【短編小説】国際ヨガの日

　ぐにーっと曲がって、くにゃりとひねって、ぐぐぐーっと筋肉を伸ばす。

　どうなってんの？？？

　お手本を見せてくれる先生の体はくにゃくにゃでこんにゃくみたい。どうやったらあんなに曲がるの？少なくとも膝を曲げた状態で床に触るどころか15cmはあいだがある私には到底無理な気がする。

「あのね、無理して曲げるもんじゃないのよ。アレに近い体勢になって、伸ばしたい部位を伸ばしたり、普段使わないところを動かしたり、老廃物を流したりするのが目的なの。出来るところまででいいのよ」

　先生が次々にポーズを変えていくのを呆気にとられて見るばかりになってしまった私に、隣でポージングしていた友人が突っ込んだ。私を今日ここへ連れてきてくれたのは彼女であり、週一でこのヨガ教室に通っている常連さんである。

「そうなんだけどさぁ……ええー、あんなふうに曲がるの…？？」

「あたしだって前はあんたくらい硬かったよ」

「うっそだぁ」

「ほんとだって」

　軽々と床に指先をつける彼女が私とおんなじだったなんて想像もつかない。

「慣れと継続の結果ね」

　なるほど…と頷いては見せたものの、私には一番遠い言葉かもしれない継続という言葉に、早くもげんなりしてしまっている。

「あとはー…目標次第じゃない？」

　ニヤニヤとこちらをからかう気満々な顔をして言われ、言葉を詰まらせた。

　ああぁぁ…言うんじゃなかった。いやでも話したからこそここに連れてきてもらったわけで。

「頑張れ、ダイエット」

「ハイ」

　標準体型、ややぽっちゃり気味の私にも、好きな人がおりまして。

　そのひとは、スタイルとか容姿とかにこだわる人ではない、と思うから、別にダイエットする必要はないんだけど。

　でもじゃあ、なんでダイエットしようと思ったかって言うと……端的に言えば自分に自信を持ちたかったから。

　小さい頃からずっと、標準から少しぽっちゃりを維持してきて、顔も普通。どちらかと言うとあんまり可愛くない方。ぺちゃ鼻をなんとかしたいけどこればっかりはどうしようもない。

　そこにきてあまり強く言えない性格も相まって、雑用を押し付けられる事はまあもはや目くじらを立ててもなぁという状態。

　それでも、好きな人の目には可愛く映りたいという乙女心は捨てられなかった。

　同僚の中でも一番仲良くしてくれてる彼女に相談したら、じゃあ一緒にヨガやろう！と手を取られてしまった。びっくりしてモタモタしているうちに、あれよあれよと日時が決められて今日に至る。

　やや強引に連れてこられたとはいえ、痩せたいのは勿論だし、効果があるなら頑張りたい。現に隣の彼女はとってもスタイルが良くて、お化粧も上手で自信に満ち溢れてる。何度かすっぴんを見せてもらったこともあるけど、お化粧って凄い…とびっくりした位だったから、そのうちそちらの技術も習う予定。

「……うん、頑張ろうかな」

　ぐぐぐーっと腕をのばして、お手本の先生に近づけるように腰を曲げる。

　まだまだ始めたばっかりで、この先どうなるかはわかんないけど。それでも、今とは変わるに違いない。

　いや、変わってみせる！と鼻息荒く意気込んでいたら、隣からその意気よ！と強めに背中を叩かれた。痛いって〜と軽口をたたきつつ、入れてもらった気合を逃さぬように体を動かす。

　いつか、頑張った先の未来で自信を手に入れて、叶わなくとも、この想いを伝えるために。

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　本日は「国際ヨガの日」だそうです。こちらの今日は何の日・明日は何の日、雑学ネタ帳様より。

今日は何の日・明日は何の日 | 雑学ネタ帳

　実は私はヨガをやったことないんですよね。なのでイメージと、あとはぱぱっと簡単に調べただけで書いているので、違う部分があったらすみません。
　ダイエットにもよいとあったので、こんなお話にしました。
　誰しも自分に自信を持ちたいと思う心が少なからずあるのではないでしょうか。これが出来る、という自信であったり、私はこういう信念を持っていますという揺るぎない心であったり。自分にとっての寄す処とでも言いましょうか。私の場合は…なんだろう、多少なりとも文を書いているぞ、というところ、かな？あとはご飯やらお菓子やら編み物やら…世間一般のお母さんと同じものしか出来ないので。
　寄す処があるのとないのとでは、思い切った行動をするかどうかにも関わってくるのかなと。告白であったり転職であったり引っ越しであったり…人生が大きく変わりそうな行動をするには、それをしてもなんとかなるという心があるからこそ踏み出していける原動力になるのではと思いました。作中のお嬢さんはきっとこの先ヨガを頑張って自信をつけて、どちらに転ぶにせよ告白し、その後を受け入れられるようになっていくと思います。（作者としてはハッピーエンドです）
　私も自信をつけるべく…記念日小説を続けていこうと思います。