風邪はゆっくりやってくる。
風邪をひいた。
金曜日のことだ。
朝起きた瞬間、強い痛みが喉を走った。唾を飲んだだけなのに、口の奥が削られるかと思った。枕元の水を飲む。まだ痛い。喉を何かが通過すると痛い。
枕元に置いてある朝ご飯用のパンを見た。私はいつも、前日の夜「明日のパン」という明日を頑張るためのパンを買っている。
食べられないのでは? この喉で固形物を口にしたら、小麦粉の塊に喉が破壊される気がした。
時計を見る。九時半過ぎ。私は午後から出勤なので全然余裕だが、職場に欠席の連絡をいれる。LINEがあってよかった。喋るのもしんどいくらいだ。
そして体温を計り、平熱であることを確認すると急いで病院へ向かった。受付をして、問診票を書いて待った。受付のとき、声だすのがちょっと大変だった上に、だいぶボソボソ喋ってしまった。
順番が来たら名前を呼ばれる。看護師さんに案内され、お医者さんに状況を説明し、口を「あー」っとやって「赤いねぇ」と言われ薬を処方された。
すぐ隣の薬局へ行き、薬剤師さんから薬の説明を受ける。食後に飲めばとりあえずOKなものと、痛みを止める頓服の薬をもらった。
一旦、飲んだあとは喉の激痛も収まったため、食後に飲んで眠る。
翌日。土曜日。
まだちょっと喉は痛かったが、時間が経過し薬を飲むにつれて良くなっていった。しかし、だんだん日が傾き始め、喉の痛みが引くのと同時に鼻水が私の鼻を封鎖してきた。
ただ、花粉症ではないらしい。目が痒い、くしゃみが出るなどの症状はなかった。ただただ、両方の鼻からベタァっとした液体がダバダバ流れてくる。その日はいつもより早めに寝た。
寝て、起きる。
まぶたが熱い、
「ドゥエッホ! ヴォッホ!」
漫画だったら血を吐く描写が入りかねない咳と共に目が覚めた。最悪な日曜日である。さらに、鼻水がダラダラ流れてきて息を吸い吐く動作さえもグチャグチャになっていた。喉は痛くない、しかし、咳と鼻水がひどい。
月曜日になって私は再び病院へ行った。
お医者さんが「数日前にも受診されてますね」というので私は「ふぁい、そのときは、のどが、いたかったんですけど、今は、鼻水でして」と答えた。
また口を「あー」とやって診てもらう。病院からは鼻水止めと咳止めの薬を出してもらった。
更に翌日。火曜日。
まぶたが熱い、寒気がする、口が乾く、関節が痛い、倦怠感、エグい咳、しかし、体温を計っても平熱だった。だが、確実に調子は良くない。絶対にここから上がる。
半ば確信のようなものがあり、それは当たった。
昼、発熱。体がふわふわする。
なんでだ。
かなり初期症状の段階で病院に行ったのに、喉を抑えたら鼻、鼻を抑えたら全身に風邪の症状が広がってしまった。別に誰が悪いとかではないのだが、早めに病院を受診したのに結局喉風邪鼻風邪のオンパレードを四日かけて食らったのでは全く納得できない。
風邪も風邪だ。お前もゆっくり来るな。一回で来い。特に発熱みたいな目に見えてわかりやすい症状を最後に出すな。日替わりで別々のところを攻撃されて本当に辛かった。
しかもインフルエンザでもなんでもないただの風邪なところも納得できない。もっと強いやつであれよ。
「痛い、辛い、苦しい、何だこれは、きっとすごいやつに違いない」と身構えて「ただの風邪です」では、私の立つ瀬がないではないか。
ただ、処方された薬はしっかり効いた。喉も鼻も今はすっかりいい調子である。
しかし、今日はどうにも頭とお腹が痛い。どうやら手分けして症状を出す方針に変更したようだ。
頭がボーっとする。でも、とりあえず体は動くので、外へ出る。
もう少し風邪は長引きそうだ。
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