雪祭り営業補遺

「お疲れ様でした。××町観光招客課の奥田です」
「ありがとうございました」
 この人も駅までの車に乗ってきた。
「いやー、本当にこの町にお笑い芸人さんに来ていただけるとは思っていませんでしたから、本当に良かったです」
「ありがとうございます」
「ねえ、落語家さんも、初めて見た人多かったんじゃないかと思います。で、いかがでしたかね」
 3人の毛穴から「何が!?」という空気が出た。
「そうですね、雪深いところとは伺っておりましたが、これほどとは」
 志っとこさんが無難なところを攻めた。
「ああ。反応はいかがでしたか? なかなかこういう時に笑うのが苦手な町でして」
 戸田が目を瞑った。これはダメだ。
「そうですね、それぞれの反応は分からなくても、会場全体の雰囲気は伝わってきました」
 せめて、かまくらの入り口がステージを向いていてくれ、というのは必死に飲み込んだ。
「いやー、そう言っていただけて。ありがとうございます」

clerk/係員

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?