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おばさん呼ばわりに抗議しない上川大臣を責めないで

あ、また言われてる、と思いました。

2024年2月28日付の朝日新聞が、上川陽子外務大臣が最近の世論調査で「次の首相にふさわしい人」リストの上位に上がってきていることを記事にしています。

「毎日新聞の2月の調査では、上川氏は石破茂元幹事長に次ぐ2位。テレビ朝日やTBS、産経新聞・FNNの調査では、石破氏、小泉進次郎元環境相に次ぐ3位で、河野太郎デジタル相を上回った」・・・永田町関係者の間で評判となった。」

記事はそのあと、衆院に当選7回の70歳という上川大臣の経歴に触れ、昨年、女性として19年ぶりの外相に就任以来、「積極的な国際外交を行っている」と紹介。政治の裏金問題に揺れる政界で刷新感があると期待される一方、自分なりのルールにこだわりすぎという評もあるらしい。

そして、上川さんが外相になれたのは麻生太郎副総裁が推したかららしいけれども、その麻生さんが今年1月、地元の講演で上川さんを「おばさん」よばわりして各方面から批判が殺到。上川さん本人は怒りも抗議もせず、その対応にも賛否両論が・・・という、すっかりおなじみになった話が続きます。

また言われちゃったというのはこのことです。

世論調査で首相になってほしいと思う人が急増するほど注目を集めている政治家です。本人は困惑していると記事にはありますが、今後も手腕を発揮するならば、メディア露出もますます増えるでしょう。そしてその度に、麻生さんの推しで外務大臣になれたということと、その麻生さんに人前で間違った名前で呼ばれたり、失礼きわまりないことを言われたと記事に書かれ続けるのではないでしょうか。

この麻生発言を批判しなかった上川さんに対しての評価は下記のようなことと思われます。

賛:全体的には彼女のことをほめる内容だったし、軽口が多い失言王の麻生さんの言うことを真に受けて怒ったりせず、聞き流したのは大人の対応。冗談にいちいち目くじら立てるのは大人気ないしね。

否:女性が職場などで差別や侮辱にさらされながら「大人の対応」を求められて我慢し受け流すよう強いられてきた、そのことへの反省が起きているこの時代に、大臣というリーダー的立場の彼女がこんな「わきまえた」女性を演じるのは残念。そういう女性でないと政治家として成功できないというメッセージになってしまう。

私も残念です。が、「その発言、不適切です、抗議します」と上川さんが言わないことを「なぜ言わない」と責める気にもなれません。

発言のオーディオを聞くと、麻生さんは、(自分が推した女性が)「なかなかよくやってる」と自慢したかったようです。そして、彼にとって、女性のことを語る時に、容姿に触れるのはまるで空気を吸うように自然なことで、言わずにいられないのだという印象を受けました。外交実績については一言もなく、英語を話して自分でアポ取りすることをあげて「なかなかやる」と言ったのにも驚きます。それが外務大臣を評価するポイントとは。

麻生さんのことばも口調も品がないし、怒ったところで反省もしないだろうし、相手にする気にもなれないのかもしれません。麻生さんの推しで外務大臣になれたと自分でも思っているのなら、なおのこと、問題視したくない気持ちもわかります。

でもそれ以上に、私は上川さんが傷ついたんじゃないかなと思うのです。

法務大臣も歴任し、7回も衆院議員に当選している女性でもーーどんなにパワーがあり尊敬されていても、大勢の前で容姿をけなされ、それが何度もメディアで繰り返されることに傷つかない人がいるでしょうか。

私は中学生のとき、席替えで隣の席になった男子に、大声で「美人の隣がよかったのにお前かよ」と言われたことをはっきり憶えています。私はそのとき、周りのみんなと一緒に声をあげて笑いました。びっくりし、ショックも受けたし恥ずかしくて、しかもそんな気持ちになっていることを教室にいた誰にも悟られまいと必死でした。大臣と一般人のティーンエイジャー時代を比べるなと言われそうですが、「麻生発言」を知って最初に思ったのは何十年も前のその自分の姿でした。中学以降も、私は、学校や職場で、飲み会の席で、地下鉄に乗っているときや道を歩いているときにも、顔のことや身体のことを、中年になってからは年齢のことを言われてきました。年とともに、受け流し、気にしないようにすることはうまくなってきたかもしれませんが、やっぱり嫌です。こういうことを、ほとんどの女性(そしておそらく男性も)が経験しているのではないでしょうか。麻生発言に批判が殺到したのは「このご時世にありえない」ということ以外に、多くの人が心にしまっている、人前で容姿をあげつらわれたときのショックや不愉快さ、受け流すべきだというプレッシャーや理不尽な恥ずかしさなどを思い起こさせたからのような気がします。

麻生さんは発言を不適切だったと認めたし、「もう撤回したんだからいいだろ」と思っているかもしれません。でも言ったことがこれだけ広まり、これからも報道され続けるのを止められないのだから、「撤回」することに意味がないのは明らかです。そんな言葉でごまかさず、謝罪するべきではないのでしょうか。

もしまだ上川さんに謝っていないなら、「もし不快に感じた方がいるのなら」といった変な条件付きの決まり文句ではなく、心から「あなたが活躍していることを強調するつもりが、笑いを取ろうとして口が滑った。あんなこと言うべきじゃなかった。ごめんなさい」と言ってほしいです。

トップの画像は、生成AIに「一般的な女性政治家のイメージを水彩調で」とお願いして描いてもらったものです。(ヘアバンド?真珠のネックレス?一昔前のヒラリー・クリントンのイメージでしょうか・・・・?)


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