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多能工化する社会で私たちはどう生きるか

先日こんなツイートを見かけたので、少し考えてみた。

私の中での答えは、「セールス」という名前だった。

詳しくいえば、セールスから派生したこれらの職種が、時代の変化によって再度セールスに集約されつつあるのではないかといった文脈である。

このnoteでは上記のツイートを出発点として、多能工化する社会と、その中で私たちはどうあるべきかを考察していく。

売るための役割の分割と単能工化の歴史

モノを売るための仕事の単能工化、多能工化という文脈で歴史を簡単に紐解いてみる。

モノを作る人がモノを売っていた時代

自分で作ったものを自分で売っていた時代であり、仕事の役割は特に分割されていなかった。ある意味でとても健全だったといえる。

作る人と売る人が分離された時代

作る人と売る人を分離することで、より効率的にお金を稼ぐことが出来るということがわかり、「売る人」という役割が生まれた。

この段階で、「作った人の気持ち」などをうまく伝承する機会が失われたが、他方で効率性を手に入れることが出来た。

また、このフェーズではあくまでも「売る人」でしかない。

売るためのタスクが分割された時代

より多くのものを売ろうとすると、「ものの良さを広める人」や「苦情の対応を行う人」や「使い方をサポートする人」など、役割を分割するほうが効率が良いと考えられる時代になった。

それによって、売るためのの派生的な役割が生まれていった。

役割に名前をつけることが「儲かる」ことに気付いた時代

役割に名前をつけることで、自らの役割に境界線を引き、聖域を作ることが可能となる。それによって、自身の価値を表面上高めることが出来ることに気付いた人たちがいた。

端的にいえば、役割に名前を付けて境界を明確にすることが給与増加に繋がるという話だ。

それによって、今までは売るための役割の一つでしか無かったものに対し、「マーケター」だとか「カスタマーサクセス」だとか「プロダクトマーケティングマネージャー」だとか、そんな感じの名前を付けていくことになった。

ツールの進化によって誰でもその役割ができる様になった時代

今がまさにこの時代だと考えている。

情報化社会が進んだこと、そしてSaaSの隆盛など各種ツールの進化により、一定のレベルであれば誰であってもその「役割」をこなせるようになった。

たとえば、Webサイトの簡単な分析であれば「Googleアナリティクス」を使えば誰でも出来るし(かつては専門スキルだった)、intercomを使えば誰でもカスタマーサポート(だけでなく、カスタマーサポートチーム/必要なツールの構築)が可能になった。

Twitterアドはキーワードを入れるだけで最適な広告が出せるし、Web広告を出稿するという役割はもはや誰でもこなせるようになった。

としたときに、ひとつの役割しか出来ない状態(=単能工)では自分だけの価値を生み出せなくなった一方で、より簡単に多能工化していくことができるという状況が生まれた。

そして、このような簡単に多能工化していける社会では、売る人という役割から派生した役割はもとの役割に収束していき、結果として多能工化した「売る人」という役割に戻るのではないかと考えている。

多能工化する社会で個人はいかに戦うか

ひと昔前は、スキルの掛け合わせで希少価値の高い人材を目指すことがキャリアの勝ち筋だといわれていた。

これは一定そのとおりだと思いつつ、大きな幹で見ると同じ分類のスキルを保持していたところで、ただの多能工化した人にすぎず、これ自体に何ら付加価値のない世界が近づいていると考えている。

最初のツイートでいえば、疑問に思うべきは「なぜ若手と思われる年齢の人ですら多能工化できたのか」という問いではなかろうか。

つまりは、実態としては大して難しくない派生したスキルの組み合わせにもかかわらず、「スキルの掛け合わせで希少価値の高い人材である」といった勘違いに近い事象が生まれているのではないだろうか。

例えば、過去には「タイピスト」と呼ばれるタイプライターに文字を打ち込むだけの仕事が存在していたが、これは時代の流れとツールの進歩により、この職種自体は派生元の職種に統合されていった。

このタイピストと同じような状況が、例えば「カスタマーサクセス」などの比較的新しい職種かつ「売る人の派生系」の職種では起こりうるのではないだろうか。

としたときに個人がとれる戦略は3つだと考えている。

・多能工化に対応するためのメタスキルを磨く
・単能工として尖り切る
・派生元の異なるスキルを複数個持つ

このどれもが複雑に思える事象ではあるが、個別のスキル習得の難易度は年々下がっており、総合的に見ればこれまでと何ら変わりない投下時間で同じような位置に立てるのではないかと考えている。

とはいえ、一度身につけたスキルだけで今後数十年生活していくことはもはや不可能と考えられ、生涯勉強という螺旋からは逃れられないのであろう。

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