見出し画像

山口百恵 / 横須賀ストーリー歌詞考察

1.プロローグ

今回も私の生まれる20年以上前の楽曲から、大好きな山口百恵さんの「横須賀ストーリー」を取り上げてみようと思う。

まずは、いろいろ語る前に、私の制作した動画を見て頂いて、曲のイメージを掴んで欲しい。楽曲はフルでは使用していないので、途中でフェードアウト。全編単なるイメージビデオのため、歌詞とはリンクしない部分がほとんど。あらかじめご了承下さい。

※note埋込みのYouTube再生で画質悪い場合は、直接YouTubeで開いてご覧になるか、ミクチャ会員の方は私のミクチャムービーで見てね!

2.アイドル山口百恵

山口百恵は1973年、当時日本テレビで放送されていた「スター誕生!」という素人勝ち抜き番組で勝ち残り、アイドルとしてデビュー。番組同期の「森昌子」「桜田淳子」と共に花の中三トリオ※1としてテレビ・雑誌等でも有名になり、清純派アイドルとして売り出された。

※1:ソロアイドル歌手なのでグループではない。仲良し3人組的な感じかな?

そんな清純派アイドルとしてのイメージを脱却するきっかけになったのが、この「横須賀ストーリー」という楽曲との出会い。

横須賀ストーリー シングル盤

「横須賀ストーリー」は、1976年6月21日にリリースされた山口百恵の13枚目のシングル。発売元はCBSソニー。オリコン1位獲得。年間ランキングで8位。

元々ダウン・タウン・ブギウギ・バンド※2のリーダー「宇崎竜童」とその奥様「阿木燿子」の楽曲に感銘を受け、山口百恵自信が曲作りの指名をしたと言う…。自らが清純派を抜け出したい強い思いがあったのか?

今でこそこういう曲の提供はあるが、当時はアイドルの楽曲は作詞家・作曲家の大先生にお願いするのが常識な時代。まだ若い(10代)女の子なのにかなり思い切ったお願いだったんだと思う。

山口百恵は横須賀出身(生まれは東京)。そんな身の上を聞いて阿木さんが意識的に横須賀をイメージして作詞したのかな?
調べてみると、阿木さんは両親が横須賀在住だったため、最初にこのタイトルを決めてから曲作りに入ったという(Wikipediaより)。

山口百恵はこの曲の大ヒット以降、宇崎&阿木コンビの楽曲で更にヒット曲を連発。昭和を代表する歌姫になった。

1980年に俳優の三浦友和さんと結婚、引退。
その後今日現在まで芸能活動に復帰した事はない。

※2:私の動画の横須賀三部作の第一作「港のヨーコ ヨコハマ・ヨコスカ」をヒットさせたバンドがダウン・タウン・ブギウギ・バンド。港のヨーコは阿木さんの作詞家デビューの作品でもある。

すっかり大人しく落ち着いた最近のドブ板通り

3.横須賀という所

江戸時代末期にペリーが開国を要求しに来た最初の場所が横須賀市の浦賀という所。当時は浦賀には江戸幕府の奉行所があり、かなり街は栄えていたと聞く。江戸まで船を入れるにはここで通行の許可が必要だったとか…。

一方同じ港町の横浜は、その当時は漁村で今ほど栄えていなかった時代。今とは正反対のイメージだけど、江戸末期は横須賀浦賀の方が幕府の要所だった。

浦賀奉行所跡

そしてそれが造船の街へと進化し、開国後は横須賀市は海軍の街として栄える事になる。第二次世界大戦が終わり、海軍の土地はほぼアメリカの所有となり、現在は海上自衛隊とアメリカ海軍が隣接して並んでいる特異な場所でもある。

そんな軍港を中心としたアメリカ兵が通りを行き交う街、ちょっとスリリングな街、横須賀で彼女は育った。

この曲の歌詞の中に、「急な坂道 駆けのぼったら 今も海が 見えるでしょうか」という一節がある。これは今では「これっきり坂」と呼ばれている坂が実際あって、そこを登りきると「平和中央公園」と言う東京湾を一望出来る公園に着く。私の作った先の動画ではその坂道と東京湾を見渡す場所が映るが、それが実際のこの場所である。

平和中央公園からの眺め(東京湾)

山口百恵がアイドルとして東京に移り住む直前、この場所で同級生とお別れをした場所でもあるとの事。

ところが歌詞の方は阿木さんが横須賀をイメージして書いたもので、実際はここを知っていた訳ではないとも聞く。つまり、後付けで「これっきり坂」と結び付けられたのかな?

百恵ちゃんが最後に同級生と過ごしたのは事実のようだけど…。そもそも「これっきり坂」と言うのは正式名称ではないし、この名称で呼ばれるようになったのは、当然この曲の大ヒットを受けての事。

海上自衛隊の艦船

4.歌詞考察

まずは歌詞全体を見て頂こう…。

これっきり これっきり もうこれっきりですか
これっきり これっきり もうこれっきりですか


街の灯りが映し出す
あなたの中の見知らぬ人
私は少し遅れながら
あなたの後 歩いていました


これっきり これっきり もうこれっきりですか
これっきり これっきり もうこれっきりですか


急な坂道 駆けのぼったら
今も海が 見えるでしょうか
ここは横須賀


話しかけても 気づかずに
ちいさなアクビ重ねる人
私は熱い ミルクティーで
胸まで灼けてしまったようです


これっきり これっきり もうこれっきりですか
これっきり これっきり もうこれっきりですか


あなたの心 横切ったなら
汐の香りまだするでしょうか
ここは横須賀


一緒にいても心だけ
ひとり勝手に 旅立つ人
私はいつも置いてきぼり
あなたに今日は聞きたいのです


これっきり これっきり もうこれっきりですか
これっきり これっきり もうこれっきりですか


そう言いながら 今日も私は
波のように抱かれるのでしょう
ここは横須賀

♪♪これっきり これっきり
もうこれっきりですか♪♪

女性目線で描かれた本作、このフレーズが幾度となく繰り返される。つまり恋人関係の男性に、私達はこれでおしまいなの?と永遠に問いかけている。

歌詞全体を見ると問いかけていると言うより、心の中の叫びで、実際には言い出したくても言えない関係性のようでもある。

♪♪ 街の灯りが映し出す
あなたの中の見知らぬ人
私は少し遅れながら
あなたの後 歩いていました♪♪

この男性には別の女性の影がチラついてるよう。それでも男性に捨てられまいとして、ずっと付いて行く健気(けなげ)な女性の様子が伺える。

ここでまた、冒頭のフレーズ…。
もう、これっきりですか?

♪♪ 急な坂道 駆けのぼったら
今も海が 見えるでしょうか
ここは横須賀♪♪

彼と何度も行った思い出の場所なのでしょうか?横須賀の解説の所にも書いた、横須賀の東京湾が見渡せる高台(公園)。しばらくは行ってはいないようだし、彼に楽しかったあの日々を思い出して、元の関係に戻って欲しいようにも受け取れる。

♪♪話しかけても 気づかずに
ちいさなアクビ重ねる人
私は熱い ミルクティーで
胸まで灼けてしまったようです♪♪

この男性は気持ちがかなり離れているのか、話しかけても上の空。あくびまでする始末。そんな彼に問いかけたい「もう終わりなの?」
それでもそれを聞くに聞けないモヤモヤがさらに胸を熱くする。

繰り返しの心の問いかけ…
もう、これっきりですか?

♪♪ あなたの心 横切ったなら
汐の香りまだするでしょうか
ここは横須賀♪♪

どう解釈するば良いかな?

彼の心に声を届かせる事が出来たなら、元の優しい貴方はそこにいるんでしょうか?…かな?

横須賀で汐の香りは割と身近な日常的な存在。そんな日常に彼は戻ってくれるんでしょうか?

いずれにしても自分の声を彼に届ける事はとても難しそう…。

♪♪一緒にいても心だけ
ひとり勝手に 旅立つ人
私はいつも置いてきぼり
あなたに今日は聞きたいのです♪♪

一緒にはいてはくれるけど、心ここに在らずの彼。他の女性の事で頭がいっぱいなの?今日こそは教えて欲しいの!もうこれっきりなんですか?
…とても切ないです。

冒頭のフレーズが繰り返される…。
もう、これっきりですか?

♪♪ そう言いながら 今日も私は
波のように抱かれるのでしょう
ここは横須賀♪♪

心の問いかけは、それを言い出す勇気もなく、彼とはズルズルと大人の関係がずっと続く…。そんな横須賀での悲しい恋物語(ストーリー)…。

以上勝手な個人的な解釈で書きました。そもそも歌詞に意味を求めてもしょうがないけど、この曲もなんか語りたくなった。

5.動画に足された映像解説

私の動画にはその曲の前後に付け足された映像がある。

令和に生きる成人女性が、彼氏とふらっと入った中古レコード店…。

いろいろレコードを物色してると、彼が「これ聞いてごらん」とヘッドホンをかけてくれた。軽快なイントロが響く。聴こえてきたのは「横須賀ストーリー」だ。

歌も歌詞もすごく気に入った。だけどこの映像の最後では何やら考え込んでいる様子が見える。

このストーリー(物語)って私の事?
何か自分達と重なる事がいっぱいで、歌詞カードを読み返しながら再度聴き返してみる。

♪♪これっきり これっきり
もうこれっきりですか♪♪

ねえ!私達も?もうこれっきりですか?

-おしまい-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?