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A3B3団体戦 二回戦 Kitchie-ファンタ戦振り返り

 第5期指す将順位戦の後夜祭として開催されたA3B3団体戦に参加させてもらいましたので、その対局の振り返りをしたいと思います。

準備と考察

 お相手のファンタさんとは初手合いなので、指す将順位戦の棋譜を拝見したところ、序盤が綺麗な振り飛車党という印象を受けました。

 私が持っているB3組の棋力イメージとして、今回もB3組で出場されているのののさんと1年ほど前に対局経験があり、そのときの記憶が強く残っています。序盤の駒組がかなりしっかりされていて、定跡の勉強量を伺い知れました。しかしその反面、中終盤に複雑な局面に誘導できれば逆転の余地があるという印象も受けました。

 B3でしのぎを削られたファンタさんも上記のイメージに当てはまると仮定するならば、序盤に差をつけられ、わかりやすい展開で終盤に入るような将棋になることが一番危険だと判断し、石田流、ゴキゲン中飛車、ノーマル振り飛車のどのパターンでこられても私は居飛車の対抗系で、なるべくじっくりとした展開にするという方針を決めました。

ルールにより後手番に

 対局のルールとしてB3側に先後を決める権利があるため、事前に連絡したところ、ファンタさんは先手を希望されたため、石田流の可能性が高いのではないかと考えておりました。

 本団体戦の選手紹介記事では、私の玉頭位取りを期待される記述もあったのですが、今回は期待を裏切る方向に考えを進めてました。(記事は対局後に知ったので、わざと逆張りしたわけではないです)

一応、対ゴキゲン中飛車になればその作戦も考えたのですが、石田流、ノーマル振り飛車で来られればこちらはオーソドックスに囲って指そうと指針を決めてました。

 そして対局開始。


石田流 対 居飛車

7手目 ▲7八飛

局面1

 予想通りファンタさんは石田流に組まれました。対して私は事前準備の通り居飛車でじっくりと駒組をしていきます。

20手目 △6三金

局面2

 こちらが左美濃にしたところで▲7四歩としてこられました。これに対して△同歩▲同飛△6三金▲7六飛△7四歩とする指し方もありましたが、私は歩を取らずに△6三金としました。

 金銀で6、7筋を手厚く受けて抑え込んでいこうという考えです。

 7四歩と突かれる前に6三銀型に組む型が一般的なのですが、金が上がる方が厚みが出ると思いました。

 右銀は中央に使おうかとも考えたのですが、先手に1歩持たれた状態での悠長な駒組ができるかの展望が難しかったために、▲7三歩成、△同銀としました。

スナイパーが玉を覗く

25手目 ▲9七角

局面3

 ▲9六歩に私は△5五歩として、飛車を5筋に使う型で中央志向へと思ったのですが、それを咎める▲9七角! 石田流ではありきたりな手ながら、先の△5五歩と居飛車の玉型を上手く咎めた機敏な好手でした。(△5五歩を突かなければ△6六角と飛び出せたが今はできない。居飛車玉は2二の地点が壁になっている)

29手目 ▲6七銀

局面4

 △5六歩から私も角を世に出そうとして数手進み上の局面。ここで△5七角成も考えたがさすがにやりすぎだと自重。事前にじっくりとした将棋をするとの構想通り自然に△9九角成と香車を拾いました。

山猫は眠らない

32手目 △7五歩

局面5

 ファンタさんは▲6五歩と角のラインを活かした鋭い一着を放たれました。

 ここで私は△7五歩と中合い。角と飛車の効きに重なる「焦点の歩」で受けました。▲同角には△7四香の田楽刺しがあります。手筋ですが自慢の一着でした。

 先日、女流王将戦第二局の棋譜を見ていて、西山女流王将が焦点の歩を活かした上手い受けをみせられたことに影響されていたため、頭に浮かんだ一手でした。

36手目 △4四歩

局面6

 ▲7七桂、△2二玉(角のラインから早逃げ)、▲7五角と進んで△4四歩。

 ここで△7四香としてしまうと▲6六角が王手で逃げられる(後手の早逃げを逆用した上手い飛び出し)ので、それを避けるために先に玉と角のラインを遮る意味があります。

一気に捌きにこられる

39手目 ▲6四歩

局面7

 △4四歩に対してファンタさんは▲8五桂から振り飛車の捌き模様。

私もここが勝負と△7四銀と角に当てながらかわしましたが、構わず▲6四歩!

一気に激しく動き出しました。

40手目 △7五銀

局面8

 △7五銀と角を取り、ここでファンタさんは▲6三歩成。

 と金が作れたことも大きいのですが、△7七歩と飛車を押し込まれてしまう展開になりました。

 これは私としても助かった変化で、▲6三歩成に代えて▲同飛だとまだまだ怖いところでした。

抑え込みに成功

48手目 △5七歩成

局面9

 数手進み、上図に▲同金は△6八とがあるので、放置して▲7二歩成とこちらの飛車を攻めてこられましたが、落ち着いて逃げて、とにかく安全勝ちの方針にシフトして戦いました。

鬼の局面

72手目 △7三飛車引く成

局面10

 作ったと金を利用してファンタさんは攻めてこられましたが、駒不足は否めませんでした。私としても相手に駒を渡すと怖いので辛い指し回しになり、上図は鬼の局面。

 その後、ファンタさんが下駄を預けられ、私が玉を詰ませに行ったところで投了されました。

棋譜

開始日時:2020/12/05 21:00:01
棋戦:自由対局室(持ち時間15分)
手合割:平手
先手:ファンタ(B3)
後手:Kitchie(A3)
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:02/00:00:02)
2 3四歩(33) ( 0:10/00:00:10)
3 7五歩(76) ( 0:02/00:00:04)
4 4二玉(51) ( 0:07/00:00:17)
5 6六歩(67) ( 0:03/00:00:07)
6 6二銀(71) ( 0:08/00:00:25)
7 7八飛(28) ( 0:02/00:00:09)
8 5二金(61) ( 0:06/00:00:31)
9 4八玉(59) ( 0:08/00:00:17)
10 6四歩(63) ( 0:07/00:00:38)
11 5八金(69) ( 0:24/00:00:41)
12 5四歩(53) ( 0:18/00:00:56)
13 3八銀(39) ( 0:05/00:00:46)
14 3二銀(31) ( 0:30/00:01:26)
15 3九玉(48) ( 0:02/00:00:48)
16 3一玉(42) ( 0:04/00:01:30)
17 1六歩(17) ( 0:04/00:00:52)
18 1四歩(13) ( 0:03/00:01:33)
19 7四歩(75) ( 0:55/00:01:47)
20 6三金(52) ( 0:48/00:02:21)
21 7三歩成(74) ( 0:06/00:01:53)
22 7三銀(62) ( 0:04/00:02:25)
23 9六歩(97) ( 0:34/00:02:27)
24 5五歩(54) ( 1:12/00:03:37)
25 9七角(88) ( 0:25/00:02:52)
26 5六歩(55) ( 0:42/00:04:19)
27 6八銀(79) ( 0:09/00:03:01)
28 6六角(22) ( 0:16/00:04:35)
29 6七銀(68) ( 1:12/00:04:13)
30 9九角成(66) ( 0:44/00:05:19)
31 6五歩打 ( 0:04/00:04:17)
32 7五歩打 ( 0:27/00:05:46)
33 7七桂(89) ( 4:11/00:08:28)
34 2二玉(31) ( 1:48/00:07:34)
35 7五角(97) ( 0:39/00:09:07)
36 4四歩(43) ( 0:54/00:08:28)
37 8五桂(77) ( 0:46/00:09:53)
38 7四銀(73) ( 1:08/00:09:36)
39 6四歩(65) ( 0:04/00:09:57)
40 7五銀(74) ( 0:47/00:10:23)
41 6三歩成(64) ( 0:08/00:10:05)
42 7七歩打 ( 0:39/00:11:02)
43 7九飛(78) ( 0:10/00:10:15)
44 8八馬(99) ( 0:06/00:11:08)
45 5九飛(79) ( 0:22/00:10:37)
46 7八歩成(77) ( 0:22/00:11:30)
47 7三歩打 ( 2:41/00:13:18)
48 5七歩成(56) ( 0:29/00:11:59)
49 7二歩成(73) ( 0:16/00:13:34)
50 9二飛(82) ( 0:20/00:12:19)
51 5二金打 ( 0:17/00:13:51)
52 5二金(41) ( 0:22/00:12:41)
53 5二と(63) ( 0:05/00:13:56)
54 7二飛(92) ( 0:04/00:12:45)
55 4二金打 ( 0:19/00:14:15)
56 5六歩打 ( 2:10/00:14:55)
57 3二金(42) ( 1:16/00:15:31)
58 3二玉(22) ( 0:03/00:14:58)
59 4一銀打 ( 0:03/00:15:34)
60 2二玉(32) ( 0:04/00:15:02)
61 5七金(58) ( 0:56/00:16:30)
62 6八と(78) ( 0:06/00:15:08)
63 5六銀(67) ( 0:13/00:16:43)
64 5九と(68) ( 0:11/00:15:19)
65 5九金(49) ( 0:04/00:16:47)
66 7九飛打 ( 0:20/00:15:39)
67 6九歩打 ( 0:34/00:17:21)
68 6六銀(75) ( 0:14/00:15:53)
69 7三歩打 ( 0:29/00:17:50)
70 7三桂(81) ( 0:09/00:16:02)
71 7三桂成(85) ( 0:19/00:18:09)
72 7三飛成(79) ( 0:06/00:16:08)
73 5四歩打 ( 0:50/00:18:59)
74 5七銀成(66) ( 0:27/00:16:35)
75 5三歩成(54) ( 0:11/00:19:10)
76 6六馬(88) ( 0:26/00:17:01)
77 2八玉(39) ( 0:14/00:19:24)
78 5六成銀(57) ( 0:24/00:17:25)
79 4九金(59) ( 0:15/00:19:39)
80 7八龍(73) ( 0:33/00:17:58)
81 4二と(52) ( 0:17/00:19:56)
82 3九銀打 ( 0:27/00:18:25)
83 1八玉(28) ( 0:08/00:20:04)
84 1七香打 ( 0:05/00:18:30)
85 1七玉(18) ( 0:06/00:20:10)
86 2八角打 ( 0:05/00:18:35)
87 投了 ( 0:18/00:20:28)


対局全体を通しての感想

 事前に準備した通りの展開になりましたが、序盤から中盤の入り口で▲9七角と上手く動かれてしまいました。しかし、その後を落ち着いて指すことができ、終盤まで堅実な選択を一貫できたことが勝利に繋がったと思います。

 ファンタさんの終盤の粘りには団体戦の執念を感じました。終盤の一手の緩みが逆転に直結するのが将棋なので、私も最後まで気の抜けない内容でした。

 初めての団体戦でしたが、良い緊張感を持って対局を楽しむことができました。私の対局出番は終わりましたので、これからはチームの応援、対局観戦を楽しみたいと思います。


最後に、対戦頂いたファンタさん、観戦して頂いた皆さん、運営をされている皆さんありがとうございました。


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