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『彗星書架』第3号 〜サラリーマン〜 レビュー②

10月9日リリースのBL俳句ネプリ『彗星書架』vol.3。サラリーマンがテーマの今作の、ちょっぴり妄想気味レビューその2です。

(注)皆さんにネプリを手に取っていただきたいので、あまり句を引くことはしませんが、ネタバレを避けたい方はネプリ印刷後に当記事をお読みいただくことをオススメします。
また鑑賞はすべて私の主観(ときどき妄想)によるものであることをあらかじめご了承ください。

『連名』 西川火尖

最初の二句で、分かりやすく提示される先輩後輩という関係性。
そして始末書が先輩と連名であることに、内心のほくそ笑みを隠せない後輩。え、そこ?いやナメてんだろ仕事!
そこから公園で花火→先輩の家へ、という流れるような展開。ワァオ。
おそらくは予想どおりの成り行きであるにも関わらず、「ちょ、先輩そのビール…」みたいに取ってつけたような戸惑いを見せてみるあたり、この後輩かなりあざと鬱陶しかわいい。
そんな2人なので、結局はご想像の感じになだれこむわけですが、むっとするような濃密な瞬間を切り取った五句目に、他ならぬ作者のいやらしさが溢れている。危うく季重なりなんだよッ!
ちなみに火尖さんの句は何となくそれと分かるので句会では極力いただかないようにしているのだが、この作品にはいつの間にか点を入れてしまっていた。不覚。
なお、句会でのてふこさんの『連名』評がおもしろすぎるので、どこかで日の目を見てほしい。

『香水』 佐々木紺

冒頭でいきなり「きらひなひと」と言っているあたり、もう今後の展開が楽しみになってしまう。
そしていつしか口喧嘩(たぶん仕事とあんまり関係ない争点での)をする仲になり、やがてはっと再認識してしまうのだ。彼にもまた、肉々しい下の名前があることを。
そして四句目。突如訪れる、タイムリーな停電。漆黒の夜。
待て待て待て待て待て。
……いやむしろ待ってました、ご都合主義のアクシデント。
どこかうら寂しい退廃の色を漂わせる秋の潮は、ひたひたと2人を満たす情動を思わせる。さらには通いあった互いの内面と、その先にある平穏な関係性を予感させてくれる。
いや結局はそんなことどうでもいい。えろい。
最後の句で、互いに関係性を装う演技をする2人。そう、会社という場でintimateになるというのは、ある種の共謀なのである。
でもそうやって守りたい2人の時間があるのだ。
BGMはおおはた雄一の『穏やかなくらし』でお願いします。

さて彗星書架全7作品のレビューも残り2つ。
続きはあるのか?ではでは。

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