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2023.04.02 LaLiga第27節 レアル・マドリーvsバジャドリード

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
前節の失意のクラシコから代表ウィークを挟んで久しぶりのLaLiga。
前回対戦では2-0で勝利を収めたバジャドリードとの試合を振り返り。

以下、スタメン。

両チームのスターティングメンバー

ナチョがサスペンション、メンディー、リュディガーを負傷で欠き、なかなか揃わないバックラインを今日も元気にカマヴィンガが埋める構図
アセンシオを右SHに起用し、ロドリゴをトップ下に据えた4-2-3-1でこの試合に臨む。
一方のバジャドリードは前回対戦時とは違い、フレスネダを右HVに置く5-3-2のような形。
このシステム変更が吉と出るか凶と出るか。

・試合内容


・カマヴィンガ×アラバ×クロース

現スカッドにおいて、ボール保持のヒエラルキー最上位として君臨し、ビルドアップへ与える影響力の最も高い選手がクロースであることはご存知の通り。
そのような特徴的かつ確固たる軸があるマドリーのビルド構築において、この試合でプラスαとして大きく寄与したのが左SBを務めたカマヴィンガと怪我から復帰したアラバである。

前半2分に早速見せた形がこちら。

前半2分の自陣でのプレス回避概略図

メカニズムの発端はクロースがCB間に降りて擬似的な3バックを作るサリーダ・ラボルピアーナでボールを受ける動き。
そしてその動きに呼応するようにアラバが左サイドへ開きつつ、横幅の担保と展開の中継点となる。
このアラバの動きにより、プラタがアラバをケアするために少し外側に立ち位置がズレていく
バジャドリードの前線プレス隊の間隔が広がったタイミングに合わせ、カマヴィンガが内側のボランチ位置へ入り、アラバの開けた中央コースからクロースのパスを引き出す
この一連の動きでバジャドリードの第一プレスラインを突破して見せた。

ドブレ・ピボーテ採用に付随するネガティブな効果として挙げられるのが、普段の自由度高めの3センターに比べて、2枚の中盤は比較的静的になり、相手からすればプレス隊をはめ込みやすく的が絞りやすいこと。
そんな中、左SBカマヴィンガの加勢で後ろ3人・前2人のビルドアップ構図(3-2ビルド)を上手く人を入れ替えつつ効果的に構築できたのはSB、ボランチ、IHの位置をシームレスに繋げるカマヴィンガと、単純に左SB位置でも対応可能なアラバを同時採用できた効果であろう。

この形以外にも通常通り、クロースがSBとCBの間に降りる形からカマヴィンガがインバートを行う形や、アラバがカマヴィンガへ預けた後そのまま上がっていってミリトンへの展開横パスコース空け等、左サイドの動きの自由度とプレス回避性能はかなり高かった。
個人的には“カマヴィンガの左SBによってクロースが活かされ、アラバの左SB位置経験によってカマヴィンガも解放されている“と感じた程、この3人が揃った左後方ユニットは完成形に近いものに感じた。


・狙いは3バックと3センターの前ベクトル

バジャドリードの守備メカニズムを紐解くと、初期配置は基本的に後ろの人数を多め、そしてそこからボールホルダーと同レーンの選手を押し上げることで対面の選手を迎撃しにいくことがベース。

しかし、これを逆手に取れるのが球蹴り激うま集団マドリーである。
前半31分のマドリー3点目となるベンゼマの得点シーン。

マドリー3点目に繋がるシーン

クロースが後方でボールを握り、ベンゼマが降りてくる。
これにより、同レーンにいたアンカーのホングラを釣り出し、ゴール前をプロテクトできる位置から剥がす。
その後、同じく降りてきたロドリゴにパスを預け、ベンゼマ自身は前進。
こちらでも左ハーフレーンでロドリゴが降りることによって右HVのフレスネダを引っ張り出す。
これによってできた左HSに横流れしてロドリゴからの縦パスをヴィニシウスが引き出し、前進してきたベンゼマの壁となってパスを落とす。
再びボールを受けたベンゼマがカットインしながらカバーに来たCB2人を手玉に取り、見事なフィニッシュ。

3バックの迎撃意識の高さと3センターの後ろ向きの守備意識の低さが共に顕在化しているように見えたため、おそらく後方からの押し出しによってチームとしての重心はあくまでも高めに設定し、ゴール前から遠い位置での守備を完遂したかったのであろう。
しかし、結局ライン間管理の甘さと、遂行し続ける集中力にも限界があり、そこをマドリー前線の4枚が上手く利用できたことがこの火力を引き出すことができた大きな要因だと個人的に感じた。


・ライン間を突けるダブルトップ下システム

この試合で特徴的な起用と言えるのが、ロドリゴとアセンシオの同時起用。
試合前もどちらが右WGに入るのか、アセンシオがIHとして振る舞うのか、はたまた4-2-3-1で片方をトップ下位置に置くのかといった推測で盛り上がっていた。
試合がキックオフし、蓋を開けてみるとシステム自体は4-2-3-1。
しかし、トップ下位置は明確に決まりがなく、アセンシオとロドリゴが共有する形となった。

上述の前ベクトルへの迎撃守備とライン間管理の甘さにより、この2人のトップ下が躍動する環境は整っていた。
それがまたも得点に結びつく。
前半35分、ベンゼマのボレーでハットトリックを記録したマドリーの4点目。

マドリー4点目に繋がるシーン

チュアメニがベンゼマへ縦パスを通す。
この時のベンゼマは中央レーンで降りながらレイオフの的となり、前向きのアセンシオにボールを預けつつ、ホアキンを釣り出し中央レーンに大きなスペースを創出。
両HVはブラジル人コンビの脅威でピン留め、両WBは高めの位置でマドリーのSBを見ていたため、中央をカバーする選手も少なかった。
そのような状況下でアセンシオが持ち前のキャリー能力でゴール前まで運びつつ右サイドのロドリゴに展開。
ロドリゴのクロスに合わせてベンゼマが見事なボレーを叩き込み、ハットトリック達成。

このシーンのように、タイミングを合わせて低めの位置でボールプレーに関与するベンゼマと中央にできたスペースをアセンシオが前向きで活用するプレーは前半31分にも見せており、チームとして明らかに狙っている形であることは見受けられた。

前向きでボールを持った時のアセンシオの良さは、直近だとマドリードダービー等でも見せていた印象。
そして、そのような状況を如何に構築するのが良いかという問いに対して、ベンゼマと両WGのブラジル人が1つの解答を出した結果がこのシーンにも繋がった。
アセンシオが右サイドでプレーし、ロドリゴが中央〜左ハーフレーンへ移動する動きもシームレスであり、上手くバランスを取りつつプレーエリアを共有できたこともこのシステムが上手くいった理由の1つ。

攻撃のスイッチを入れたチュアメニもこの試合は出色の出来で、中央レーンを破壊するためにこのエリアに番人を置くことができたことも素早いショートカウンター移行に大きく寄与していた。


・途中出場選手の雑感

序盤で大量得点を奪い、コパのクラシコを控える背景もあり、この試合は普段出場機会が与えられてない選手が続々と出場する試合となった。

そのため、このせっかくの機会に途中出場選手3人の雑感をそれぞれ書いていこう。

・アザール
後半65分にベンゼマと交代で出場。そのままCFの位置に。
投入されたばかりの時は、トラップが少しおぼつかないプレーも見られたが、前向きでボールを運び被ファールを誘発するというプレーも見せた。
アディショナルタイムにはバスケスのゴールもお膳立て。
しかし、キレや破壊的なドリブル、シュートなど、思い描いていた青写真との乖離はまだまだ大きすぎるままだ。

・バジェホ
後半69分にアラバと交代。そのまま左CB位置に。
試合展開もあり、バジャドリードの終盤の出方に一切の覇気がなかったという状況下ではあったが、特に危ないシーンは無し。
ボールも無難に近くのクロースなどに預けるなど無駄な色気を出さないところは好印象。
対強豪でも抜け目ない対応ができるか、フィジカル的に少し物足りない部分を補える武器を身につけられるか、そして“ナチョになれるか“といったところは見守っていきたい。

・オドリオソラ
後半82分にロドリゴと交代。謎に交代直後は左SB位置に入っていたが、すぐに逆サイドの右SBの位置へ。なんだったんだ。
それに伴い、バスケスを右WGへ押し出す。
アンダーラップでボックス内に入ってきたり、85分には大外でセバージョスからのサイドチェンジをダイレクトで右HSに流し、アザールのバスケスのシュートシーンを演出したりするなど、一定の効力は発揮。
87分にも高い位置でファールを誘発するなど、オフェンス面では何かやってやろうという気概が見えた。
「カルバハルとバスケスしかいない右ラテラルは補強ポジション!」という意見が世間で飛び交う中で、完全にチームの一員としてカウントされてなさそうなのが悲しいポイント。
見返して欲しい。

・まとめ

従前通りのバルベルデではなく、アセンシオを起用した新規軸の4-2-3-1で6-0という大爆発を残せたことは素晴らしい結果と言っていいのではないか。
バジャドリードのライン間管理や、度重なる失点に対する反発心の見えなさによるところもかなり大きいとは思うが、自分達の出来ること、得意なことを掛け合わせて結果に結びつけたことはとてもポジティブ。

前線4人の火力は言わずもがな、加えてドブレ・ピボーテの活躍も見逃せない。
クロースは少々自分の中のペース管理を大事にしているようには見受けられたが、相変わらず保持でタクトを振るい続け、カマヴィンガ、アラバ、相方のチュアメニとの関係性も良好であった。
そして、チュアメニ。
幾度となくボールを刈り取り続け、奪ったら前線に素早くボールをつけるなど、試合のテンポ感を全く崩さなかった。
機を見たボールキャリーや、裏へのアタックなど、攻撃にアクセントをつける役割としても大きく機能。
この試合のチュアメニのパフォーマンスが騒がれてないのがおかしいレベル。
(何回ビッグマッチでチュアメニを先発で使えと言えば...。)

停滞気味のLaLigaの中で、これから控える各コンペティションの大一番に向けて大きな光を掴んだ試合となった。

・おわりに

記事を書くのが遅すぎるせいで既にコパはバルセロナを突破しているし、次節のビジャレアル戦も戦い抜いている。
それらの試合を踏まえて改めて考えてみると、クラシコの勝利にこの試合を6-0で終わらせたことは少なからず好影響だったのかなぁと。
(ビジャレアル戦は...まぁ...。)

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。今のところLaLiga全試合レビューするつもりではいます。多分。

それでは!

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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