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異界にまつわるスケッチ

銀の雨降る世界樹にふらここに

ぱらいその柱は閉じて嶺青し

オノゴロの風に早苗田また濁る

馬鈴薯の花伸びして姫を覚めてゆく

悉達多の視野のつぶらに桑いちご

蜥蜴まじなひ過去は川原に帰らざる

爻尽きて沈む魚に半夏雨

山滴る玄牝へ身を軽くせむ

ボルヘスの書棚を薙いで青嵐

仙骨の失せて西日の影影影

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ネプリ「はるのもりばん」より、諸星大二郎特集のためのゲスト参加を提案された私は、一も二もなく快諾した。
なにせ敬愛する諸星大二郎先生の二次創作である。
その愛を表現するまたとない機会だと思った。

しかし、考えが甘かった。
そもそも作品愛を語ったところでそれは二次創作句でも何でもないし、オリジナル作品の一部を切り取って句材にしても、私の力量では劣化版にしかならない。
諸星作品の世界を再構築しようにも、やはり如何ともし難いイマジネーションと構成力、表現力の至らなさがそれを阻む。
結局は原典に立ち戻り、再びかの素晴らしい作品群に没入するしか術がなかった。

不思議なもので、作品世界にどっぷり浸かり、我に帰って少し経つと、自然と句が湧いてくる。
それらは諸星世界をなぞりながら、たぶんその地続きの外縁としての俳句なのかもしれない。
願わくはそれが、ほんの少しでも諸星先生と視野を分かち合ったものであってほしい。
そんな極めて不遜かつ畏れ多い感興とともに、生まれた句を絞って「はるのもりばん」に寄稿した。
本稿の句は、その自選に漏れた次点句である。

諸星大二郎って誰?という方へ。
本邦を代表する漫画家で、史上類を見ない創作者である。
私の句について、意味不明で一顧だに値しないと感じられたのなら、それは私の力不足。
でも、もしそうなら諸星作品に触れた際のギャップ、衝撃、感動は、そのぶん巨大なものになるだろう。

ちょっとここでお訊ねしてみたい。
あなたは、
①SFものが好きあるいは宇宙の秘密を覗きたい
②考古学あるいは民俗学の匂いが堪らない
③中国文学あるいは中国活劇ものに目がない
④少女漫画読んでる?毎日飲んでる
⑤古典あるいは漢詩が好物
⑥妖怪マニア
⑦哲学者あるいは思索に生きたい
⑧いきもの大好き!
⑨多摩地域に住んでいる
⑩道に迷ったことがある



あと40くらい挙げたいのだがキリがないのでこのへんで。このうちに一つでも当てはまるようなら、諸星大二郎作品がお口に合うのではないだろうか。
ひとたびその作品に触れた者は、もうその広大な視界の野から、底知れぬ深淵から、手に汗握る活劇から、そして路地裏の異界から、逃れることはできない。
そんな体験を、どなたにもぜひしていただきたいと思うのだ。

ひとまず、ぜひネプリ「はるのもりばん」を味わっていただきたい。
春野温さん、ばんかおりさん、箱森裕美さんの作品は、諸星作品へ誘い、その世界を異なる角度から照らすものになっている。
今回の「はるのもりばん」が、諸星大二郎作品についてたくさんの人と語り合う契機になれば、とても嬉しい。

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