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【短編小説】ペパーミントの日

「どうして!ここに!植えようとしたの!」
「や……だ、ってさ、こないだ、ミントのハーブティー美味しいって……」
 ついつい大きな声を出しちゃったけど、しょうがないと解ってくれる人は多いはず。
 小さい庭の片隅、そんなにしっかり手入れはできないけど、ホームセンターで季節ごとに苗を買ってきて楽しむそんな場所。その一角に、見覚えのある、でも見たくなかった苗があった。
「あ~~~……確かに美味しいねって言ったわ……。うん、気持ちは嬉しいよ。でもねぇ……ミントはここに植えちゃダメ」
 ひくっとしゃくりあげた同居人を見て、気持ちは嬉しいけど、とためいきをついた。
「そう、なの?」
「そうなの。確かに美味しいし、デザートのかざりとかも可愛いんだけどね……コイツら繁殖力がヤバすぎなのよ」
 知る人は知るその危険度についカッとなって頭を抱えて、怒鳴ってしまった。ああ、でも、それを知らなければ、相手の気持ちは純粋に私を思っての物だと、ぐっとさらに言い募りそうになってしまった口を閉じ、呼吸を落ち着かせるように数度深呼吸をする。
「あの、じゃ、えと、どうしよう、ぬいた方がいい?」
 悲しそうな顔になって、あきらかにしょんぼりしてしまった相手に申し訳なさが募る。そんなに言い過ぎなくても良かったな、と。後悔先に立たず。口は災いの元。今の私を表す言葉が脳内をよぎって、泣きそうになる。でもだめ、泣きそうなのは相手の方。どちらかというと今悪い事をしたのは私だから、フォローしなくちゃ。
「ごめん、言い過ぎた。あのね、鉢植えにしたら良いと思うんだ。で、増えすぎないように株の調節をしよう」
「それで、だいじょぶ?」
 明らかにホッとした顔の相手に、自分も少し心が緩む。
「うん、少しずつ増えた分を取って、ハーブティーにしよう。そうすれば美味しく飲めるし増えすぎなくていいかも」
「良かった」
 そうだよ、あんなに言いすぎる必要は無かったじゃん。
「ありがと、ね」
「ううん、ぜんぜん、それより勝手に植えてゴメンね、それと、ありがとう」
「どういたしまして。よし、じゃすぐ植え替えちゃおう」
 さっきまでのイヤな空気は消えて、ふんわりしたいつもの二人に戻る。謝罪と感謝は大切。本当にそう思う。声に出さなくても態度でいいなんて人がたまにいるけど、意味わかんないよね。


 今日は「ペパーミントの日」だそうです。今日は何の日~毎日が記念日~様より。

 ミントさんの繁殖力の凄さは、少しでもお庭系をいじったことのある人なら聞いた事のある話ではないでしょうか?あとは、ドクダミもですね。いつの間にかどこかからやってきて我が家の庭に浸食していました…駆除に苦労した思い出があります。ミント自体は爽やかで素敵なハーブですよね。世の中にはチョコミン党なる方々もおられるくらいですし。ザンネンながら私は少し苦手なのであまり食しませんが、お好きな方が多いとは思っています。少し付け合わせや風味付けには重宝しています。
 お話は、謝罪と感謝、当たり前に身近にあって、でも、どちらも大切なもので、なのに軽視されがちなもの、かなぁと。
 一言、ありがとうと言ってもらえたらかなり変わるのに、という場面、よくある気がするんですよね。態度でわかるとかではなく、きちんと口に出していう事が大事じゃないですか。
 なるべく、明確にわかるように、感謝を告げるというのは大事だな、と思っています。

小説を書く力になります、ありがとうございます!トイ達を気に入ってくださると嬉しいです✨