)

Netflixの人気シリーズである「ブラックミラー」
1話完結型のオリジナルドラマなので気軽な気持ちで見始められます。
2023年6月15日からシリーズ6の配信が始まっていますが、シーズン5までの全22話観終えたばかりの筆者がおすすめベスト5を紹介します。

第5位

シーズン3「殺意の追跡」 (原題:Hated in the nation 89分)

 前代未聞の連続殺人事件、その全貌とは…

 あなたはTwitterやInstagramで芸能人や政治家に「死ね」とつぶやいたことはないだろうか。もしその「死ね」が現実になったら何を思うだろう?

まさか、そんな、「デスノート」みたいな漫画の世界じゃあるまいし…と思うところだが、この物語は、なるほどそういうことであれば現実そういうこともできるのかも、と思わせてくれるリアリティがある。

設定がしっかりしていて、この世界を想像するだけでも知的好奇心が刺激され、物語にしっかり入り込むことができた。

 また、他の方の感想を見ると、物語の終わり方に賛否があるようだったが、個人的には好きな終わり方だった。

ブラックミラーシリーズでは度々SNSが題材になっている。私ももちろんSNSをダラダラと見てしまう現代人の一人なのだが、SNSは見知らぬ誰かの悪意や自己顕示欲の巣窟だ。テラハ木村花さんの自殺の時などは、「死ね」と言ってた奴らにそれこそ「死ね」と言いたい気持ちになり、そういうツイートをしようとした瞬間に頭をよぎった言葉がある。

同じ穴のムジナ

一人の女の子を死に追い込んだしょうもない奴らのつぶやきは、絶対的な悪であり、自分はそんな悪を断罪したかったのだが、結局やってることは同じだと虚しくなった。それはその言葉を見た誰かが自殺する可能性があるという事ではなく、何か得体の知れない、制御のできない大きな情念のうねりの中に自分が溶けていくような感覚をおぼえたのだ。

この物語ではその何か得体の知れない、制御のできない大きな情念のうねりというのが、ドローンミツバチになって表れているのだと感じた。

そう、このラストは、控えめではあるが、そんなうねりの中に否が応でも呑み込まれてしまうと言う雰囲気を感じさせた。

 作り込まれたSF設定、先の読めないサスペンス、誰もが共感出来るようなSNSをテーマにしていること、味のあるラストもふまえ大変面白い作品。ただ映画に匹敵するくらい時間が長いので、おすすめとしては第5位くらいである。

第4位

シーズン3「拡張現実ゲーム」(原題:Playtest 57分)

開発中のゲームの被験者となった主人公が体験したものとは…

 誰しも1度は母親からの電話を無視したことがあるのではないだろうか?
それはうっとおしい、面倒くさい、と大した理由ではないのにだ。なおさら自分に後ろめたいことがあれば、より電話に出るのは億劫になるだろう。

 この作品をおすすめしたい1番の理由は、ホラーとしてちゃんと怖いからである。シリーズ未見の方は「ブラックミラー」は怖い作品が多いのではないかという印象があるかも知れないが、確かに怖いは怖いでも、「人間怖い」「テクノロジー怖い」系が多く、びっくり系のホラーは意外と少ない。

そんなシリーズの中でも唯一、怖い怖いとキャッキャ言いながら見れるのが、この作品である。それこそホラーゲームの世界に入り込んだような楽しみ方もできる。しかし、びっくり系とは言ってもそれは物語の1要素に過ぎず、無駄のない脚本で、しっかりと芯の食った怖さや悲しさがそこにはある。

 この作品を見終わった時、素直に思ったことは、「あ、母親からの電話は出よう」である(笑)。私はひそかに、この作品は、視聴者が母親からの電話に出るようになるためだけに作られたと思っています(笑)。ブラックなものも含めユーモア満載のドラマシリーズであるから、そんな斬新な試みをしているのでは?という妄想をしてしまったこと込みで、おすすめ第4位。

第3位

シーズン1「人生の軌跡のすべて」(原題The Entire History of You 49分)

自分の記憶を全て録画できるチップの記録をたどる主人公

 ドライブレコーダーを付けることが当たり前になったのはいつ頃からだろう?もし事故被害にあった時などは、ドライブレコーダーの客観的な記録が自分の主張を裏付ける証拠にもなる。交通社会を生きる上で、ドライブレコーダーが果たす役割は大きくなっているはずだ。

 もしかしたら近い将来、そんな風にして「人間にもレコーダーを付けよう」という世界になるのでは?と考えるのはSFドラマの見過ぎだろうか。。個人的にはなんか普通にあり得そうかもと思った。

 この「ブラックミラー」シリーズを見ていると、テクノロジーが発展したら人間はどこまでそれを使っていいのだろうか?と考えさせられる。「もしクローン人間が作れるとしたら、それは作っていいのだろうか」というような倫理的な問いだ。全知全能、不老不死。もしかしたら遠くない未来にそんな現実がやってくるかも知れない。それは誰かからすれば夢見た世界なのかも知れないが、私はそのようにすべてを「あり」にすることにはすごく恐怖を感じる。

 今回の物語は、自分の記憶に関して「全知全能」になれるという設定だ。自分の記憶に関して「すべて」を知れて、「すべて」を再生できるということだ。これは私だけかも知れないが、「すべて」というのは何か怖い。「すべて」というのは本当に重要な事なのだろうか。そんなことを考えていたらB'zの好きな曲を思い出した。

 すべて知るのは到底無理なのに僕らはどうして
 あくまでなんでも征服したがる カンペキを追い求め
 愛しぬけるポイントが一つありゃいいのに

B'z「イチブトゼンブ」

 主人公は「すべて」を知ろうとしてしまった。保存された記憶によって、カンペキな真実を追い求めてしまった。そして、自分が妻のすべてでなければ気が済まず、征服しようとしてしまった。本当は愛しぬけるポイントが一つあればいいのに。

 テクノロジーの発達による人間の悲劇というのはこのシリーズのテーマであり醍醐味でもあると思う。そんな要素をギュとした話であるし、まるで刑事が犯人を追うように、「記憶」を頼りに妻を追い詰めていく展開も緊張感があって面白い。ラストシーンの演出も結構好きだったりして、おすすめ第3位です。

第2位

シーズン1「1500万メリット」(原題:Fifteen Million Merits 62分)

極度の管理システムで暮らす主人公

 この作品をおすすめする大きな理由は主人公を演じるダニエル・カルーヤの演技を見てほしいからである。

 ダニエル・カルーヤはジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』という映画でアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたことがある俳優。決して派手ではないけれど、寡黙でポーカーフェイスな中にも色んな感情を見てとれるような演技が好きだ。

 画面に映る時、大半は感情を溜め込んだような遠い目している。実際セリフの量はそんな多くないのだが、彼はむしろ言葉を発さない時の方が鑑賞者を惹きつける魅力がある。

 しかし後半のクライマックスではここぞとばかりに感情を爆発させる。
このシステムに対しての怒りや悲しみを、魂から訴えかけるシーンだ。印象的なシーンだったので、そのセリフの一部を書き起こす。

俺たちの思考はイカれちまっている
俺たちは偽物しか知らない
それを買うことでしか自己表現できない
一番の夢はアバターに帽子を買うこと
この世にありもしないクソ妄想を買うだけ
自由で美しい本物は俺たちに見せない
麻痺した心が暴走し始めるから

 フィクションの中で投げかけるセリフは、意外や、現実の我々にも当てはまるのかも知れない。「自由で美しい本物」が何なのか、見極めて、守り抜く力を持たないと、時の為政者や巨大資本に流され、システムに自己というものも絡め取られてしまうだろう。

 ちなみに、主人公が一目惚れしたアビが歌っている曲は、Irma Thomas
「Anyone Who Know What Love Is(Will Understand)」という1968年にリリースされた曲である。

 この曲はシリーズの他のドラマでも度々登場し、ブラックミラーのテーマソングのようになっているので、その点も注目して欲しい。

 いかにもなSF設定で誰もが楽しめる話でありながらも、やはり皮肉が効いていて、今生きている世界のことまで考えさせられる点でおすすめだし、そして何よりダニエル・カルーヤの演技が素晴らしいので、おすすめ第2位とした。

第1位

シーズン4「HANG THE DJ」(原題そのまま 52分)

主人公のフランクとエイミー

 現代はマッチングアプリ全盛で、Youtubeでは頻繁に広告が出てくるし、アプリで出会った相手と結婚している友人も少なくない。何を隠そう、この私もアプリで恋人を作ったことがある(すぐに別れてしまったが…)。

 マッチングアプリは、趣味や生活範囲が近い人を見つけやすかったり、性格診断で相性が判定されるものもあったり、ある程度合理的に恋人を見つける事ができるツールであるといえるだろう。しかし、恋人としての相性というのは、どこまでそういったものを頼りにすることができるのだろうか?
趣味や性格が合うからといって、その2人は運命の相手なのだろうか?

 感覚的に答えるなら皆さんの回答は「No」だろう。私もそう思う。趣味とか性格も大事だけど、なんかこうフィーリングというか、簡単に言葉で言い表せない何かなんだよな…みたいな。

 この作品はそういったモヤモヤに対して1つの明確な回答を出している。
そして、その回答の示し方がとても素晴らしい。話の展開として「え、何これ!?」と驚くし、そこに映像のインパクトが加わるので、不思議な感覚に陥る。

 一言でいうならば、ロマンということかもしれない。一緒にいてロマンを持てるかどうか、それが2人の相性なのかもしれない。

 メッセージ・設定・構成・結末・映像・音楽、どれをとっても完璧で、圧倒的に1位の作品。というか個人的には、今まで見た映画やドラマの中でもかなり上位の作品です。ジャンルでいうと“恋愛ドラマ”だが、もちろんただの恋愛ドラマではない。恋愛に対する批評性を獲得しつつ、“恋愛ドラマ”をやってみせていて、なおかつシリーズのテーマにあった近未来的な結末に落とし込んでいるという、奇跡的な脚本だと思います。

 ただし、1位にしたことと矛盾するようですが、この作品を1番最初には見て欲しくないです。ある程度他の作品を見てからにすることをお勧めします。なぜなら、その方がよりこの作品がよく見えるからです。他の作品が、皮肉やブラックユーモアに満ちているからこそ、この作品が輝いて見える部分もあると思います。

終わりに

以上、私が勧めるベスト5ですが、他にも面白いものは沢山あります。参考までにベスト5に入れるか悩んだ作品を書いておきます。
 ・シーズン3「ランク社会」
 ・シーズン4「クロコダイル」
 ・シーズン4「ブラックミュージアム」
 ・シーズン5「ストライキング・ヴァイパーズ」

22話あればあたりもハズレもあります。この記事が参考になれば何よりです!

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