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楠本奇蹄
2023年11月30日 10:38
航跡の疼く北窓開くとき息ひとつ置いて絵踏の海ならむ薄明の蝶に私室の濁りかな菜の花にやんはり触れて袖に翳近すぎる柳がみづをさみしくする珈琲の落ちるながさを鳥曇春深むレーズンパンに穴刳ればトレモロはだんだん濡れて藤ましろ呟きに繋がれて鷺ゆふぐれりしんにようのつくづく長き溽暑なる山鳴りをまだ眠らせて花潜褪色のゆたかな暖簾鱧揚がる歯車のやうに夏夜の抱擁は