見出し画像

土曜ドラマ『最高の教師』がめちゃくちゃ刺さってる

『最高の教師』にめちゃくちゃ刺されてます。

松岡茉優ちゃん演じる高校教師・九条が、卒業式の日に何者かに突き落とされて殺される(おそらく担任していた3年D組の生徒の誰か)。死んだ! と思った瞬間にタイムリープして、一年前の始業式の日に戻っている。また卒業式までの一年をやり直す過程で、自分を殺すであろう生徒を見つけるために“最高の教師”を目指す話

まさに『3年A組』みたいに、教師が生徒の性根を叩き直していく話です。3年A組もめちゃくちゃ刺さったんだけど、今回も大いに刺されている。九条先生の言うことがいちいち納得感が高すぎて、高校生だったころにこのドラマが放送されてたらな……と思わずにはいられないですね。

とくに人間関係の悩みを根本から覆してくれたのは3話です。

この3話、九条先生に殺害予告が出されて、その仕業は一見おとなしそうな工学研究会の生徒ふたりだった……っていう始まり。九条先生が特殊な“授業”を始めたことで、彼らの聖域たる研究室がリーダー格な生徒たちの溜まり場になってしまい、発散できない鬱憤を九条先生にぶつけてしまいます。

自分に置き換えても、この二人の心情めちゃくちゃわかってしまうな……と思っちゃって。気に入らないなら、直接そのリーダー格の生徒か、はたまた先生に真正面から「なんとかしてくれ」って言えば済む話なんだけど。そんなことは頭ではわかってるんだけど、でも後から何されるか怖いし、シンプルに悪意の標的になるのがしんどすぎるから避けたい。でも状況は改善したいから間接的な手法に頼って、表では知らん顔をしてしまう……っていう。

ずるいよねえ、卑怯だよ。でもそれしかできないんだよね。

もちろん九条先生は「なんで顔と声を出して直接意見しないんだ」って諭すんだけど、工学研究会たちは反論します。「それで痛い目みたら、先生が責任とってくれるのか?」って。

それから何やかんやあり、九条先生はあらためて工学研究会たちに言うんです。雑な意訳ですが、リーダー格の生徒たちに嫌われたところで何か問題でもあるのか、って気づきをくれる。学校っていう狭い箱のなかで悪意を受けるのはしんどいかもしれないけど、卒業しちゃえばそんな人間どこで何やってるのかわからなくなる、って。

その後、工学研究会たちはリーダー格の生徒に「徹底的にハブってくれ」「絶対に関わらないでくれ」って土下座までして懇願します。

私、このシーンを見て横から頭殴られたみたいにガーーーーーンって音がしました。い、いいんだ、そうだよな、自分に悪意を向けてくる人間におもねる必要なんかないんだよな、自分を尊重してくれない人間に嫌われたって別に問題ないよな、逆に好かれたら困っちゃうよな、こっちも嫌いなら嫌いでいいんだよな、って。

名前と顔を出して活動している手前、定期的に心をえぐられるようなメッセージが手元に届きます。人って、匿名の画面越しならこんなに心ないことが言えるんだなあって、妙に冷静になります。

そのたび、私は私のことを、どこか根本的に問題のある人間のように考えてしまう。もうどうにもならない先天的な何かがあるから、それを感じ取った人から順番に私に石を投げてくるんだ、って思ってしまう。

そして、そういう人に対してなんとか「好かれたい」「私の対しての評価を変えてほしい」と考えてしまうんです。自分が嫌われるなんて何かの間違いだ、誤解だ、みたいな気持ちが拭えない。こちらから何か行動すれば、相手の気持ちを変えられるんじゃないか、と。

でも、「徹底的に自分たちをハブってくれ!」と土下座してお願いする工学研究会たちを見て、心の土台にあった価値観がすっぽり取り替えられたような心地になりました。いや、いーんじゃん。別に好かれようとしなくてもいいんじゃん。それなら私も「気に入らないなら徹底的に無視してくれ!」ってスタンスでいればいーんじゃん、って。

それ以来、忘れたころに毒のあるメッセージが届いても、あんまり気にならなくなりました。「どうか私のことを視界に入れないでください!」と両手を合わせ、そっと削除。金輪際、互いの人生で関わりあうことのないように祈りながら、私は仕事か趣味に戻る。

そもそも人の気持ちなんて外部から働きかけて変えられるはずもないんだった。と、大事なことを思い出させてくれるドラマでした。

レビュー書かせてもらっているので、もしよろしければ!


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。サポートいただけた分は、おうちで飲むココアかピルクルを買うのに使います。