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「イケナイ同級生」

【テーマ】
柴田百合子さんの『テレビ東京#100文字ドラマ(案)』

【シナリオ】
○くるみの自宅・リビング
  くるみ(23)が雑に家の掃除をしている。
  机ではPCで執筆作業をしている悠太(25)。
くるみ「買い物行くけど、買ってくる物ある?」
悠太「(PCから目を離さず)えーと、コピー用紙とプリンターのインク」
くるみ「インク? スーパーに行くんだけど」
悠太「じゃ、いい」
くるみ「……」

○スーパー・外観(夕方)
  雨が降っている。

○くるみの自宅
  くるみ、悠太のデスクにコピー用紙とインクを置く。
悠太「(PCから目を離さず)……さっきアマゾンで頼んじゃったよ……」
くるみ「……」
  と、インターホンが鳴る。
くるみ「?」
  悠太「まさか。アマゾンかな……」
  玄関へ向かうくるみ。

○同・玄関
  ドアを開けると、真帆(23)が震えて立っている。
真帆「くるみ……」
くるみ「え?あれ?ん?」
真帆「突然ごめんね」
くるみ「真帆?」
  真帆、泣き出す。
くるみ「な、なに? ちょっと……と、とりあえず」
  真帆を招き入れるくるみ。

○同・リビング
  ソファーに座っている真帆。
  その前にお茶を置くくるみ。お茶を飲む真帆。
  困惑する悠太。
悠太「(小声で)誰?」
くるみ「同級生……」
真帆「……」
くるみ「で? それで? 」
真帆「……旦那とちょっと……ケンカして……」
くるみ「結婚……してた?」
真帆「半年前に……」
くるみ「……家を出たの?」
真帆「うん……」
  くるみ、真帆の身体にあざがあるのをみつける。
くるみ「身体冷えちゃったし銭湯いこうか」
真帆「え?」
くるみ「近所なの!私のおすすめだから!」

○亀の湯・サウナ(夜)
  サウナに入っているくるみと真帆。
  汗をかいている。
くるみ「……なるほどね。相変わらず男運がないこと……」
真帆「……」
くるみ「仕事は?」
真帆「……してない。私くるみと違って優秀じゃないから……」
  間。
くるみ「(溜息)……うちくる?」
真帆「……いいの?」
くるみ「だって頼るとこなくて来たんでしょ?それに……」
  くるみ、チラッと真帆のアザをみる。
くるみ「今帰ってさらにもっと問題になったら私も困るし……旦那は……説得しとくわ」
真帆「……ありがとう(涙ぐむ)」
くるみ「……」
  と、サウナに先に入っていた恵里(40)が近づいてきて。
恵里「流石我らのくるみちゃん!!(笑って)」
真帆「!?(びくっとして)」
恵里「困ったときは支え合う!それが友達ってもんよ!(元気よく)」
真帆「……」
くるみ「この人ご近所の恵里さん。私も最初ここらへんで暮らした時全然知り合いいなくてさ……恵里さんには色々良くしてもらってるの……」
真帆「……そう……なんだ」
  恵里、真帆に対してにっこりする。
真帆「よろしくお願いします!!」
  真帆、深々とお辞儀をする。

○くるみの会社(数日後)
  上司がくるみの席にやってくる。
上司「ちょっといい?」
くるみ「はい」

○同・会議室
  上司とくるみが立ったまま話している。
くるみ「外れて欲しい? 私が?」
上司「君は帰国子女で優秀だし、彼の主張がおかしいのはわかってるんだけど……」
くるみ「……」

○とある道(夜)
   早歩きで歩いているくるみ。
くるみ「……何で私がポンコツの先輩のために引き継ぎ資料なんて作らなきゃ……」
   と、横に亀の湯が現れる。
くるみ「……もう遅くなっちゃったし……いいよねちょっとくらい……」
  くるみ、亀の湯に入っていく。

○亀の湯
  湯船につかるくるみ。
  と、サウナから恵里の笑い声が聞こえてくる。
くるみ「恵里さん?」
  くるみ、湯舟から出てサウナに向かう。

○同・サウナ
恵里と真帆ときゃっきゃ言いながらヨガをしている。
くるみ「……」
恵里「ああ、くるみちゃん」
真帆「くるみ!(笑顔で)」
恵里と真帆はきわどいポーズを取っている。
真帆のポーズを真似するが、倒れる恵里。
恵里「あ~だめだ!」
真帆「主婦してると、筋肉が固くなっちゃうから……(笑って)」
  くるみ、二人の仲の良さそうな様子を見ている。
くるみ「……恵里さん今日面接の日じゃなかった?」
恵里「ん? ああ……」
くるみ「行ったんでしょ? 面接」
恵里「……散々……」
くるみ「へええ? そのわりになんか、元気」
恵里「ヨガのおかげ?真帆ちゃんがいると私も楽しいわ」
真帆「そんな(笑って)」
くるみ「……」
真帆「くるみも一緒にやる?私前ヨガのインストラクターしてたの」
くるみ「……いい」
真帆「……そうだ!今日おうちに悠太さんのお母様が来てるよ!」
くるみ「え」

○くるみの自宅・リビング
  扉をあけ部屋に入るくるみと真帆。
くるみ「ただいま……」
  部屋にいた悠太の母紀子と悠太が振り向く。
紀子「あら、久しぶりね」
くるみ「……お久しぶりです……お義母さん」
悠太「真帆さんも銭湯ゆっくりできましたか?」
真帆「はい!おかげさまで!あとこれ」
  イチゴ牛乳の空瓶をみせる。
真帆「悠太さんのおすすめのイチゴ牛乳も美味しかったです!」
悠太「よかった!(嬉しそうに)」
くるみ「……」
紀子「でも私安心したわ、くるみさんようやく家事もちゃんとできるようになったようで(嫌味っぽく)」
  くるみ、部屋を見渡すとかなり綺麗に掃除されている。
くるみ「……」
悠太「母さん違うって!家の掃除は真帆さんがしてくれたんだよ!」
紀子「まあ!(真帆を向いて)お料理も上手であなたは本当に何でもできるのね(笑顔で)」
  くるみ、テーブルの料理をみる。
  と、自分が作った時とは比べ物にならないくらい鮮やかに盛り付けられた料理が並べられてる。
くるみ「……」
真帆「いやいや私なんてほんとダメで……居候の身ですし……」
くるみ「……」
真帆「……これくらいしかお役に立てることなくて……くるみには助けられっぱなしなんです」
  くるみ、悔しい表情で拳を握りしめる。
  真帆、楽しそうに話す悠太と真帆と紀子をみる。
  各々席についてくるみが席につくのを待っている様子。
真帆「くるみ!早く一緒に食べよ!(笑顔で)」
くるみ(声)「何よその笑顔、あなたも(悠太を見て)、お義母さんも(紀子を見て)……」

×     ×     ×
  フラッシュ。サウナ。
恵里「――真帆ちゃんがいると私も楽しいわ」
×     ×     ×

くるみ(声)「恵里さんだって……そんな笑顔私にみせくれたことないじゃない……」
  満面の笑みでくるみをみている真帆。
  くるみ、作り笑顔をして席に座る。
くるみ「いただきましょうか(ひきつった笑顔)」
  くるみ、真帆をみて。
くるみ(声)「このままじゃ私はこの笑顔に……居場所を……家を……乗っ取られる……」


(つづく)