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白の国

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#試し読み

【立ち読み】透明な境界

【立ち読み】透明な境界

(中略) 

鳥の羽ばたきとせせらぎが聞こえる。まぶたの裏でも、ぼんやりとした光が、自分を包んでいる事がわかる。底のない安心感に身を任せ、蓮城珠華は思いまぶたを開けた。白いベットの上、部屋の充満する光は遠い記憶の中で眩く差し込む日の光より白い。家具を含めて白で統一されているせいで、まだ微睡の中にいるような気持ちになる。
 唯一と言っていいほど、色があるのは一方の壁の大半を占める窓だけだった。大きな

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