[読んだ本]月の裏側 クロード・レヴィ=ストロース

月の裏側 日本文化への視覚 クロード・レヴィ=ストロース 川田順造訳 2014年 中央公論新社

 客観的な、研究者としての視点というよりは、日本への憧れを持ち、すこし暴走しているような気配さえ感じるレヴィ=ストロースの講演、対談等をまとめた一冊。
 著者は、日本はフランスが辿ってきたように「革命」を経たのではなく、「復古」によって近代に入ったために伝統的諸価値は破壊を免れたといっている。自分たちの根源を、もう戻れない彼岸のように感じる筆者には、日本の神話や風土が現代になった今もいまだに息づいていることに心を動かされているようである。
 たしかに、短時間の急激な近代化により、それまでの時代の文化が現代まで共存して残っている感じはある。しかし、急激な変化のために、日本人の身体は息切れしているような気もする。日本(人)の、どちらかをとってどちらかを捨てるやり方のではなく、両方ともを共存させるところを著者も評価しているが、閉じられた世界のスタンダードと、開かれて流れていく、規模が桁違いの広さの世界のスタンダードが出会う時、その広く勢いのある濁流に飲み込まれてしまうのではないだろうか。コーヒーと牛乳を混ぜたらコーヒー牛乳になる。しかしどちらかの分量が極端に多い時、それは何になるのか。

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