【短編小説】砂漠化および干ばつと闘う国際デー
画面の向こうの砂嵐。白黒の何も映らない画面じゃなくて、ほんとの砂嵐が吹き荒れてる。
「ねー、これってほんとにあった映像?CGとかじゃなくて?」
「リアルだよ。作りものじゃなくて、本物。本当の砂漠」
にわかには信じられないその光景は、辺り一面が砂だらけ。茶色よりも金に近い輝きを放つように見える砂たちは、吹く風に乗って舞い踊り、徒に人や生き物達へ纏わりついている。
「すっごいね、コレ。ほんとに砂ばっかり。えーっと……何年前の話なんだっけ」
「大体二百年、とかかな。一時期は地球上の緑という緑と生き物たちが半分以上枯渇しかけたらしい」
「うわぁ、こっわ。まじで?今は?」
「今は砂漠は全世界の1パーセント。綺麗な水と空気と安定した気候で持ち直した」
へぇー……と返事をしながら、窓の外の緑と画面の中の黄色い映像が違和感を生み出して仕方なくて、何度も見比べた。
このころ何があったのか、は一応教科書で習った気がするけど、まぁうん、人間がバカやっちゃってさぁって感じにしか覚えてない。
でもそっから、今の状態になるために、世界中の争ってた国々が力を合わせて必死になったってのはちゃんと理解してる。
戦争とかも、今は昔だ。地球がいっこになるって案もあったけど、それはなくて、今も国同士は別々。でも、そっちの良さも認めつつ、でも相手に迷惑になることはやめようね、と約束をかわしたことで、争いを劇的に減らそうという動きになっていった。
互いの利権ばかり主張するのではなく、通貨は全て均一に。言語や宗教はしかたないけど、賃金も価値も均したことで、まぁ…反発はあったらしいけど、概ねなんとか落ち着いたのがここ数十年なんだってさ。生まれる直前くらいだったらしいから、その辺はぼんやりしてる。
とりあえず、今の自分たちの生活は安定してて、緑もいっぱいで、過ごしやすいって事が解ってればまぁいっかな。
「凄いね、こんな砂だらけが、緑でいっぱいになるなんてさ」
「植物の成長スピードを考えれば、ほんと気の遠くなる話だよ。でもそれを成し遂げた。人間ってバカだけど、凄いところもあるんだなって思うよね」
……だからさ、頑張って緑化運動の声をあげてよ。こんな未来が待ってるからさ。
寝起きのぼんやりした頭の中で、今朝みた夢が駆け抜けていく。待ってほしい、何かすごい事を見て言われた気がするんだけど、覚えてられない。
隣に寝てる相方そっくりの人物になにやら言われた、気がする。多分、がんばれって感じの事を。
ふと目に入った寝室の壁にかざった一枚の写真には、砂の中で撮った自分と現地の人々の暑そうな顔。
うん。自分たちのためにも、彼らのためにも、緑がいっぱいで過ごしやすい環境を作り上げるために、砂漠化を止める手立てを考えなければ。
何故かわからないけれど、やる気が満ち溢れてることだし、今日は徒歩と電車で通勤しよう。車は…現代社会に必須なのはわかるけれど、将来的にエコなものにスイッチできるように、新たな技術を考え出さなければ。
よし、と一度拳を握ってやる気を出し、体を起こしたのだった。
本日は「砂漠化および干ばつと闘う国際デー」だそうです。今日は何の日~毎日が記念日~様より。
砂漠化、問題になっていますね。文中のような未来になったらいいな、なんて願いを込めて書きました。
もちろん、生態系の色々もありますし、きっと二百年やそこらで簡単にはかわらないでしょう。それに変えてしまう事がすべて良い事に繋がるわけではないでしょうし。
ただ、それでも広がりをみせている部分は、食い止めるべきなのかなと思いました。
少しでも地球温暖化を防ぎ、環境のためになることを。難しい問題ですが、ひとりひとりの小さな意識の変化によって変わっていくと信じて。今日もゴミを分別して捨てています。
小説を書く力になります、ありがとうございます!トイ達を気に入ってくださると嬉しいです✨