「袋小路の男」のはなし
絲山秋子さんの著書「袋小路の男」という小説に“酔いも手伝って名神・東名を160キロでとばして東京に行った”という文があるんだけど、私が高校生のときに受けた国語の模試の問題文のなかでは、飲酒運転であることと時速160kmも出していたことは伏せられていた。
たしか“とにかく急いで東京までクルマをとばした”とか、そんなふうに変えられていたと思う。
主人公がこれから運転するのにあえて飲酒した心境や、そこまでスピードを出した理由、そういうことに思いを巡らせるにはやはり原文が必要だった。
模試を受け終わるなり書店へ向かった私の、ほんとうの文章を読んだときの感動を、今の私はまだ覚えている。
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