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『彗星書架』第3号 〜サラリーマン〜 レビュー①

BL俳句ネプリ『彗星書架』vol.3が、10月9日(月)にリリースとなりました。テーマは「サラリーマン」。
8月末に行ったBL連作句会での7人の5句作品です。
選に悩んだ句会を思い出しつつ、簡単な評を書いてみようと思います。

(注)皆さんにネプリを手に取っていただきたいので、あまり句を引くことはしませんが、ネタバレを避けたい方はネプリ印刷後に当記事をお読みいただくことをオススメします。
また鑑賞はすべて私の主観(ときどき妄想)によるものであることをあらかじめご了承ください。

『ミュート』 松本てふこ

冒頭の句から数詞の入った4句が並ぶ。
それによって、ページをめくっていくような、一句ごとの場面の移り変わりを意識的に味わえるような仕掛けになっている。巧み。
一服の離席、会議と、ここまでは落ち着いた筆致。サラリーマン、というか大人の落ち着きを感じさせる。
ところが次の句で一転。えっ、何やっちゃってんの?!そんなところで…!
社内恋愛というだけでも胸が高鳴るのに、いや大胆にもそんなところで?(リフレイン)
残業時間に至ってさらに大胆になった2人は、いっそう密やかに互いを確かめあっている、多分。
しかし残業中のリモート会議をミュートにしそびれるという痛恨のミス。なんてドジっ子!
古風に「あはれ」とか言っちゃってクールに取り繕ったところで、その声がね。洩れちゃってるわけよ。
明日からこの2人、どうなっちゃうんでしょう。
大人な雰囲気を装いながら、社内の風紀乱しまくりに転じていくこの感じ、繰り返し味わいたい。

『好きな人』 みやさと

深く愛するほど、相手を汚したくなる。熱に浮かされたように、爛れた繋がりを切望してしまう。
夏の終わりをいろんな意味で象徴的に描いた一句目から、愛憎さだまらぬドラマの幕開けを期待させる。
「きれいはきたない」。そんなフレーズが浮かぶ。
しかし、つのる衝動をよそに、相手はあくまで涼やか。え、そんなことしちゃう?てくらいの好人物で、この優しさ描写が大変にグッと来る。
でもね、そんな良い人が放っておかれるわけないのよ。
ライバルの出現で、事態と衝動は一気に加速。
まどろっこしいその口は、もう塞いでやるしかない。(なんという暴力的な…)
うっわ、うっわ。
嵐のような瞬間、それから広がる甘美なひととき。そこを満たす虫の音。
ぷはぁああ。
…あぁ、あの時あんなこともあったね、的な掉尾の句が、また憎い。
この展開、何度も味わいたい。

さて彗星書架の全7作品、残りは5つ。
続きはまた今度。ではでは。

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