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2023.04.23 LaLiga第30節 レアル・マドリーvsセルタ

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
CLベスト4行きの切符を手に入れ、道すがら怒涛のLaLiga過密日程を走り抜ける中、その入り口となる試合。
最近よく名前を聞くあの選手がいるセルタとの一戦を振り返る。

以下、スタメン。

両チームのスターティングメンバー

中盤のトリオは前節からそのまま継続。
今日も今日とてボロボロのバックラインをナチョとカマヴィンガが支える構図に。
絶好調アセンシオにかかる期待も日に日に大きくなる。
対するセルタは4-4-2、ボロボロのバックラインはアウェイチームも同じ。
エイドゥーやミンゲサが負傷離脱しており、前回対戦時に対応に苦しんだ右SBマジョもサスペンション。
苦しい台所事情をタピアのCB起用で乗り切る。
そして、注目は24番のガブリ・ベイガ。
マドリーからの関心が噂される20歳の俊英はどんなパフォーマンスを見せるか。

・試合内容

・撤退のセルタ、ハイプレスのマドリー、両者の狙い所

セルタ、リアリスティックな守備を敢行。
積極的なプレッシングというよりは、ミドルゾーンへの侵入をプレス始動のトリガーにし、4-4-2で待ち構えて奪ったらカウンターを狙いたいという意図を感じた序盤。

カウンター以外の保持局面に目を移した時、セルタが主に前進方法として採用していたのが、「低めの位置のSHを基準点にしてできた前方のスペースへ周りの選手が斜めに飛び出す」というメカニズム。
特にアスパスとベイガという攻撃の核になる選手がいる右サイドはその傾向が顕著。
反対の左サイドはデ・ラ・トーレがインサイド気味のポジショニングを好むこともあり、大外はハビ・ガランのオーバーラップを促す形となるアシンメトリー配置。
本職ではない(これいつまで言ってていいんだろう)左SBカマヴィンガの裏を狙う、そしてバルベルデに比べると大外の守備力を担保できないアセンシオが右WGを担っていたサイドにSBをオーバラップさせるという意図は理に適っているように感じた。

セルタの敵陣での保持局面概略図

一方のマドリーは前からのプレッシングを敢行。
中盤の構成がバルベルデ-チュアメニ-セバージョスという運動量を武器に闘える選手が並んでいたこともあり、選手の可動範囲を活かして前から圧力をかける。
このハイプレスでセルタに余裕を持った保持を許さないこと、テクニカルな中盤〜前線の選手へのボール供給を阻害することを意識しているように見えた。

この日のマドリーの保持→前進フェーズはそこまで苦労していなかった印象。
セルタの中盤センターがベイガとベルトランの2枚になる分、少しフィルター性能に難しい部分があったのかもしれない。
特に中盤に+1できるカマヴィンガや、左サイドを動き回るセバージョスの対応には手を焼いており、左サイドにできる優位性を上手く活かしてマドリーは攻撃を組み立てることができていた。


・起点を左サイドに置いて押し付けるヴィニシウスの質的優位

上述の保持フェーズで左サイドをメインに前進させ、ボールの帰着点となるのがヴィニシウス。
前半41分に奪った1点目は、その前進を担ったカマヴィンガとセバージョス、そしてヴィニシウスの素晴らしい個人戦術が発現したことで生まれた良いゴール。

マドリー1点目のシーン

セルタのカウンターを自陣ボックス手前でカマヴィンガが食い止め、そのまま運んで今度はマドリーがカウンター発動。
バルベルデ→セバージョスと繋ぎ、セバージョスがルックアップ。
時を同じくして、ヴィニシウスは一度降りて受ける動きを見せた後、前方に急加速する完璧なオフザボールの動きでマーカーのK・バスケスを引き剥がす。
セバージョスから完璧なスルーパスが通り、ドリブルでボックス内へ侵入したヴィニシウスはしっかり中の状況を覗きつつ、味方がゴール前に走り込む時間を稼ぐ。
走り込んできたアセンシオへマイナスクロスを届けて素晴らしいアシストを記録。(得点したアセンシオも見事なシュートだった。)

今季セバージョスとヴィニシウスが組むと、このようなミドル〜ロングスルーパスで一気に局面を打開するプレーが多く観測でき、この試合では数字にも繋がった良シーン。

後半60分にもカマヴィンガ-セバージョス-ヴィニシウスのラインでチャンスを創出。

後半60分のチャンスシーン

カマヴィンガが後方でボールを保持。
この時ヴィニシウスとセバージョスのポジショニングが肝となる。

①ヴィニシウス
低い位置まで降りてきてボールを受ける素振りを見せることで、マーカーのK・バスケスを引き摺り出す。
これは皮肉にもセルタが行なっていたSH(WG)が降りることでその前方に大きなスペースを作るアプローチに似ている。

②セバージョス
相手の最終ライン付近へポジションを上げることで、ベイガの監視から逃れる+CBタピアがヴィニシウスへカバーに行くことを牽制する効果を生み出す。
その高めの位置で少し外側に流れて顔出しすることでカマヴィンガから縦パスを引き出す。

この2人の位置取りと動きは効果的な相互作用を生み、スペースメイクと前進を両立
快速を飛ばし、大外のオーバラップから前向きにボールを受けてサイドを抉り込むヴィニシウス。
セバージョスがタピアの視線を集めていたことにより、カバーも遅らせていたこともgood。
クロスはベンゼマの頭に合ったものの、ゴールならず。
しかし、ブロックを組んだ相手に対する打開アプローチとして完璧な形。

このようにマドリー最大の武器であるヴィニシウスを全面に押し出すことで、セルタに脅威を与え続けることができていたのは好印象。


・傑出のカマヴィンガ

この試合で特筆すべき出来だったのが、カマヴィンガ。
基本的にマドリーはヴィニシウスの存在や指揮者タイプのMFを左側に置く傾向から左サイドからの攻撃が多くなる。
その中で、この試合に関して最も大きな影響を与えていたのがカマヴィンガだと個人的には思う。
マドリーとは反対にセルタが右サイドから攻撃を組み立てることをメインとしていた上で、カマヴィンガが終始相手を圧倒できたことは攻守両面で意味を持つ。
省スペースで自分の間合いに持ち込むことができれば、圧倒的なアドバンテージであるリーチの長さを活かした対人守備でボールを奪取。
そのまま同レーンのセバージョスがボールを引き取ってくれる形も機能的であり、左サイドの攻撃の始点としてこの試合の鍵を握っていた。

保持でも機を見てボランチの位置まで上がってビルドアップを補助。
そもそも本職なのでこちらのプレーは言わずもがなである。
動的なセバージョスと組む時、静的なクロースと組む時、どちらのシチュエーションでもこの動きによってマドリーの保持に新たな価値を生み出し貢献し続けているのが今季最大のサプライズと言ってもいいかもしれないカマヴィンガ左SBである。

後半76分にバスケスを投入した後は中盤の一角としてプレー。
このユーティリティ性に今季後半戦は何度助けられたことか...。
巷ではカマヴィンガをどこのポジションで育てていくかと言った話題が定期的に世間を賑わせているが(僕が見てるのはほぼインターネットの世界だけですけど)、マドリーにいる20歳の俊英からは今後も目が離せない。


・ガブリ・ベイガの雑感(4/23時点)

せっかくなので、ここ最近獲得の噂が流れているガブリ・ベイガの個人的な感想を置いて本項を終えようと思う。

まず雑に一言でまとめてしまうと、「ゴールへの道筋を意識したプレーができる選手」
実際この試合のファーストシュートを記録したのはベイガであり、ブロック構築→カウンターのスイッチとなる縦パスを何度か通していたのも彼。
ボールキャリーも上手く、チームとして前に進みたい時に居てほしいプレーを繰り返していた。
特にこの日は非保持の時間が長くなった分、この特徴はセルタにとってありがたい存在だったのかなと。

ボックス内への侵入もサボらず、後半52分のシーンのようにクロスからファーで浮くという嗅覚も持ち合わせていた。
中盤の選手がボックスに飛び込まない問題を抱えるマドリーからしたら嬉しい要素なのかもしれない。

何か懸念点を挙げるとすれば、90分を通した影響力とスタミナ、そして強度の部分か。
この試合では後半62分にピッチを退いたが、90分を通して強度と効果的なプレーを続けられる選手なのかはまだ疑問符。
特にリーガの外に出た時、身体的なタフさが求められるシチュエーションで何ができるかも未知数。
踏ん張りに行くタイプか、それとも圧倒的な技術で躱し続けるのか。
マドリー相手に守備に追われる展開ではなく、セルタがボールを握ることができる試合でもっと観てみたいとも感じた。

総じて、20歳という年齢で完成度の高い良い選手だな〜と。

あ、あとキックレンジと精度ももっと見てみたい。

・まとめ

セルタの狙いとマドリーの狙いががっちり噛み合い、優位性を持って試合を進めることができた。
右サイドの強みを潰し、左サイドのユニット効力を押し付けるプレーが効果を発揮。
これまでのメンディ-クロースとは違ったカマヴィンガ-セバージョスの2人がこの良い影響を生み出しているのは好材料。

ヴィニシウスの存在感は日に日に増しており、逆サイドに目を移してもこの日1G1Aでチームの勝利に大貢献したアセンシオは言わずもがな。
特にセットプレーでアセンシオのキック精度を活かすことができた意味は大きくそもそも左利きが少ないマドリーにおいてキッカーの択が増えるのは良いことでしかない。

守備面でもちらほら選手が毎回抜けている中でクリーンシートを継続。
クルトワを中心とした固い守備をベースに、SBのバランス感覚も上手く調整しつつ、チームとして苦しい状況を回し続けている地力の強さは流石。
ナチョとカマヴィンガには多めに給料をあげてほしい。

怒涛の日程はまだ始まったばかり。
この勝利を積み重ねて継続していけるか。

・おわりに

直近4試合連続で2-0勝利を収めたらしい。
今季序盤いちいち失点してたのが懐かしい出来事のように感じる。

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。今のところLaLiga全試合レビューするつもりではいます。多分。

それでは!

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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