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本の蔵1885《お座敷一箱古本市》を終えて

第5回まつもと一箱古本市(2022年10月16日/六九商店街)から半年。第6回の開催に向けたプレ企画として、本の蔵1885《お座敷一箱古本市》を開催しました。

会場は松本市の郊外、島立地区にある古民家(明治18/1885年建造) 広さといい雰囲気といい、一箱古本市をするにはもってこいの空間です。ただ、これまで中心市街地で開いてきたイベントに比べ、集客面で決して有利とはいえない郊外の立地でもあります。「お客さんはもとより、箱主さんが集まるのだろうか」そんな中で本企画の準備はスタートしました。

ところで、筆者は2016年より「しましま本店」と称して、一箱古本市とは別に、松本西郊を走る鉄道上高地線(松本-新島々/14.4km)の電車の中でブックイベントを開いたり、同線の下新駅で毎月古本屋の真似事をしたりしています。

今回、会場として古民家をお借りすることになったのは、このしましま本店の活動がきっかけであり、しぜん筆者が主催者代表を務めることになったのですが、あえて「まつもと一箱古本市実行委員会」の企画として開催することにしました。これは、第6回の開催に向けたプレ企画として位置付けたかったこともあるのですが、「一箱古本市って、何だろう?」と自分なりに考え、実践してみたいというごく個人的な動機もありました。(※1)

自身で本に関するイベントを主催したり、毎月駅で古本屋を開く中で、正直「一箱古本市」に対しては「箱主さん=お客さん」であり、当日ただ古本を持って来て売るだけ、といった状況に違和感を抱いていました。しかも、聞くところによれば、売れ筋だからと自分が読んだ訳でもない本を並べたり、一箱の分量を大きく超えて本を持ち込んだり…これはまつもとに限らず、一箱古本市の広がりと共に起きていた状況のようです。

これに対して、本の蔵1885《お座敷一箱古本市》では、試みとして月1回のペースで準備会を開き、箱主さんにも運営サイドの動きを知っていただく(実際に動いていただく)機会を設けました。結果として、前回(第5回)に続き2度目の出店という箱主さんや、一箱古本市への出店自体が初めて、という箱主さんを中心に参加をいただきました。そこから集客や運営のアイデア、ちらしの配布、メディア取材への対応など、多くの箱主さんが準備の段階から、本イベントに関わって下さいました。

こうして迎えたイベント当日は、まさかの雨予報(※2) 会場は屋内で安心とはいえ「本当に誰も来ないかも知れない」主催者としてこれだけ気を揉んだのは初めての経験です。いざ蓋を開けてみると、90名近くのお客様(当然ながら、この一箱古本市を目掛けてやってきている)の来場があり、一つの基準としていた50~60名はクリアすることができました。ただそれ以上に、箱主さん同士が(時にお客様を交えて)語らう姿が、会場の随所で見られたことは、自分なりに考えた、本好きが集う「一箱古本市」の姿でした。

予想外だったのが、売上冊数と金額で、箱主さんへのアンケートによれば、箱主さん1組につき、少なくとも10冊以上の本を次の読者へ手渡しています。また売上金額が1万円以上の箱主さんが複数組あったのも驚きでした。ここから言えることは…野暮、というか私の実績からいえば(※3) 余りにも傲慢なので書きません。ただ、少なくとも、あの日あの場所に、箱主さんを含め100人以上の「本好き」が集まり、100通り以上の本を通じた交流が生まれた、それだけでも、あの場所で「一箱古本市」を開いた意義は、十分に達成できたのかな…と感じています。

イベント運営の面では、初めて経験すること(その際たる例が駐車場の案内・誘導)が多かった一方で、自らの詰めの甘さによるトラブル(現地までは辿り着いたものの、案内看板がなく会場の場所が分からないお客様が続出、など)もあり、これまで主催したイベントの中で、最も多くの関係者に迷惑や負担を掛けてしまいました。次回開催の可能性について、まだはっきりとしたことはいえませんが、反省点をどう改善するのかや、お客様や箱主さんに回答いただいたアンケートを精査しながら、今後判断してゆきたいと思います。

最後となりますが、雨の中会場にお越しいただいたお客様、会場を提供いただいたK酒造店スタッフのみなさま、イベントの告知にご協力をいただいた店舗・施設・企業のみなさま、そして本イベントに出店いただいた14組の箱主さんとイベントの運営に関わった全ての方に感謝を申し上げ、この稿を閉じたいと思います。ありがとうございました。

※1 :隠してもしょうがないのでこの際白状してしまうが「上高地線の沿線でイベントを開いて、お客さんに電車で来場していただこう!」という、しましま本店主催者としてのエゴ丸出しの動機もこれに加えてあった。

※2:まつもと一箱古本市といえば雨。自らが箱主を初めて体験した第2回(2016年9月18日/雨)をはじめ、第3回(2017年10月7日/雨のち曇り)、第4回(2019年4月30日/雨)と時期や季節が異なるにも関わらず雨に降られている。(第5回があんなに晴れたのはもはや奇跡的) 今回の本の蔵1885《お座敷一箱古本市》の雨で、通算4回/6回となった。

※3:主催する『本の駅・下新文庫』では、1回(1日)につき古本が10冊以上売れれば多い方で、このところは7~9冊が平均的な値。

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