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バズれば、お前に届くかな。俺、結婚するよ。

ごめん、俺、まだ売れてない。
お前をフックアップさせるのはまだ先になるわ。

でも俺、来週結婚するんだ。

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3年程前、友達から絶縁された。


大学1年のサークルの歓迎会で出会ったその男は、Hといい、中肉中背に+10キロ足したような微太り体系の、眉毛の太い優しい顔した男前だった。

サークル見学で仲良くなった僕とHは、いくつものサークルを見て回ったが

演劇サークルやオタク系のサークルを見ても、なんだかピンと来ない。
オールラウンドと言う名の飲みサーに行っても、全く楽しくない。

決定的だったのは、とあるオールラウンドサークルの新入社員歓迎会。
河原でBBQをやるからと集められた新入生を円形に並ばせ、一人ずつにお酒を渡していく先輩。

僕らは大学デビューだったので、その当たり前の様にアルコールが存在して、アルコールの力で盛り上がる飲み会に馴染めなかった。(あと新入生の女子が固まって飲んでる所に「うぃ~飲んでる?」って割り込んでくる上級生もマジで嫌いだった)

Hは小太り故にそこそこの量のアルコールを飲まされていて、一人で地面に横になってヘロヘロになっていたので、僕はHの手を引いて起こし、二人で飲み会をフケて帰る事にしたんだ。

「いや~あんまり楽しくねぇな」と、僕。
「なんかちげぇんだよな」とH。

もうどちらが言い出したのかは覚えてないが、二人の意思は合致していた。

「これは俺たちでサークル作るしかねぇだろ」

そう、男たちは涼宮ハルヒの憂鬱ど真ん中世代。
サークル立上げという甘美な響きに、二人のテンションは最高潮を迎えた。

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そこからの二人の動きは速かった。
とりあえず妙な団体を作って、仲間を増やそう。というイメージ感は0.2秒で共有出来たので(何故なら二人は涼宮ハルヒの憂鬱ど真ん中世代だから)とりあえず建前上の活動内容とサークル名を決めた。

団体名はMHz(メガヘルツ)
活動内容は、ラジオ配信や各種配信行為とした。

サークルの代表、副代表もマジでどっちでもよかったので、その時バイトをしてないという理由で僕が代表になった。
この代表という肩書があったから、僕の人生は今こうしてここにあると思っている。

サークル勧誘を二人で始めて、初年度のメンバーは13人

続ける中で、最大で30人くらいにも増えたけど、大体10人くらいの活動規模の団体だった。

結果的に2年目以降は配信行為を1秒もせずに、廃墟に泊まったり、用水路の鯉を捕縛して食べたり、自作の【私恋人います缶バッチ】【私恋人いません缶バッチ】を無断で構内でバラまいたりする、等のマジの珍妙軍団に成り上がった。もしくは成り下がった。

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今、ラジオを続けているのもサークルの影響だし、自分で何かを考えて発信する楽しさの源流は間違いなくここにあると思う。

ただ、Hは声優になるという強い夢があったから、バイトを詰めまくり自力で声優のスクールに通っていて、参加頻度はそこまでではなかった。

Hの声優への憧れは生半可なものではなく、スクールを経て特待的な制度で養成所に入り、デビューを夢見て努力していた。

大学を卒業しても、声優を目指しながらバイトをして、集まる度にデビューの話を皆でした。
努力家のHは今の声優にはルックスも必要、という意識からダイエットをして、めちゃくちゃ痩せた。

個人の配信やテキストで売れたい僕と、声優で成功したいH、お笑い芸人になりたい同じサークルの仲間。みんなで集まる度に誰かが売れたらフックアップさせようと誓っていた。

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僕は未だに、

「面白かったらなんでもいいじゃん」

と思っている。

そのせいでめちゃくちゃやったり、僕と関係のある人間のエピソードを勝手に書いたりして、いろんな人から「それは面白くない」「傷付いた」「そういうのやめて欲しい」など言われてきた。

Hの時もそうだった。

僕は個人でやっているラジオで、大麻を吸っているという話をした。

もちろん「大麻を吸った」というのは冗談なのだが、その回のコンセプトは『北山が異常にリアルな大麻を吸ったエピソードを淡々と話すのだが、要所要所でしつこいくらい「これはフィクションですよ」と念押しする』という回だった。

本当にフィクションなのに「これはマジでフィクションなんだけどさ」とやたら念押しすると逆に本当なのでは…?どっち…?やったの?やってないの…?という不思議な状態で終わっていくのが面白い(少なくともその当時の僕は)回だったのだが、その回を投稿した数日後、Hから超長文のLINEが届いた。

内容としては、

・君たちが大麻を吸ったという内容を喋っているラジオが事務所にバレた
・本当か冗談かは関係ない
・こういう人たちとは縁を切る様に事務所から言われた
・今後努力する上で1%でも不安な要素は消したい

だから、『もう今後俺に関わらないでくれ、一緒に録ったラジオの録音は消してくれ、このラインを見て家に来るとかはやめてくれ。』

という物だった。返事を返す前にLINEはブロックされていた。

そこから3年ほど経ったが、彼とは会うことも、連絡を取る手段も無く、絶縁は続いている。

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Hへ。

元気?デビュー出来た?
定期的にお前にLINE送っては、(まだブロックされてるか…)ってのを続けてるし、お前の本名で検索掛けてデビューしてないかなって探してるよ。

俺は相変わらずサラリーマンやりながら、絶妙な創作をアウトプットしてる。

全然マジで売れる気配がねぇ。食える気配も今の所全くねぇわ。
最悪だよ。歳ばかり食って、肌の質感も悪くなってく一方だわ。

でも、Hと会ってた頃よりは進歩したよ。
たまーにバズる様になったよ、ツイッターがだけど。

それが切っ掛けでこないだ仕事も貰ったし。しかもLINE社からだぞ。めっちゃ凄くね?LINE本社にも長谷川さんと行ったんよ。

全然コンスタントに創作でお金が貰えてるわけじゃないけど、記事書いてお金貰ったりも出来たし、noteもちょっとだけ売れてる。

幸か不幸か、まだ全然諦めてねぇんだわ。
最悪な事に不安でいっぱいだけどさ。

何歳までこんな事してんだろうとか、売れねぇのに誰かを傷付けて意味あんのかなとか、夢追っかけてるって言い訳して怠惰に暮らしてるだけだろ、とか。

腹立つよな。全部諦める程無能じゃなかったんだけど、すぐ有名になれる才能は無くて、ギリギリ夢見てられるレベルの結果と承認を受けてさ、進むのも辞めるのも苦しくてさ、

もっと才能があるか、絶望的に無いか、どっちかで生まれたかったよな。

でも、頑張ってるわ。クソ腹立つけど。だから、売れたら約束通りお前の事フックアップするわ。影響力を使ってバンバンにプッシュするわ。

もしHが声優諦めてても、俺は別に何にも言わないよ。
分かんねぇけど、縁切った手前目指すの辞めたとか言い辛かったとかでも全然気にしないからさ。

そうだったら、一緒になんか面白い事やろうよ。
今だったら昔より、お前の良い声とか、セリフ読みとか生かせること出来るからさ。またラジオもやろうよ。

んで、結婚すんだ、俺。
唐突に。来週入籍すんのよ。ビックリでしょ。

セフレだった女の子と、付き合って2ヶ月で入籍しちゃうんスわ。
しかも、今長谷川さんと二人で同じ家で同居してて、そこに彼女(来週嫁になる)も来て3人で住んでんのよ。

マジで謎だよね。
亮さんとHが二人で住んでるときに「マジで意味分かんねぇ」って言ってたけど、確かに友達と同居楽しいわ。

だから遊びに来てくれよ。久しぶりに遊ぼうよ。
酒とか入れて飲もうとかじゃなく、スマブラとかやろうぜ。

友達だからさ、結婚の報告したいんだけどさ、連絡取れねぇし。年始にHが住んでた家、長谷川さんと行ったんだけど誰もいなかったし。

まぁ、大体そんな感じだからさ。
連絡くれなくても、結婚したってことと、性懲りもなく創作やってるよ、ってことを伝えたかったんだよね。

俺が売れたらお前が仮に声優諦めて一般人になってても、「すげぇ良い声の一般人がいるから」って推すから、待っててよ。

じゃあ、またな。


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